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インタビューシリーズ 特集「第5次エネルギー基本計画:原子力はどう取り組んでいくか」 第7回

2018年11月16日

第7回:近藤 駿介 原子力発電環境整備機構(NUMO)理事長

 

「高レベル放射性廃棄物の地層処分という現世代の責任を果たすために」
-対話活動など通じて重要性と安全確保の考え方に関する理解醸成と
 安全確保の信頼性向上に向けた技術開発及び人材の確保・育成に不断の努力

 

 本インタビューシリーズでは、第5次エネルギー基本計画を踏まえた今後の取り組み等について各関係機関からお聞きしているが、今回は原子力発電環境整備機構(NUMO)の近藤駿介理事長に理解促進にむけた活動や長期的な技術開発への取り組みなどについて伺った。近藤理事長は、わが国で安全に地層処分が実施できることを継続的な対話活動やきめ細かな情報提供を通じて国民に理解してもらうと同時に、安全な処分技術の改善と向上に向けて地に足をつけた着実な取り組みを進める考えを示した。

 

-7月にまとめられた第5次エネルギー基本計画では取り組みの一層の強化が明記されたが、貴機構の技術開発および理解促進にむけた諸活動について、全般的にご所見をお伺いしたい。
 高レベル放射性廃棄物(HLW)の最終処分については、人工バリアを施した廃棄物を天然バリアとして良好な地質環境を有する地下300メートル以深の岩盤中に埋設する地層処分が、将来世代に過大な管理負担をかけることなく長期にわたり人の環境の安全を確保できる最適な方法と認識されており、わが国はじめ各国でその実現に向けて取り組みが進められている。
 フィンランドではすでに処分場の建設許可が発給され、建設を開始しており、スウェーデンでは近く同様の許可が発給される見込みである。またフランスでは建設許可申請が来年にも行われると聞いている。大切なことは、いずれの国でも数十年前に科学的観点から良好な地質環境を有すると推定されるいくつかの地域を関係組織が示し、その後、長い時間をかけてその地域の地下の調査が実施されて適地が同定され、これと並行して地域の人々との対話を行なって事業と共生していくことに合意を得て、事業が前進してきていることである。
 わが国では、原子力委員会の提言を受けて政府が高レベル放射性廃棄物等の最終処分制度を創設し、当該廃棄物の発生者により地層処分の実施主体として設立されたNUMOが2002年から処分地選定に向けて文献調査受け入れ自治体の公募を全自治体に対して行った。以来、毎年シンポジウムの開催等様々な努力を続けてきたが、応募する自治体が現れないことから、2008年頃から取り組みのあり方の再検討が開始された。
 2011年3月に福島第一原子力発電所事故が発生したことから、作業はなかなか進まなかったが、このことに現世代が責任を果たすことが重要との認識に基づく原子力委員会の提言や日本学術会議の意見が出されたことから、経済産業省総合資源エネルギー調査会で議論が精力的に進められ、2015年5月に至り、国がこの問題の解決に向けて前面に立って取り組むこと、国民の皆さまにこの取り組みの重要性を丁寧に説明すること、将来世代に負担を先送りしないように現世代の責任で取り組む一方、可逆性・回収可能性を確保すること、などの方針を織り込んだ「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」の改定が閣議決定された。
 2017年にはその一環として、最終処分関係閣僚会議が、「科学的特性マップ」を公表すること、これを契機に関係府省の連携のもと国民にこの問題に関心をもってもらい、処分地選定調査を複数の地域に受入れていただくことを目指して、大きく四つの取り組みを実施することが決定された。
 この四つの取り組みのポイントは、第一に国が科学的特性マップ等の情報提供を自治体に対して行い、全国的な対話活動にも参加して、各地で調査受け入れに関する検討が進められる環境を作ること。第二に、NUMOが複数地域での文献調査開始を目指し、科学的特性マップの「グリーン沿岸部」を中心にきめ細かく対話活動に取り組むこと、また発生者としての基本的責任がある電気事業者がNUMOの活動を全力で支え、自らもこの取り組みに主体的に取り組むことである。第三は、NUMOが事業実施に必要な技術開発を実施するとともに、技術マネジメント能力が高く現場経験に通じた人材を育成すること、第四は国際的な連携を強化し、世界各国に経験を学ぶと同時に、わが国の技術や経験を積極的に提供し、国際貢献を行うこと、である。
 これらはエネルギー基本計画にも受け継がれているので、NUMOはそれぞれの取り組みを確実に実施していく決意を新たにしたところである。なお、第三の取り組みに関係してNUMOは、2014年より作成に取り組んできた、安全な地層処分を実施する方法を評価も含めて包括的に説明する「包括的技術報告書」をようやくとりまとめたので、まもなく公表する予定である。

 

