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国民を巻き込んだ議論の積み重ねで理解と信頼を~パブリック・ インボルブメントの重要性~

2015年6月17日

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 服部 拓也

(はじめに)
 米国原子力規制委員会(US-NRC)では、規制プロセスへの早い段階からの市民参画は、規制当局が原子力の安全に関し合理的でバランスのとれた判断を行っていると国民が理解・納得する上で不可欠の要件であるとしており、「原子力規制プロセスにおける市民参画」と題する小冊子を公開し、国民の積極的な関与を促している。
 本年4月にUS-NRCと我が国の原子力規制委員会(NRA)との共催で原子力発電所の廃止措置に係る公開ワークショップが開催され、US-NRCのバーンズ委員長より、米国でのこれまでの廃止措置におけるパブリック・インボルブメント(市民参画)の取組み状況ならびに米国の事業者にも市民参画に取組むよう働きかけてきていることについて説明が行なわれた。
 わが国が今後、円滑に廃止措置を進めていく上で、その内容は極めて示唆に富むものであり、規制当局はもとより事業者においても米国の事例を参考にした取り組みを期待したい。

(米国での廃止措置の取り組み状況)
 米国では既に10基の商用炉の廃止措置を完了させており、現在5基が廃炉作業中、14基が長期保管中である。廃止措置に係る規制策定の初期段階より市民参画のプロセスを取り入れて「透明性」を確保することが重要と考え、US-NRCは、情報公開やパブリックミーティングの開催を通じて、市民参画の機会を提供してきている。
 また、議会、他の政府機関、事業者、海外の原子力業界とも開かれたコミュニケーションチャンネルを維持することで透明性と規制の合理性を確保している。更に、透明性の確保に留まらず、US-NRC自身も現状の規制に慢心することなく、効率的かつ効果的な規制への継続的な改善に謙虚に取り組んでおり、今後、米国内で廃炉を迎えるプラントが増加する見通しであることを考慮し、運転に関する規制と廃炉に関する規制を全体として最適化する作業に取り掛かっている。このような取り組み姿勢が、US-NRCが米国民の信頼を獲得するに至ったものと考える。

(我が国の廃止措置の状況)
 我が国においても本年4月に新たに5基の商業炉について廃炉を決定した。福島第一原子力発電所の6基を含め、これまでに廃炉を決定し、既に廃炉作業中の炉を含め、14基が今後、順次廃炉作業を進めることになる。
 当協会では、これまでにも廃止措置を円滑に進めるにあたっては、廃棄物処分などの技術的なことだけでなく、廃炉に伴う地域への影響、そして廃炉後の地域の在り方など、立地地域の方々に対する丁寧な説明と共同作業が欠かせないと述べてきた。
 廃止措置に関する枠組み・規制といったルールの策定に当たって、現場を最も知る事業者とNRAのコミュニケーションをより深める必要があることは改めて指摘するまでもないが、既に廃止措置を実施している米国に、技術面をはじめ、ソフト面(規制面、情報公開)においても学ぶべきものは多いと考える。

(国民を巻き込んだ議論で理解と信頼を)
 福島第一原子力発電所の事故後、原子力に対して立地地域住民はもとより広く国民の厳しい目が向けられ、再稼働をはじめとする議論にも関心が高まっている。
 NRAは、これまで独立性を維持しつつ事業者との会合を公開で行ない透明性を確保するなど、一定の成果を上げていると評価されている。
 しかしながら、従来のような事業者のみを念頭に規制案を策定し、決定事項として国民に公開する方法では、国民の理解を得ることは難しい。規制制度の策定プロセスへの市民参加により、国民的な議論を先導し、国民自らが考える機会を設けることが、NRAに対する一層の信頼向上はもとより、原子力への理解促進ひいては信頼回復につながるはずだ。
 また、事業者も立地地域の方々への説明に際し、廃止措置をはじめとした原子力の諸課題について、住民の疑問や懸念、意見に真摯に耳を傾けながら、住民との双方向のコミュニケーションを一層緊密に図っていく必要がある。
 国民の理解と信頼の回復に向けた取り組みに近道はない。NRAも事業者も、身近な手本となるUS-NRCをはじめ、諸外国の取り組み事例も参考に、わが国では定着していない市民参画による透明性のある議論と対話の積み重ねに、積極的に取り組むことを望みたい。

以上

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