lights on with nuclear

 [JAIF]原産協会メールマガジン

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原産協会メールマガジン2月号
2011年2月25日発行

Index

■原子力政策推進活動

 □原子力発電所稼働率向上と安全規制の高度化を目指した理解促進・国論形成活動
 □松山市で4月に第44回原産年次大会を開催
 □高レベル放射性廃棄物の地層処分について -大学における対話集会の開催-

■国際協力活動

 □カザスフスタン共和国政府の原子力関係者との懇談会を開催

■情報発信・出版物・会合のご案内

 □「ニュークレオニクス・ウィーク日本語版」、発行から20年1000号を迎える

■原産協会からのお知らせ

 □ 事務所移転のお知らせ

■ホームページ・動画の最新情報

 □原産協会HP(一般向け)の更新情報
 □動画配信
 □会員向けHPの更新情報
 □英文HPの更新情報

■原産協会入会のお知らせ
■原産協会役員の最近の主な活動など
■シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」【24】
■げんさんな人達(原産協会役・職員によるショートエッセイ)

本文

■原子力政策推進活動

□原子力発電所稼働率向上と安全規制の高度化を目指した理解促進・国論形成活動

 当協会の服部理事長は、新原子力政策大綱の策定が開始されたことを受け、1月26日に「新原子力政策大綱の策定に関する議論の開始にあたって」、2月8日には「原子力発電所の安全規制高度化の議論に向けて」と題するコメントを発信しました。

 その中で、わが国の原子力発電所稼働率の低迷が環境面および国民経済の点で損失を招いており原子力発電の海外展開にも悪影響を及ぼしていることなどを指摘。低稼働率の背景には発電所運営管理面等でわが国特有の事情があると考えられるとして、事業者側と規制側から国民への説明責任を果たす必要性を述べました。そして、原子力発電所の稼働率向上を当面の最優先課題として国を挙げて取り組むべき時期であると強調しました。

 この課題への対応を探るにあたり、原子力事業者と安全規制当局が問題認識と達成すべき目標を共有した上でのオープンな議論のプロセスが安全規制に対する信頼性の向上と安心感の醸成に資すること、信頼性の高い効率的な原子力発電所の運営への転換を図ることが重要であることなどを強調しました。

 今回のコメント発信に関連して、2月9日に会長と中央5紙の論説委員との懇談、2月15日には理事長を中心に記者懇談会を実施し、発電所稼働率の現状と向上に向けた課題、安全規制に対する信頼性の向上の重要性、メディアによる国民への発信の役割等について意見交換しました。

 当協会は今後も、様々な機会を捉えて、原子力発電所稼働率向上と安全規制の高度化を目指した理解促進・国論形成活動を行っていくこととしています。


□松山市で4月に第44回原産年次大会を開催

 当協会は4月12日~14日、「新時代を迎えた原子力-日本と世界を展望する」を基調テーマに、第44回原産年次大会を愛媛県松山市の「ひめぎんホール」で開催します。2月14日、同大会組織委員会(座長:柳澤康信・愛媛大学 学長=写真)の第2回会合を松山市で開催しました。今後、委員からの意見を参考にプログラムを確定し、3月上旬に参加者募集を開始する予定です。

 大会内容は以下のとおりです。

 13日の開会セッションでは、中村時広・愛媛県知事、山下和彦・伊方町長からご挨拶をいただきます。引き続き、特別講演として、ルイス・エチャバリ経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA) 事務局長の他、スウェーデン、ベトナム、米国から、ご講演をいただく予定です。

 セッション1「世界における日本の原子力を考える」では、三又裕生・経済産業省 資源エネルギー庁 電力・ガス事業部 原子力政策課長による基調講演の後、十市勉・(財)日本エネルギー経済研究所 専務理事を議長に、五十嵐安治・(社)日本電機工業会 原子力政策委員会 委員長、市川眞一・クレディ・スイス証券(株) 株式営業部 チーフ・マーケット・ストラテジスト、ヘレン・クック フレッシュフィールズ・ブルックハウス・デリンガー法律事務所 アブダビオフィス アソシエイト、武黒一郎・国際原子力開発(株) 社長、東京電力(株)フェロー、アンドジェイ・ホゥファス ポーランド経済省 原子力局 局長代理にご参加いただき、パネル討論を行います。