-地層処分に関する理解促進については「科学的特性マップ」を契機に、全国的な対話活動を5月から実施されている。対話活動の状況と今後の進め方についてお聞きしたい。
 NUMOは、今年に入ってから国と共同して各地で対話型全国説明会を開催し、事業の意義・進め方と安全確保の考え方、そして、このマップの意味がきちんと伝わるように、国民の皆さまと対話することに力を入れている。事業の意義に関しては、現世代の責任で問題を解決していくことに取り組むことの重要性を、安全性に関しては、原子力発電所の安全確保とは何が違うのか、人工バリアや地層の果たす天然バリアの意味を、ローマの遺跡やウラン鉱山などの例も用いながら、きちんと説明することにしている。
 昨年、科学的特性マップが公表された後に実施された全国規模のアンケート調査によると、「高レベル廃棄物の処分は現世代で行うべき」、「原子力発電の利用・廃止に関わらず高レベル廃棄物の処分の問題に取り組む必要がある」という意見は、約半数の方に支持されていた。このような国民の皆さまの認識の状況は、私どもも説明会のたびに感じており、励まされているところである。
 ところが、様々に報道もしていただいた科学的特性マップについては大半の方がご存じないこと、また、地層処分場で大きな事故が起こると心配される方が多いことが示されている。そこで、マップは、地質環境の調査を丁寧に実施することで、我が国においても良好な地質環境が長期間にわたって安定して維持される適地を見出せる可能性がある、そういう地域があることを示しているものであること、調査で適地とわかった地域の地下に人工バリアを施した高レベル放射性廃棄物等を地層処分すれば、人工・天然バリアからなる多重バリアシステムを確立できて、この廃棄物を将来にわたって人々に悪影響を与えないように管理できることを、対話を通じてお伝えできているか確認するよう努めている。また良い技術が生まれたり、万一の不都合の発生に備えて、廃棄体の再取り出し可能性を確保する工夫もきちんとお伝えしている。

 

対話型説明会の会場イメージ
(出典 NUMOホームページ)

 対話の席では、また、地域社会への影響についても、港湾を使用し、廃棄物等を道路輸送し、処分場の建設や操業に伴い地下を掘削し、その掘削土を地上に仮置きすることや、多数の人を雇用し、様々な物資を調達するため、人材開発、社会インフラ整備を進めることになるから、地域経済にも大きな影響を与えることなどを、きちんと説明するようにしている。処分場の候補地が決まったら、NUMOはそこに本拠を構え、そこでそのような取り組みを長期間にわたって行うので、地域社会とはWinWinの関係を作って地域社会の持続的発展に役立っていきたいと考えていることもお伝えしている。
 今年5月から実施している対話型全国説明会は、参加者に少人数に分かれてテーブルにお着きいただいて、国とNUMOから科学的特性マップなどについてご説明した後、各テーブルに同席する国とNUMOの職員との間で関心事について双方向の対話を行っている。毎回、テーブルでの対話は活発で、参加者の方々には感謝申し上げたい。より多くの方にご参加いただけるよう、地域における広報手段の活用など、開催告知方法を様々に工夫しているところである。
 またこの説明会活動に加えて、NUMOでは、パンフレットや映像資料をウエブサイトで提供する一方、地層処分模型展示車(ジオ・ミライ号)などを使った各地での展示、国際講演会の開催、地域の団体の学習活動を支援する事業、さらに大学などへの出前授業や教育関係者の地層処分に関係する授業実践に対する支援等、次世代層に情報提供を行う取り組みなどを、参加者からのフィードバックをもとに反省と改善を重ねながら、実施してきている。今後とも、説明会での質疑や海外事例から得た教訓や先に申し上げた「包括的技術報告書」の内容などをこれらに反映し、国民の皆さまに最新の情報を正しく提供するこれらの対話の取り組みを一層充実して進めて参りたい。

 

