lights on with nuclear

 [JAIF]原産協会メールマガジン

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原産協会メールマガジン5月号
2010年5月25日発行

Index

■最近思うこと (理事長コラム)  
■原子力政策推進活動

 □インフォコム2010-原子力広報関係者連絡会
 □「JAIF地域ネットワーク第2回意見交換会」を開催

■国際協力活動

 □ポーランド、リトアニアの現地調査を実施

■情報発信・出版物・会合のご案内

 □「輸送・貯蔵専門調査会」平成22年度会員募集
 □カザフスタン原子力情報を紹介-駐日カザフスタン大使の講演会から

■ホームページ・動画の最新情報

 □原産協会HP(一般向け)の更新情報
 □動画配信
 □会員向けHPの更新情報
 □英文HPの更新情報

■原産協会役員の最近の主な活動など
■シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」【15】
■げんさんな人達(原産協会役・職員によるショートエッセイ)

本文

 
最近思うこと (理事長コラム)
 
理事長 服部 拓也
         

 ホテルを出て4時間くらい走ったであろうか、朝食をとらずに出発したので、「オアシス」と看板を掲げた小奇麗なパーキングエリアで一休みすることにした。屋外に丸テーブルと椅子を並べたレストランでドーサー、サモーサ、そしてチャイをいただく。衛生面での緊張感を抱きながら食事するのはあまり心地いいものではないが、複雑な味と香りがミックスしたマサーラー文化はどこに行っても当たりはずれがない。

 奥にはイングリッシュ・ガーデンと称して広い芝生とそれを取り囲んで花の植え込みがある。植栽はきれいに刈り込まれ、一歩外の街では井戸からの水を人力で運んで足しにしている水を、ここではふんだんに花や植栽にやられている。それほど高級というわけではないが、ここは周りと隔絶された特別のエリアである。

 「オアシス」を後にして、ハルドワ―ルに向けて更に北へ向かうが、突然、車が側道に入るのでどうしたものかと聞くと、商用車は州をまたいで入域する際に通行税を支払う必要があるとか。あくまで申告制なので、その管理はどうなっているのか疑問に思う。

 道の両側に広がるのは一面の美しい緑のサトウキビ畑、搾り取った後の白い繊維質の滓が畑の一角に敷き詰めてあり、緑と白のコントラストが美しい。刈り取ったばかりのサトウキビや搾り滓を山のように満載した牛車の列がゆっくりと進みながら狭い道路を占領しているので、対向車に気をつけながらこれを追い越すのは容易ではない。背中にコブがあり立派な角を持った牛の背中に、小学生くらいの子供がムチを持って跨って巧みに操っているが、このあたりでは牛車が重要な輸送手段である。

 サトウキビ畑の中に根元の直径が5~6メートル、上に向かって先が細くなった、高さが2~30メートルもある赤茶けた色の煙突が次次と目に入ってくる。この地方の家や道路や塀などに多く使われているレンガを焼いているのだ。道路の拡幅工事も進められており、立派に育った両側の並木が切り倒されるなど、このあたりにも開発の波が押し寄せている。

 踏み切りで暫し停車していると、停車した車の乗客目当てに焼き芋や野菜スティック、ジュースなどを満載した手押し車で売り子がやってくる。買って食べるのは勇気がいるが、美しく並べられた野菜の色彩感覚に感動してしまう。どこへ行くのか、乗客を満載したディーゼル駆動の長い列車が通過していく。    (次号へつづく)


 

■原子力政策推進活動

□インフォコム2010-原子力広報関係者連絡会

 当協会は、原子力広報に携わる関係者が、電力やメーカーなどの枠を超えて、広報の手法や情報などを共有し、実際の広報活動に役立てることを目的に、「インフォコム-原子力広報関係者連絡会」を2008年から開催しています。3回目となる今回は、広島大学大学院放射線腫瘍学の永田靖教授と、今年1月に原子力委員に就任された秋庭悦子委員を講師に迎え、5月11日、メルパルク東京にて開催しました(=写真)。関係者約30名が参加し、講演会終了後には懇親会を行いました。