 セッション2「原子力技術の維持・向上と人材育成への取り組み」では、服部拓也・(社)日本原子力産業協会 理事長を議長に、IAEAによる基調講演の後、坂田東一 文部科学省 顧問、前文部科学事務次官をはじめとして、韓国、中国、マレーシアから、ご講演をいただく予定です。

 セッション3「原子力発電所と地域社会との望ましい姿とは」では、坂本明仁・伊方町 政策推進課 課長と石﨑幸人・四国電力(株)取締役副社長 原子力本部長の基調講演の後、八木絵香・大阪大学 コミュニケーションデザインセンター 特任准教授をファシリテーターに、伊藤篤司・愛媛県商工会議所 青年部連合会 第一副会長、伊藤聡子・キャスター、事業創造大学院大学 客員教授、江戸利昭・愛媛新聞社 論説委員長、窪田恕子・えひめ消費生活センター友の会 会長、田中知・東京大学 大学院 工学系研究科 教授、総合資源エネルギー調査会 電気事業分科会 原子力部会 部会長にご参加いただき、パネル討論を行います。

 また、12日には、四国電力(株)伊方発電所などを見学するテクニカルツアーを行うほか、大会期間中会場1階県民プラザにおいて、「放射線利用機器展-暮らしの中の放射線」を開催いたします。なお、こちらは一般の方も自由にご覧いただけます。

 大会の詳細および最新状況は随時ホームページでご案内いたしております。
 みなさまのご参加をお待ちしております。
http://www.jaif.or.jp/ja/annual/44th/44th-annual_top.html


□高レベル放射性廃棄物の地層処分について -大学における対話集会の開催-

 当協会は、昨年12月~今年2月にかけて、大阪、東京、金沢、徳山にある5つの大学で、高レベル放射性廃棄物の地層処分をテーマとした対話集会(勉強会)を実施しました。

 対話集会では、①エネルギー問題、②環境問題、③高レベル放射性廃棄物の地層処分、以上の3つの内容について、大学での授業時間や要望などによって説明内容や構成などを変えながら、世界的に緊迫したエネルギー利用状況、資源の有効利用の観点からの原子力発電の必要性、地球温暖化での原子力の役割、地層処分事業の必要性や安全性のほか、不確実性を伴う地層処分に関する意思決定の議論の重要性に関する情報などを提供し、次世代を担う学生さんと意見交換する活動を継続的に展開しています。今回開催した5回の対話集会でも多くの質問が出され、活発な意見交換を行いました。

 ◎ 2010年12月14日、近畿大学(大阪府)での対話集会
 近畿大学 理工学部 電気電子工学科のエネルギー・環境コースの学部学生および院生の約70名の学生と対話集会を開催しました。 
(意見交換での主な質問内容)
 「海外では高レベル放射性廃棄物(HLW)の処分場が決まった国もあるが、日本では公募をしている状況であるが、建設を始めないと間に合わないのではないのか」、「何故、ガラスで固化しなければならないのか」、「放射能漏れはどの位あるのか、漁業には影響があるのか、住民への説明はなされているのか」、「埋める必要性について、この事業はそれほど急がなくてもよいのではと思うがどうか」、「処分場への運搬について、もう少し教えてほしい」、「地層処分の閉じ込めシステムの3重の地下水対策について教えてほしい」など。

◎ 1月7日、関西大学(大阪府)での対話集会
 関西大学 社会安全研究科 社会安全学部の理工系の学部学生および院生の約10名の学生と対話集会を開催しました。
(意見交換での主な質問内容)
 「原産協会は原子力発電や高レベル放射性廃棄物の処分を、どのようにしたらよいと思っているのか」、「どうして高レベル放射性廃棄物は、危ないのか」、「日本国内の原子力発電所からの電力を止めてしまうと一体、どうなるのか」、「原子力発電と核爆弾の違いは何か」、「石油の採掘可能期間が42年と書いてあるが、もう少し詳しく説明してほしい」、「そもそも原子力発電が必要である理由がはっきりしないので、教えてほしい」、「海外での議論の例にもあるように、管理処分の方法でもよいのではないのかと思うが、意見を聞きたい」、「高レベル放射性廃棄物の廃液を海洋投棄してはいけないのか」など。


