「海水の淡水化に関する検討会」調査研究報告書
〜「海水淡水化の現状と原子力利用の課題」について〜
平成18年7月4日 (社)日本原子力産業協会 政策本部
1. 検討の趣旨
- 今後、世界的な水不足は深刻化する。
- 中東諸国を中心に海水淡水化事業は急速に増加している。
- 現在、熱源は全て化石燃料である。
- 海水淡水化への原子力利用については、中近東諸国の要請もありIAEAで議論されている。
- 日本は、IAEAでの議論に参加しているが、一部民間が自主的に参加している状態。仏や韓国、インドでは実証に向けて活動中。
- こうした状況を踏まえ、海水淡水化事業の現状、技術を調査し、原子力技術の適用にあたっての課題を摘出するため、原産協会に検討会(主査・湊章男電中研上席研究員)を設置し、本年1月から検討してきた。
2. 検討結果概要
(1)淡水化需要
- 世界の淡水化需要は過去30年間で12倍。2003年末には3,700万立方m/日を越えた。
- サウジアラビアには100万立方m/日の施設など数十万立方m/日の大型施設がある。日本には福岡県に5万立方m/日および沖縄県に4万立方m/日が代表的な施設。
(2)淡水化技術の方式
- 現在、淡水化プラントは逆浸透法と蒸発法が中心。最近では前者の方式が増加傾向である。
(3)淡水化プラントメーカー
- 世界のプラントメーカー別の実績をみると、全体では上位10社に日本メーカーが5社、上位20社に7社が実績をあげている。
- しかし最近では、国別では日本は米、イタリア、仏、スペインにつぐ5位と順位を下げている。
(4)原子力適用の課題
- 導入国の基準、制度などの調査が必要。
- プラントがトリップした場合の原子炉側での影響の検討
- 最適な造水比の検討が必要
- 原子炉運転による制約と淡水化プラントの運転・負荷変動に対する整合性の調査
- ビジネスとしての課題の調査、等
(5)今後の課題
- 日本として、原子力利用による淡水化事業の国際的展開について、中長期的観点からその実現を図るべく、国を中心に将来構想などを検討していくことが重要。
- 原子力利用に当たって技術的あるいは制度的にどのような制約条件があるのか、淡水化の観点から開発すべき技術はどういうものか、等について、現状などまず基礎的な調査研究から始める必要がある。
今後は、経産省、原子力委等、国に対して、原子力淡水化の国際展開の状況等、認識を深めてもらうとともに、長期的な視点で日本としての基本的方向性を議論してもらうよう働きかける。
以 上
調査研究報告書 海水淡水化の現状と原子力利用の課題 −世界的水不足の解消をめざして− (477KB)
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