 最初に、広島大学の永田教授により、「放射線治療の現状と将来」と題した講演が行われました。

 永田教授は、専門用語が多く、その仕組みについても理解することが難しい放射線治療について、いかに病気に対する恐怖心を伴うがん患者にわかり易く説明し、安心してもらうかの重要性について説明しました。中でも、がん患者に対する接し方として下記の点をあげ、広報担当者が日常活用できる心構えについて述べました。

・ 患者とは、正面で向き合うと対立的になるので、横に並ぶようにして説明する。
・ コントロール・イリュージョンといって、人は自分で選んだことに価値を認めるということがあるので、患者自身に放射線治療を選んでもらってから治療を開始する。
・ 説明のポイントとしては、①自信をもって説明する②悪い知らせはできるだけ早く、詳しく、明るく伝える③この先生に任せたら失敗しても悔いがない、と思わせる④必要な情報取得と共に不安を解消してもらうため、質問力の訓練と傾聴が必要である。
・ 一番のモットーは、医師自身が元気であることなので、自分の心と体を鍛え、自分の悪い感情が出ないように患者さんの気分を和らげることに努めている。
・ 関西では「笑かし」というが、患者を笑わせることができたら、自分の勝ち、と考えて患者と接している。
・ 大事なことは女性を大切に、ということ。医師の評判は、大抵女性というか、おばちゃんが広げてくれる。従って、おばちゃんを大切にすることは、広報上非常に大切である。

 続いて、秋庭委員から、「原子力の理解に向けて、今必要なコミュニケーションとは」と題する講演がありました。消費生活アドバイザーの資格を取得し、消費者の立場から、あすかエネルギーフォーラムの理事長として活躍されてきた経験のなかで感じた、原子力広報における問題点などを紹介しました。

 その中で秋葉委員は、「 『知らせたい情報』ではなく、一般の人が『知りたい情報』を知らせることが大事」と強調。説明者が都合のよいことだけ言っているのではないか、と誤解されることさえあるとして、むしろ、「一生懸命説明しているその人の姿をみて、この人なら信頼できるということから理解が進む」と述べました。また、 講演会などは、聞いた人たち自身に問題意識を持ってもらうよう、参加型の場を提供することの必要性を訴えました。さらに、マスコミの影響で、すでにイメージが作られていることが多々あり、それを壊すことは難しいという点を指摘しました。

 また、原子力委員としての立場から、原子力委員会での広聴・広報活動に関連して下記のように説明がありました。

・ 直接市民とのコミュニケーションをとる体制づくりの必要性や、オバマ大統領が提唱しているオープン・ガバメント・イニシアティブのようなITを駆使した情報公開の徹底化や、公開されるデータの質の向上、そして「開かれた政府文化」の醸成が必要である。
・ 原子力政策を市民が自分のこととして考えるコンセンサス会議のようなものを設けることについて模索している。

 また、「原子力発電に関する公衆の意識の変化」というアンケート調査の結果から、首都圏の人々は原子力発電に不安や不信感を持っているわけではないが、原子力は減らした方がよく、新エネルギーで賄える方が良いという理解であるということが表れていて、原子力に関するさらなる広報が必要なのではないかと感じていることを、「原子力広報関係者の皆さんからも意見を聞いて原子力委員会の活動に反映させていきたい」と話しました。

 続いて、今回特別に、日本原子力研究開発機構の久保稔広報部長より、もんじゅの運転再開について、広報の立場からの報告が行われました。

 運転再開後、何度も警報が鳴ることについて多く報道されていることに関して、原子力施設は核物質防護上からエアロックがあり、管理区域内と外で気圧が違っても警報が鳴ることになっていて、精密な構造上、例えば近くを大きな低気圧が通っても異常ととらえて警報が鳴ることがある、という実態が紹介されました。

 また、今回の教訓として、たとえ現場で記者会見を行っているときに、警報が鳴っても、その事実はすぐ記者会見場にも伝えるべきであったこと、記者からの質問に、すぐ拙速に説明するのではなく、きちんと調べて回答する、ということが大事であること、どんな些細なことでも公表するかどうか、ケース別の検討を行う必要があることが提起されました。 