◎1月14日、東京都市大学(東京都)での対話集会
 東京都市大学 工学部 原子力安全工学科の「バックエンド安全工学」を履修している学生約20名(3・4年生)と対話集会を開催しました。
(意見交換での主な質問内容)
 「日本での安全評価については、どのくらいの期間まで行っているのか」、「人工バリアの緩衝材はどのような形状を考えているのか」、「地下の閉じ込め能力は、定量的な評価がなされているのか」、「地質的によい場所を選び、候補地を絞り込んでいくやり方を日本で行うことはできるのか」、「現在、ガラス固化体を貯蔵している施設にまだ余裕はあるのか。あと何本ぐらい貯蔵できるのか」、「地層処分するガラス固化体は、場所によって処分する本数が変わるのか」、「立地選定のプロセスについて、調査の後、どのくらいの期間がかかるのか」、「将来、技術が発展すると、再取り出しは可能になるのか」、「処分場のスケールはどのくらいの規模になるのか」、「放射性物質の分離変換技術について教えてほしい」など。

◎1月21日、金沢工業大学(石川県)での対話集会
 金沢工業大学 工学部 電気電子工学科(1年生)および電気エネルギー発生工学(3・4年生)の約200名の学生と対話集会を開催しました。
(意見交換での主な質問内容)
  「立地選定から調査、建設、処分まで、どのくらいの期間および費用がかかるのか」、「工期が100年間だと、その間の原子力発電の稼動やHLWの置き場所に問題はないのか」、「日本は地震国であるが、処分場の耐震設計について仕様は既に定められているのか。また、地震による天然バリアおよび人工バリアの影響について教えてほしい」、「東洋町ではネガティブキャンペーンなど住民の6割が反対であったとのことであるが、今日のような話を住民にきちっと話しておれば、もっと反対は少なかったと思うが、現地ではどのような(推進の)活動がされていたのか」、「HLWそのものを無害にするような技術は、今ではもう無理なのか」、「ガラス固化体の色は何色なのか」、「処分場でいったん埋めたものを、また取り出すことはできるのか」、「HLWを取り扱う上で、人為的な操作ミスへの対策は何かあるのか」、「テロリストにHLWが使われてしまうような危険性はあるのか」、「地層処分で放射性物質が漏れた場合、どのように検出するのか」、「日本国内および世界の人々に原子力発電の必要性や重要性を認めてもらうために重要なことは何か」、「日本では処分地の選定が問題となっているが、海外での事例はどうなのか」など。

◎2月3日、徳山大学(山口県)での対話集会
 徳山大学 経済学部に在籍するゼミ生約20名の学生と対話集会を開催しました。
(意見交換での主な質問内容)
 「高レベル放射性廃棄物の処分は、数万年という長い寿命を持つ物質を閉じ込めるという話を聞いたが、そんなに長期にわたって安全性を確保できるのか」、「地下に高レベル放射性廃棄物を埋めた時に、地圧によって高レベル放射性廃棄物が壊れる可能性はあるのか」、「高レベル放射性廃棄物処分の候補地に手を挙げると、国からどのくらいのお金が交付されるのか、また候補地は決まっているのか」などの質問が出され、意見交換を行いました。また、「我々の世代で電気を使っている以上、もっと真剣に高レベル放射性廃棄物のことについて考えていかなければいけないのではないだろうか」など。


■国際協力活動

□カザスフスタン共和国政府の原子力関係者との懇談会を開催

 カザスフスタン共和国政府の原子力関係者一行(*)を招き、当協会は2月3日、懇談会を開催しました。

(*)社団法人ロシアNIS貿易会(ROTOBO)が平成20年度より実施する、原子力関連産業に携わる人材育成事業(経済産業省委託)として来日したもので、ドンバエフ産業・新技術省原子力委員会分析・監督部部長を団長に、国立原子力センター他、関係省庁の現地政策担当者ら計10名から構成。

 一行は、自国の原子力産業の発展に係わる政策立案や人材育成等に活かすため、日本の政府、原子力関係機関・団体を訪問し、日本における原子力およびその関連産業にかかわる様々な政策、原子力およびその裾野産業発展における政府の役割や原子力産業界の構造と特色について研修を受けました。滞在プログラム初日、当協会のスタッフより、日本の原子力政策と原子力産業に関する基調講義を受講しました。

