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インタビューシリーズ 特集「第5次エネルギー基本計画:原子力はどう取り組んでいくか」 第3回

2018年10月22日

第3回:廣江 譲 電気事業連合会副会長

 

原子力の将来を切り拓く決意 安全性と経済性の追求に絶えず挑戦
人材や技術基盤を確保 将来の新増設・リプレースにも備え

 

 今回から、第5次エネルギー基本計画を踏まえた今後の課題とその取り組みについて、原子力発電を推進する主要な関係機関にお聞きする。
 まず電気事業連合会の廣江譲副会長にバランスのとれたエネルギーミックスの実現やベースロード電源として役割が期待される原子力発電の課題とその取り組み方針について伺った。

 

-第5次エネルギー基本計画(以下、基本計画)では、従来の2030年のエネルギーミックスのあり方など基本的な方針や政策が示され、2050年を見据え、脱炭素化に向けた野心的な複線シナリオが示された。電事連としての受け止めをうかがいたい。

 今回のエネルギー基本計画では、従来の2030年時点のエネルギーミックスの在り方や電源構成などの基本的な方針を堅持しつつ、情勢の変化を踏まえ施策の深掘りや強化を行う方向性が示されたと理解している。
 また、エネルギー情勢懇談会による提言を踏まえ、2050年を見据えたエネルギー転換・脱炭素化に向け、あらゆる選択肢の可能性を追求する「野心的な複線シナリオ」が採用された。
 私どもとしては、基本計画の中で示された2030年のエネルギーミックスの実現に向け、主力電源化を目指す再生可能エネルギーの導入拡大や原子力発電所の再稼働など、各分野で足元の取り組みを加速していくことが重要と考えている。
 さらに2050年に向けて、再生可能エネルギーの大量導入を見据えた次世代ネットワークシステムの構築や、再生可能エネルギー等の調整力として必要な火力発電の高効率化に向けた取り組みなどについても、引き続き進めていく。
 エネルギー資源に乏しく、隣国と電気のやりとりなどができない我が国では、「S+3E」の観点から、特定の電源や燃料源に過度に依存しない、バランスのとれたエネルギーミックスを実現することが極めて重要との認識に変わりはない。

 

―原子力発電については―
 とりわけ、原子力発電については、将来にわたる重要なベースロード電源として2030年度の電源構成の中でも22~20%を担うとともに、原子燃料サイクルの推進やプルトニウム保有量の削減に取り組むことが改めて確認された。
 私ども電気事業者としては、新規制基準へ的確に対応することはもとより、今年7月1日に原子力産業界(原子力事業者、メーカー、関係団体)で設立した新組織「原子力エネルギー協議会(ATENA)」の活動(注1)などとも連携しながら、規制の枠を超えたより高い次元の安全性を確保していくことを通じて、一日も早い原子力発電所の再稼働を目指す。同時に既に稼働したプラントの安定的な運転を通じて、2030年のエネルギーミックスの実現を目指してまいりたい。
 さらに、原子力発電は、2050年の長期的なエネルギーの将来像の中でも「実用段階にある脱炭素化の選択肢」と位置づけられている。福島第一原子力発電所の事故を経験した国の原子力事業者として、原子力の将来を切り拓くという決意を持ち、原子力に関する人材育成や技術開発を強化して、安全性や経済性の追求に絶えず挑戦することで、将来の新増設やリプレースにも備えていきたいと考えている。

 

―再生可能エネルギーについては―
 再生可能エネルギーについては、「S+3E」の同時達成に向けて、原子力や火力などとともに、2030年のエネルギーミックスの実現に向けた電源の一つとして導入の加速を目指す考えが示されたものと承知している。
 同時に、再生可能エネルギーの導入コストの低減や安定した発電に必要な技術的課題など、今後取り組むべき課題も併せて示されており、FIT(固定価格買取)からの自立化といった観点を含め、引き続き検討を深める必要があると考えている。
 事業環境が大きく変わる中にあっても、電気事業者として、「地球環境に配慮した良質で安価な電気を安定して安全にお届けする」という基本的な使命を果たすため、何よりも安全を最優先に取り組むとともに、お客さま・立地地域の皆さま・広く社会の皆さまのご期待やニーズに的確に対応するための弛まぬ努力を継続し、皆さまからの信頼回復に努めてまいりたい。

