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特集「日本の目指すべき原子力人材育成のあり方とは ~フランスに学ぶ~」

2017年2月17日

 日本では、原子力の人材育成活動の促進およびネットワーク内の情報共有を目的として、2010年11月に「原子力人材育成ネットワーク」が設立された。このネットワークが「原子力人材育成の課題と今後の対応 - 原子力人材育成ロードマップの提案 -」を提言したのが2015年4月。この提言の一つに「戦略的原子力人材育成のための司令塔の設立検討」が盛り込まれており、原子力人材育成を戦略的に推進する中核組織の設立の必要性が指摘された。
 この提言の具体化に向けて、原産協会では、フランスの原子力人材育成に関する組織を参考とするため、2016年11月に現地調査を実施した。調査結果を受け、今後は日本にふさわしい中核的恒常機関の設立検討に入る予定である。
 まず、調査先の1つ、日本にとって参考となるフランス国際原子力学院(I2EN)を紹介したい。
 I2EN(International Institute of Nuclear Energy)は、フランス政府主導のもと2010年に設立された原子力教育情報のハブ機関であり、フランスにおける教育・訓練プログラムの評価・認定、海外向けの一元的な教育・訓練プログラム提案などの役割を担う。15のパートナー機関(5つの政府機関、2つの教育代表機関、4つの研究機関、3つの企業、1つの協力会社連盟)からの拠出金で運営されており、年間予算は約100万ユーロ(約1.2億円:1ユーロ=120円換算、以下同様)。また、拠出金の義務がない27のアソシエート機関とも協力関係を結んでいる。
 事務局は、パートナー機関(アレバ、フランス電力〈EDF〉、原子力・代替エネルギー庁〈CEA〉)からの出向職員5名、大学からの派遣職員1名の合計6名。そうした体制の下、パートナー機関から構成される理事会、パートナー機関・アソシエート機関からの代表者が集結する総会により方針が決定されるが、その他にも、事務局は、教育・訓練プログラムを評価・認定する専門委員会などの運営も任されている。
 これらのことから、原子力人材育成に係る中核的恒常機関の日本設立を検討するにあたり、I2ENは大いに参考となる組織ではないだろうか。

(前列左から原産協会・上田、同・藤原、INSTN Director の Philippe Correa 氏、INSTN正面玄関前にて)

 続いて、INSTN(フランス国立原子力科学技術学院:Institut national des sciences et techniques nucl☆aires、☆=eの上に´)についても紹介したい。
 INSTNは、1956年にCEAの傘下に設立された唯一の原子力専門の大学院である。フランス国内外に向けて原子力分野の学位取得コースや教育訓練コースを提供しており、運転員、エンジニア、研究員などの人材育成に貢献している。原子力発電所の運転やメンテナンスの分野はもちろんのこと、原子力安全とセキュリティ、廃棄物処理と廃炉、放射線防護、放射線測定、放射線医療、ナノテクノロジーなどの原子力関連分野を網羅した上級教育の場が提供されている。
 INSTNの施設は、サクレー、カダラッシュ、シェルブール、グルノーブル、マルクールの5か所にあり、115名の内勤スタッフを擁するほか、CEAの研究者やフランス国内外の教員、産業界、医療分野、規制当局などの専門家1,400名が講師として登録されている。年間予算は3,100万ユーロ(約37億円)であり、その資金のほとんどはフランス政府による。
 INSTNの特徴的な人材育成活動の1つとして、ISIS研究炉を利用した遠隔訓練が挙げられる。この研究炉は700kWの開放プール型の原子炉であり、1年間で400人の訓練生を受け入れている。この訓練コースはインターネットを通じて実習状況を配信することが可能であり、遠隔地にいる受講生も研究炉実習に参加することが可能である。

教育訓練ツールのVERT

 また、特徴的な教育訓練ツールの1つにVERT(Virtual Environment Radiotherapy Training)がある。これは仮想患者に対して照射コースを試行し、患者の被ばく線量を視覚的に把握できる3次元模擬システムである。VERTは2014年から運用されており、放射線医療分野の生徒や専門家の訓練に貢献してきた。
 2015年5月には IAEA Collaboration Centre にも指定されたINSTNは、産業界とも強く連携した組織である。今後はINSTNも参考にしながら、日本の原子力人材育成にふさわしい中核的恒常機関の設立検討を進めていきたい。
(原産協会人材育成部・藤原健太郎記)