 懇談会では、日本側から電力会社、メーカー、商社、原子力機関の関係者が出席する中、カザフスタン国立原子力センターのムクシェバ主任学術秘書より、同国の原子力政策や体制、原子力産業や研究開発、原子力応用技術についての紹介のほか、セミパランチンスクの核実験場における復旧事業や放射能影響調査の実施、核不拡散への取り組みなど、幅広い分野にわたって説明がありました。

 新技術導入による産業構造改革を進めるカザフスタンでは、原子力においても例外ではなく、カザフスタン国側で批准手続が近く完了する見通しとなっている日本とカザフスタンの政府間原子力協定の発効とそれに続く具体的ビジネスの進展への期待を寄せました。

 医療用放射性同位体の生産にも取り組んでおり、世界的な供給不足となっているモリブデン99についても製造技術を有し、許認可手続を経た後、核医学センターで生産体制を整えていくとして、海外からの投資も歓迎する意向を示しました。

 また、カザフスタンにおいても原子力分野における人材育成は焦眉の課題であり、国立原子力センターが中心となり、セミパラチンスク大学に専門家育成のための専攻コースを設置、近隣のロシアの大学やチェコの大学等とも協力連携をしながら進めていると紹介しました。

沸騰水型原子炉
高温ガス冷却研究炉IVG.1M
パルス型黒鉛原子炉IGR
研究炉 材料学用トカマク
(熱核融合炉)KTM
重イオン加速器DC-60
カザフスタン発表資料より)



■情報発信・出版物・会合のご案内

□「ニュークレオニクス・ウィーク日本語版」、発行から20年1000号を迎える

 当協会では、1991年より米国マグローヒル社(現プラッツ社)発行のNucleonics Week誌の日本語版を発行してきました。
 Nucleonics Week誌は、1950年代の原子力発電草創期以来、現地取材を元にした速報性および信頼性の高い唯一の週刊原子力情報誌として、世界中で読まれています。

 当協会では、発足間もない頃より英文オリジナルから、様々な事象についてデータなどを分析するなどして会員の皆様を始め、情報提供に努めていました。
 しかし、直接、有用かつ内容豊富なニュースをできるだけ早くお手元に届けることの重要性に鑑み、原文に忠実かつ正確な翻訳のみならず原子力専門家によるチェックを加え、日本語版を発行することにしたものです。

 以来、約20年1000号を迎えるまでには、日本を巡る原子力の状況も大きく変る事になりました。特に昨今では、世界的に「原子力ルネッサンス」の高まりもあり、益々新興国を含めた海外動向の把握が重要となっています。

 ここまで、刊行が継続できたことは、ひとえにご購読頂いている皆様の厚いご支持があったからであります。メルマガの場をお借りして御礼申し上げますとともに、この国際情勢の大きな変動の中、広く日本語版を通じて、皆様に有効活用して頂ける情報誌の提供に一層努めてまいります。

Nucleonics Week日本語版」1000号


 本件問い合わせ先:情報・コミュニケーション部 木室  e-mail: nwj2@jaif.or.jp


■原産協会からのお知らせ

□事務所移転のお知らせ

 当協会は、下記の通り事務所を移転することになりましたので、お知らせいたします。

 【新住所】 〒105―8605 東京都港区虎ノ門1―2―8
          虎ノ門琴平(ことひら)タワー9階

 現在の事務所は4月28日(木)まで通常業務を行い、新事務所での業務開始は5月9日(月)となります。
 なお、誠に勝手ながら、移転業務のため、5月2日(月)、6日(金)は通常業務を休ませていただきます。
 今回の移転に伴い、電話・FAX番号、郵便番号、ホームページアドレス、メールアドレスの変更はありません。



■ホームページ・動画の最新情報

□原産協会HP(一般向け)の更新情報 ( http://www.jaif.or.jp/ )

*国内、海外ニュースは毎週および随時更新しております。

・【被ばく一元管理の実現に向けた活動】サイトに、放射線作業者の被ばくの一元管理シンポジウム(1/25開催、主催:日本学術会議)の概要と講演資料を追加(2/16)
http://www.jaif.or.jp/ja/kisei/kisei_houshasenkisei-saitekika.html
・【アジア原子力情報】サイトに「マレーシアの原子力開発の現状」を追加、「タイの原子力開発の現状」を改訂 (2/8)
http://www.jaif.or.jp/ja/asia/index.html