-技術開発については、長期的な取り組みを進めておられるが、どのような状況にあるか、また今後の重要課題などについてお伺いしたい。
 技術開発については、NUMOが掲げている経営目標の実現を目指し、安全な地層処分を実現するために必要十分な科学技術能力の持続的な充実を図るため、今年6月に策定した中期技術開発計画に基づき、国内外の関係機関等との共同研究や情報交流などを含む技術開発活動を計画的に進めるとともに、概要調査の円滑な実施に向け、技術系職員の対話力の向上を図り、現場業務の実体験を通じた現場実践力やプロジェクトマネジメント能力を強化するなどの人材育成にも取り組んでいる。その一環として、先に申し上げた「包括的技術報告書」は、公表後、NUMOの技術力の信頼性を向上する観点から、国内外の関係機関に外部レビューをお願いすることにしている。
 中期技術開発計画は2018年から2022年までの5か年でNUMOが実施する技術開発課題を、「地層処分に適した地質環境の選定およびモデル化」、「処分場の設計と工学技術」、「閉鎖後長期の安全性の評価」のそれぞれの分野について示しているが、このうち、「地層処分に適した地質環境の選定およびモデル化」では、処分場の建設に適した地質環境をどう決めるか、実データを用いてその考え方を整備するとともに、選定した地質環境を詳細に3次元で、また時間的な変遷も含めて表現する技術の開発を進める。これは概要調査につながる重要な技術であり、包括的技術報告書にもこれまでの開発活動で得られた試用例を収載している。
 「処分場の設計と工学技術」では、廃棄体をオーバーパックやパッケージに適切に収納し、運搬し、処分場に埋設し、閉鎖する、事業全般にわたる一連の技術、および必要に応じて回収する技術の開発を進めている。自動化技術やTRU等廃棄物廃棄体の性能向上などの重要課題に取り組み、処分場の建設・操業から閉鎖に至るすべての工程を安全に実施するために必要な技術を体系化していく。実用レベルに近くなるにつれ新しい課題も見えてくるが、幸い、海外の経験に学べるところがあるので、アンテナを高くして知見に学びつつ、しっかりとした技術体系をまとめ上げたいと考えている。
 「閉鎖後長期の安全性の評価」では、安全評価技術の充実とその妥当性の確認を行う。また、安全性を支配する特質、事象、プロセス(FEP:Features, Events and Processes)に関する根拠情報を充実するとともにそれを不確実性に関する情報も含めて管理するツールの整備も進めていく。核種移行に関するデータの拡充にも取り組む。
 なお、こうした技術の開発・利用をマネジメントする人材を確保・育成するため、技術系職員の現場業務の実体験を通じた現場実践力や対話力の向上を図ると同時に、業務の品質管理能力を含むプロジェクトマネジメント能力を強化するなどの取り組みや、これらを通じて得られた知識を体系化し最新の状態に更新していくナレッジマネジメント体制の充実にも継続的に取り組んでいく考えである。

 

-最終処分については、各国で取り組みが行われているが、国際的な連携や協力については、どのように取り組んでおられるか。


 NUMOは、国際原子力機関(IAEA)や経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)といった国際機関による、地層処分に関する活動に専門家、実務家を参加させ、情報交換・情報共有の取り組みを行わせるのみならず、これらの企画・推進にも寄与してきている。また海外の10の実施主体等と協力協定(あるいは覚書)を結んでトップが定期的に往来するのみならず、様々なレベルで情報交換し、共通する課題についての意見交換を行っている。また、欧州の地下研究所等で実施されているいくつかの共同研究には、資金を分担して参画している。
 私自身、各国の実施機関のトップの集まりである放射性物質環境安全処分国際協会(EDRAM)の定期会合に参加している。年に1、2度直面している課題について意見交換するが、お互い意思決定の責任者なので、実質的な議論ができている。現在その議長をお引き受けしており、最近、EDRAMチームを率いてIAEAの関係部局のトップと今後の協力の在り方について意見交換を行った。
 知識の発生する現場、特に研究所や国際機関等での作業への参加は、知識の生産と共有に効果的であるから、職員にも、なるべくそうした場に赴いて知識を得たり、情報交換するように促しているところである。

 

-超長期的な取り組みが必要な高レベル廃棄物等の処分事業を進めるため、人材確保や育成が重要と考えるが、貴機構の取り組みについてお伺いしたい。
 先に中期事業目標を策定した際に、その目標を達成するためにどのような人材やスキルが必要になるか、そして人材育成にどう取り組むべきかを議論して、「中期人材確保・育成方針」をとりまとめた。この方針には、NUMOが求める人物像を「高い規範意識」のうえに、地層処分技術の高度化に向けた「プロフェッショナル」として、事業を着実に実現するための「実行力」を備え、地域の皆さまに信頼され愛される「人間的魅力」にあふれる人物とし、こうした人材を育成することを目標に掲げた。
 この方針に従い、実際の説明会での対話やその現場を想定した模擬訓練によって得られる教訓や、調査の準備としての研修活動などを通じて、職員の能力向上を図っている。また人材確保については、関係機関等の協力を得て経験豊富な出向者を継続的に確保するとともに組織の将来を託する人材を確保する観点から新卒を確実に採用してじっくり育成する一方、即戦力となる経験者の中途採用にも努めている。
 私は、原子力界にとって現在、将来展望を踏まえた人材育成の基盤整備を目指して産業界や教育機関が課題とその解決のための資源を共有することがとても大事だと思っている。人材育成には実務を中心とする教育・訓練活動を継続的に維持する覚悟と、その基盤になるナレッジマネジメントを適切に実施していくことが重要である。
 私どもとしては、同じ思いを共有する意志のある組織とは協力しつつ、責任を果たすのに必要な準備は自分たちだけでも進めなくてはいけないと覚悟して、取り組んでいく所存である。

 

以 上

お問い合わせ先:政策・コミュニケーション部 TEL:03-6256-9312(直通)