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原子力イノベーションの促進と安全規制

2019年9月26日

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 高橋 明男

 民間企業が有する創意工夫を活かした原子力イノベーションを促進するため、令和元年度に新たに「革新的技術開発予算」が設けられ、9月6日に補助金支援事業が採択・公表された*1。さらなる安全性・信頼性、経済性、機動性の向上や、エネルギーの多目的利用、廃棄物対策の実現などの社会的要請に応える革新的な原子炉技術の開発支援を行うこととしており、政府補助事業を契機とした原子力イノベーションの創出や促進に期待したい。

 日本のみならず、各国は原子力イノベーションの促進に取り組んでいるが、新型炉開発と規制のあり方が重要な論点となっている。本年4月の第52回原産年次大会では、国際機関および米国、英国の専門家や原子力事業者から、新型炉開発においては、事業者やベンダーの予見性向上とともに、規制当局が効率的な安全審査を進めるためにも、規制当局の早期関与が必要であるとの議論があった。
 実際に新型炉開発の取り組みが先行する欧米では、規制当局が開発の初期から検討に加わっている。例えばカナダでは、カナダ原子力安全委員会(CNSC)が、ベンダーのリクエストによって「許認可前ベンダー設計審査(VDR:Pre-Licensing Vendor Design Review)」を提供している*2。VDRは、許認可申請前の任意のサービスで、設計プロセスの初期段階で対象炉の設計が規制要求や規格基準を高いレベルで満たすものであるか確認する制度である。また、審査で確認された設計上の問題の解決方法を探る役割もある。VDRは許認可プロセスの一部ではないが、ベンダーに早期のフィードバックを与えることにより許認可の予見性が高まるとともに、規制当局が許認可申請前に対象炉の設計に精通することにより、許認可審査の際に設計評価の時間を短縮することができるとしている。またCNSCは、VDRによって規制の確実性が向上するため、一般公衆の安全に貢献すると定義づけている。

 米国でも、原子力規制委員会(NRC)は事業者やベンダーに申請前審査(Pre-Application Review)を提供している*3 。また、英国では小型モジュール炉(SMR)を現行の包括的設計審査(Generic Design Assessment)の対象に含めることとし、原子力規制局(ONR)および環境庁が開発者用に近くガイダンスを発表する予定である*4

 わが国は世界と最新知見を共有しつつ、これまで培ってきた日本の高い原子力技術と経験を集約し世界をリードする事が大切である。この為には、規制当局に設計要求や設計仕様を提示し、早期からの関与と協力を得ながら、各国の規制とも整合をとりつつ進めることが重要である。

 イノベーションによる次世代原子力技術は、再生可能エネルギーや既存の原子炉の活用にならび、地球温暖化対策に大いに貢献するものである。わが国でも、いよいよ原子力イノベーションの取り組みが本格的に始まり、新たな技術開発への挑戦に産業界の士気も高い。革新的技術開発支援に加え、安全規制の面でも規制当局の早期関与を得ることにより、新型炉開発が円滑に進むことを強く期待する。

以 上

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(*1)
令和元年度「社会的要請に応える革新的な原子力技術開発支援事業補助金」に係る補助事業者の公募結果について(経済産業省) https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/saitaku/2019/s190906002.html
(*2)
Pre-Licensing Vendor Design Review(カナダ原子力安全委員会)https://www.nuclearsafety.gc.ca/eng/reactors/power-plants/pre-licensing-vendor-design-review/index.cfm
(*3)
Small Modular Reactors (LWR designs) (米原子力規制委員会)
https://www.nrc.gov/reactors/new-reactors/smr.html 
Advanced Reactors (non-LWR designs)(米原子力規制委員会)
https://www.nrc.gov/reactors/new-reactors/advanced.html 
(*4)
Advanced Nuclear Technologies(英ビジネス・エネルギー・ 産業戦略省)https://www.gov.uk/government/publications/advanced-nuclear-technologies/advanced-nuclear-technologies 

 

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