〈解説・コメント・コラム〉
・理事長コメント「原子力発電所の安全規制高度化の議論に向けて」(2/8)
http://www.jaif.or.jp/ja/news/2011/hattori_anzen-kisei110208.pdf
・理事長コメント「新原子力政策大綱の策定に関する議論の開始にあたって」(1/26)
http://www.jaif.or.jp/ja/news/2011/hattori_aec-taiko110126.pdf


□動画配信 ( http://www.jaif.or.jp/ja/jaiftv/ )

*原子力発電所の保安活動~電気を安定してお届けするために~ (2/15配信)

□会員向けHPの更新情報( https://www.jaif.or.jp/member/

・【日本の原子力発電所の運転実績】1月分データを掲載 (2/7)
・韓国の閣議決定「2011年エネルギー需要展望及び対策」と知識経済部発表「第5次電力需給基本計画」の全文仮訳を掲載(2/4)

□英文HPの更新情報( http://www.jaif.or.jp/english/

○Atoms in Japan (AIJ):週刊英文ニュース(12本 2/1-2/25)


■原産協会入会のお知らせ

・日本イーエスアイ(株)


■原産協会役員の最近の主な活動など

[今井会長]
・2/9(水) 今井会長と主要論説委員との懇談会(三役員とも出席)

[服部理事長]
・2/14(月) 第44回原産年次大会組織委員会、愛媛県政記者会記者懇談会(於:松山全日空ホテル) (石塚常務出席)
・2/15(火) 「原子力発電所の設備利用率向上について」等プレスブリーフィング
・2/22(火) サウス・テキサス・プロジェクト視察(於:テキサス)
・2/23(水) 日米官民原子力ラウンドテーブル出席(於:ワシントンD.C.)
・2/28(月) 会員情報連絡協議会(於:東海大学校友会館) (両常務とも出席)

[石塚常務理事]
・2/15(火) 三菱電機㈱電力システム製作所視察(神戸市)     

◇役員の雑誌等への寄稿、インタビュー掲載記事◇
○服部理事長
・インタビュー記事掲載  電気新聞 2/9(水) 1面「原子力人材」~ネットワーク始動~ 


■シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」【24】

インドネシアの原子力開発事情と原賠制度
 今回は、豊富なエネルギー資源と世界第4位の人口を持つインドネシアの原子力開発事情と原賠制度についてQ&A方式でお話します。

Q1.(インドネシアの原子力開発事情)
エネルギー資源の輸出国として知られるインドネシアの原子力開発はどのような状況ですか?

A1.
・ インドネシアは豊富なエネルギー資源を持つ国として知られていますが、今後の資源枯渇やエネルギー需要増を考慮すると、資源量は必ずしも十分であるとは言えません。
・ インドネシアは早い段階から原子力全般に渡る研究開発に力を注いできており、その歴史や規模はASEAN随一です。
・ インドネシアはこれまでに何度か原子力発電所導入の計画を立ててきましたが、最終的には中止や無期延期となり、未だ導入には至っていません。
・ 近年の計画では2016年頃にムリア半島で初号機を運転開始、2025年に合計4基4GWを導入するとされていますが、事業としての取り組みは遅れています。
・ インドネシアの原子力発電計画に対する我が国を始め、韓国、フランス、ロシア、米国等の働き掛けは活発な状況にあります。


【A1.の解説】
 インドネシアは石油、天然ガス、石炭などのエネルギー資源を輸出しており、豊富な資源を持つ国として知られていますが、石油の生産量は年々減少し、2004年以降は石油の輸入量が輸出量を上回っています。また、世界第4位となる2億3千万人の人口を抱えており、今後も電力需要が大幅に増加することが見込まれていることから、インドネシアの資源量は十分なものとは言えません。

 インドネシアの初代大統領スカルノ、第2代大統領スハルトは、先進国への仲間入りの条件の一つとして原子力利用が必要と考え、早くから原子力研究開発に力を入れてきたため、その歴史や規模はASEAN随一となっています。
 インドネシアの原子力研究開発は1954年に実施した太平洋上の原水爆実験の影響調査に始まり、58年には原子力諮問委員会と原子力研究所(後に原子力庁BATANに改組)を設置、64年には原子力法と原子力規制法を制定し、65年には初の研究炉であるTRIGA-Mark II炉(250kW)を完成させました。その他にも30MWのプール型多目的研究炉(RSG-GAS炉)や100kWの教育訓練用研究炉などを持っており、放射線の農業・医療利用、原子力エネルギー利用、放射性廃棄物の管理技術開発、処理事業など、原子力全般に関する研究開発を行っています。

