JR常磐線の全線運転再開に際して

2020年3月16日

一般社団法人 日本原子力産業協会
理事長 高橋 明男

 2011年の東北地方太平洋沖地震および福島第一原子力発電所事故から9年が経過した3月14日(土)、JR常磐線が全線で運転再開した。最後まで不通となっていた富岡駅(福島県富岡町)~夜ノ森駅(同富岡町)~大野駅(同大熊町)~双葉駅(同双葉町)~浪江駅(同浪江町)間(20.8km)がつながった。これに先立ち、各駅周辺の避難指示区域も解除されている。JR東日本の発表では、同線伝統の特急「ひたち」が、これまでの品川・上野~いわき間が仙台まで延伸され、1日3往復運転される。人や貨物を大量に輸送する鉄道の全線開通は、復興に大きな弾みをつけると期待したい。

 また、帰還困難区域を通過する国道6号線では、自動車に加え3月4日から自動二輪および原動機付自転車の通行制限が緩和された。あわせて、常磐自動車道全線4車線化、追加インターチェンジ等の整備も進められている。浜通りの復興に不可欠な公共交通機関の整備の進展は、更なる復興の後押しとなり、前進が期待される。安倍晋三首相も、今年1月に開催された原子力災害対策本部会合において、今回の帰還困難区域の避難指示解除、聖火リレーのスタートの話しに触れ、「浜通り地域の利便性が向上することから、多くの方々に訪れてもらいたい」と観光面も含めた福島復興の加速化に期待を示している。

 2020年3月現在、避難指示区域外から避難されている方も含めると、避難者は4万人を超えており、これまで復興庁、福島県、各町村が共同で実施した「原子力被災自治体における住民意向調査」では、帰還を判断するための要素として、「鉄道などの公共交通機関の充実」はもとより「医療施設」、「商業施設」の充実を多くの住民があげており、鉄道、道路に続き、さらなるインフラの整備に期待がかかる。

 双葉郡をはじめとする避難地域および浜通り地域の復興をさらに進めていくためには、インフラ整備とならんで産業復興、雇用の創出が重要課題となっている。自治体の担当者からも、帰還開始に向けた企業立地・誘致の取り組みを進めていると聞く。
 2019年12月に浜通り地域等の自立的・持続的な産業発展の実現に向けたビジョンとして、「福島イノベーション・コースト構想を基軸とした産業発展の青写真」が公表された。復興庁・経済産業省・福島県の3者が取りまとめたもので、このビジョンのポイントは、浜通り地域などの自立的・持続的な産業発展には、(1)地元企業の経営力・技術力の向上、新たな事業展開、(2)新たな企業・人材や研究・実証の呼び込みの両輪が重要ということが掲げられている。施策においては、①あらゆるチャレンジが可能な地域、②地域の企業が主役、③構想を支える人材育成を3本柱として、先導的な地域となることを目指している。また、これまでの廃炉、ロボット・ドローン、エネルギー・環境・リサイクル、農林水産の4つの重点分野に、新たに医療関連と航空宇宙の2分野が追加され、6つの分野を柱とした重点的な産業集積を進めるとしている。国や県、関係者には連携を密にしてその実現に最大限の努力をお願いしたい。

 当協会は、福島の地域のみなさまの声を大切にしながら、地元に寄り添った活動を継続するとともに、放射線に関する正しい情報の発信など風評払拭に努めたい。また、引き続き福島の復興状況、福島第一原子力発電所の状況などを広く国内外に発信していく所存である。

以 上

JR夜ノ森駅 西口(富岡町)

夜ノ森駅構内に掲げられた横断幕

夜ノ森駅に到着した普通列車

JR大野駅(大熊町)

大野駅に到着した普通列車

大野駅に到着した特急「ひたち3号」

 

大野駅構内に掲げられた横断幕

JR双葉駅(双葉町)

双葉駅内に掲げられた横断幕

双葉駅に到着した普通列車

<参考>
ふくしま復興のあゆみ(福島県 ふくしま復興ステーション)
避難指示の概念図(2020年3月10日時点 出典:経済産業省)

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