 

-原子燃料サイクルについては、国民や関係自治体、国際社会の理解を得つつ取り組むこととし、再処理やプルサーマルを推進するとされているが、原子燃料サイクルの推進やプルトニウム保有量の削減については、どのようにお考えか。

 原子力事業者としては、基本計画にプルトニウムの保有量削減に取り組む旨が明記される以前から、利用目的のないプルトニウムは持たないという国の政策のもと、計画的にプルトニウムを利用することとしている。私どもはプルサーマル導入を推進し、引き続きプルトニウム保有量を減らす努力を継続してまいりたいと考えている。

 

-福島第一原子力発電所事故を経験した日本としては、社会的信頼回復が不可欠であり、更なる安全性向上による事故リスクの抑制が大きな課題とされているが、どのように取り組んでいくお考えか。

 私どもは、新規制基準に的確に対応することはもとより、電力中央研究所・原子力リスク研究センター(NRRC)や原子力安全推進協会(JANSI)など専門性の高い外部の組織とも積極的に連携しながら、リスク情報活用に向けた戦略プランならびにアクションプランの作成や、発電所の運営評価を事業者が相互に監視し合うピアプレッシャーなど、より高い次元の安全性確保に向けた取り組みを具体的に進めている。
 今後は、前述の「原子力エネルギー協議会」とも連携し、効果的な対策の導入を進めることなどを通じて、原子力事業者として専門性・透明性および客観性を持ち、さらなる安全性の追求に挑戦してまいる所存である。

 

-新たな技術開発、人材育成の観点から、あるいはコスト面から新型炉の開発にどんな課題があるとお考えか。また解決に向けての方策は。

 新型原子炉の技術開発・研究開発にあたっては、国としての長期的な政策が示されたうえで民間企業が取り組むインセンティブが働くような制度設計が必要であり、実証、実用といった各段階における官民の役割分担を明確にし、それぞれが役割を果たしていくことが重要と考えている。

 

-一方的な情報伝達でなく、丁寧な対話や双方向コミュニケーションを充実させることにより、一層の理解促進を図るとあるが、どのような取り組みをお考えか。

 これまでの枠組みに捉われず、関係各所と戦略的に連携した多様な取組が必要と考えている。
 今後は、自主的安全性向上等に関する産業界の取り組みなど、事業者共通のものとして発信すべき内容については、関係機関と連携して効果的な発信方法等の検討を行うとともに、関係者間で取り組みの好事例を共有していく。
 情報発信に関する原子力委員会の「原子力利用に関する基本的考え方」に示された見解(注2)を踏まえ、国民が知りたいときにインターネット等を活用して原子力に関する正しい情報を必要とした人が、必要とするときに、自ら入手できるように、電事連・関係団体が連携して、根拠に基づく情報体系の整備を開始しており、準備が整ったものから順次、公開しているところだ。

 

(注1) 国内外の最新知見等を元にした取り組むべき課題の特定、課題検討のための活動のコーディネート、専門家を入れた課題検討、検討結果の技術レポートのとりまとめ・公表など。
(注2) 「原子力利用に関する基本的考え方」(平成29年7月20日原子力委員会決定)抜粋
・原子力関連機関は、科学の不確実性やリスクにも十分留意しながら、双方向の対話等をより一層進めるとともに、科学的に正確な情報や客観的な事実(根拠)に基づく情報を提供する取組を推進する。
・国民の方々が疑問に思ったときに、インターネット等を活用して、自ら調べ、疑問を解決し、理解を深められるような情報体系を整理すべき。