 インドネシアは1971年にBATANがIAEAの援助の下で原子力発電導入調査を行ったのをはじめ、これまでに何度か原子力発電所導入の計画を立ててきましたが、86年のチェルノブイリ事故を契機に中止となったり、また97年には政治的不安定により無期限の延期となったため、現在まで導入には至っていません。しかしながら、法整備の面では1997年4月に新たに成立した原子力エネルギー法では、原子力施設で原子力損害が生じた場合の原子力施設の運転者に対する損害賠償責任、BATANから新たな原子力規制機関を独立させる、原子力発電所の建設に関わる諮問機関を設置する等が規定されました。

 その後にIAEAの協力を得て行ったインドネシア政府の研究により、「環境保護と急増する電力需要に対処するためには2015年頃には原子力発電導入が必要」との評価結果等を踏まえ、2002年頃から原子力発電導入の動きが再浮上しており、エネルギー関連法令において原子力発電の位置づけを明確にするなど、エネルギー政策として原子力導入計画を進めてきました。
 BATANによる導入計画では、建設予定地はジャワ島中部北岸のムリア半島とし、2016年頃に初号機を運転開始、2025年に合計4基4GWの原子力発電を導入することとなっていますが、導入決定に対する大統領の躊躇もあり、事業としての取り組みは遅れています。

 インドネシアの原子力発電計画に対する売り込みには、我が国を始めとして官民一体となった韓国、フランスやロシア、米国、カナダなどの積極的な働き掛けが見られます。我が国のインドネシアへの関わりは1980年代半ばから始まり、2007年には経済産業省とインドネシア・エネルギー鉱物資源省との間で原子力発電導入における協力覚書(MOC)が締結され、2009年には経産省による「原子力導入基盤整備事業」が開始されています。
 

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Q2.(インドネシアの原賠制度)
研究炉のあるインドネシアの原賠制度はどのようになっていますか?


A2.
・ インドネシアでは1964年に原子力エネルギー法、原子力規制法が制定され、その後1997年に現行原子力エネルギー法が制定されたのをはじめとして、関係法令が整備されました。
・ インドネシアの原賠制度は原子力エネルギー法(1997年第10号法令)に規定されており、原賠制度の基本的原則を備えていますが、国の措置や援助に関する規定はありません。
・ インドネシアは1997年に改正ウィーン条約と補完基金条約(CSC)に署名しています。


【A2.の解説】
 インドネシアではTRIGA-Mark II研究炉が臨界を迎えた1964年に原子力エネルギー法と原子力規制法が制定されました。その後、原子力発電の導入に向けて1997年に原子力エネルギー法が改定されたのをはじめ、核物質輸送安全法、放射性廃棄物管理法、原子炉許認可法などが整備され、2006年には原子炉規制法も改定されました。原子力規制庁(BAPETEN)は2012年までに原子力発電に関連する法規の整備完了が要求されています。

 インドネシアの原賠制度は1997年に改正された原子力エネルギー法(1997年第10号法令)の「第VII章 原子力損害に対する賠償責任(第28条~第40条)」に規定されており、無過失責任、責任集中、損害賠償措置、責任限度額(現在9,000億ルピアから4兆ルピア=約371億円に引上げ)など、原賠制度の基本的原則を備えていますが、損害額が賠償措置額を超えた場合や、運転者の免責事項に該当する場合の、国の措置や援助に関する規定はありません。

 なお、インドネシアはIAEAにおける1997年の改正ウィーン条約や補完基金条約(CSC)の採択に合わせて両条約に署名していますが、批准には至っていません。その他の国際枠組みとしては、原子力安全条約、使用済み燃料安全管理・放射性廃棄物安全管理合同条約(署名のみ)、原子力事故早期通報条約、原子力事故または放射線緊急事態における援助条約、核不拡散条約(NPT)、包括的核実験禁止条約(CTBT)(署名のみ)、核物質防護条約改定条約に加盟しており、IAEA保障措置協定、追加議定書も締結しています。

 より詳細な解説はこちらhttp://www.jaif.or.jp/ja/seisaku/genbai/mag/shosai24.pdf

*平成23年2月24日現在のレートによる。

                     ◇    ◇    ◇

 シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」のコンテンツは、あなたの声を生かして作ってまいります。原子力損害の賠償についてあなたの疑問や関心をEメールで genbai@jaif.or.jp へお寄せ下さい。


■げんさんな人達 (原産協会役・職員によるショートエッセイ)

カブキの楽しみ

 歌舞伎-世界遺産にも登録された400年続く日本の伝統芸能-と書くと、格式ばって難しそうと敷居が高く感じられて、歌舞伎に触れたことがない方も多いようです。しかし、もともと江戸庶民の娯楽。気楽に楽しむことのできるエンターテイメントです。

  「歌舞伎」というと、まず「歌舞伎座」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。老朽化による建て替えのため、昨年4月の興行をもって閉場し、現在は再来年春の開場をめざして建設中ですが、その桃山風の建物は、銀座のなかでも一際目を引き、昨年の今頃は写真に収めようという方で混雑していました。

 その歌舞伎座が消えて、歌舞伎が演られていない、と思われている方もいらっしゃるようですが、歌舞伎座に変わって興行の中心となっている新橋演舞場をはじめ、師走の顔見世で有名な京都・南座、名古屋の御園座、大阪・松竹座と全国で歌舞伎公演は続けられています。

 他にも、江戸時代に建てられた日本最古の芝居小屋である金丸座(四国・琴平町)で毎年公演されている他、渋谷や赤坂でも公演が行われることがあります。今年のお正月、東京では新橋演舞場はじめ、国立劇場、テアトル銀座、浅草公会堂の4ヵ所で公演があり、それぞれ賑わいをみせていました。


 歌舞伎は高そう、とよく言われますが、いろんな席がありお手頃な席も多いのです。新橋演舞場の場合、3階席は5000円と3500円。歌舞伎は昼夜2部制で昼・夜で別の演目が上演されることが多いのですが、昼の部は11時開演で終演は15時半頃。夜の部は16時半開演で、終演が9時前後と、休憩を含め4~5時間。1時間当たり約1000円でライブの舞台が楽しめるのは他の演劇に比べても意外とリーズナブルでは。

 このような庶民の味方の3階席には熱心なファンが多く、芝居の途中、絶妙のタイミングで「音羽屋!」「成田屋!」とかけ声がかかり、舞台と客席を一体化させ雰囲気を盛り上げてくれます。一方、優雅に観劇という場合には、席まで食事をとどけてもらえるセレブ感(?)漂う桟敷席(16000円)もあります。その時の目的とお財布の状況に合わせていろいろ楽しめるのも歌舞伎の魅力。チケットも電話の他、インターネットでも好きな席を選んで購入できます。

 歌舞伎には、重厚な時代物、江戸庶民を描いた世話物、舞踊等さまざまな演目があり、野田秀樹や三谷幸喜による新作も生まれています。同じ演目でも役者によって演じ方が異なるため、受ける印象も異なってきます。観る側の状況によっても変化し、最初見たときはつまらなかった作品も二度目にはとても面白く感じたりと様々です。観る側、演じる側の状況によって舞台は変わるので、その時々の舞台と客席の出会いが一期一会。いろいろ観ておきたいと劇場へ足を運ぶことになり、ますます深みにハマっていくように思います。

 歌舞伎座をはじめとする劇場には、芝居をみるだけでなく、食事をしたり、甘いものを食べたり(ロビーでは鯛焼きを焼いていたりします)、いろいろあるお土産物屋をみたり、と楽しめる要素は満載。また、季節感を感じることが少なくなっている現在には珍しく、節分に豆まきが行われたり、お正月には劇場正面に酒樽が積まれ、ロビーには鏡餅や羽子板が飾られてとても華やかで、季節を楽しむことができる異空間でもあります。一度、気楽に劇場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。  (せんまつ)



◎「原産協会メールマガジン」2011年2月号(2011.2.25発行)
発行:(社)日本原子力産業協会 情報・コミュニケーション部(担当:木下、八十島)
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