□「JAIF地域ネットワーク第2回意見交換会」を開催

  「JAIF地域ネットワーク第2回意見交換会」を、第43回原産年次大会期間中の4月21日に島根県松江市の「くにびきメッセ」において開催しました(=写真)。地域ネットワークメンバー12名の他、特別ゲストとして、地元松江のオピニオンリーダー3名、セッション3の基調講演者である、ドイツ ヘッセン州 ビブリス町長 ヒルデガルト コルネリウス=ガウス氏にもご参加いただき、活発な意見交換を行いました。

 JAIF地域ネットワークは2008年6月に発足し、メンバー相互の情報交換や交流を通じて正確な情報の共有を図り、意見を交換することによって社会の原子力に対する理解促進を目指す活動を行っています。(メンバー構成はおもに教育関係者、消費者団体関係者、原子力推進団体関係者など、現在90名)

 会議の冒頭、ビブリス町長 ヒルデガルト コルネリウス=ガウス氏(=写真)は、「ドイツと日本では状況がかなり違う。方向性として脱原子力に向かっている。このような国政の中で、立地地域の知事、市長でネットワークを構築し、原子力の有益さをPRしている。地域にとって原子力は重要かつ有用であり、税政面だけではなく、特に雇用面では大変重要である。日本での推進に対する取組みを聞き、ドイツで同様の事ができるかどうか検討材料にしたい」と語りました。

 意見交換の議題には事前に参加メンバーへ募集し、「原子力ルネッサンス時代の広報の在り方―市民の声をどう聞くか、マイナス情報をどう伝えるか―」および「原子力発電所と立地地域の共生や共益を考える」という2つのトピックスを選びました。それぞれのテーマについて、各地域のメンバーによる活発な意見交換が行われました。


■国際協力活動

□ポーランド・リトアニアの現地調査を実施

  当協会国際部は3月14日から20日にかけ、ポーランドとリトアニアを対象とした現地調査を実施しました。いずれも新規原子力発電所建設プロジェクトを掲げている国であり、今回の調査は主に①プロジェクトの進捗状況②日本の原子力産業界が協力できる余地③旧ソ連の規格基準等の影響――を確認することが目的です。両国とも、各受入機関が十分責任ある立場の回答者と十分な時間を用意し、事前に当協会が提出した質問書を踏まえた上で対応していただきました。

 ポーランドでは、バルト3国とのヴィサギナス原子力発電所共同建設への参画意識は薄く、独自の原子力発電開発プロジェクトを「国家開発」の観点から遂行する考えであることが判明しました。また建設開始時期も2014年から2012年に早める意向が示されました。

 リトアニアでは、バルト3国による共同プロジェクトとの考えはすでになく、リトアニアと国外のStrategic Investor*(プロジェクトマネージメントを実行できる大手電力会社)との共同出資を第一に考えているとのこと。Strategic Investorという言葉は、欧州の新規建設プロジェクトにおいて、近年とみに耳にする機会が増えています。

* EDF、イベルドローラ、ENEL等と思われるが、リトアニア電力傘下のヴィサギナス原子力発電会社(VAE:プロジェクト準備会社)では明らかにせず。5つの企業グループからの応募があったとのみ紹介。

 今回の訪問により、リトアニアの原子力発電計画は、ポーランドも含めた合同プロジェクトとしては一歩後退した印象ではありましたが、反面外国資本による商業プロジェクト・チームにいわば委託する形になったため、プロジェクトの性格がはっきりしました。

 旧ソ連の規格・基準については、ポーランドでは、すでに旧ソ連式からの脱却を15年以上かけてほぼ完了しており、リトアニアでもその途上にあり、西側規格の受け入れ面では問題がないようです。

 また両国とも、EUの一員として、EUのルールや共通の考え方(原子力安全、商業契約、規格・基準、人材養成)に従うことのメリット(EUからのファイナンスやプロジェクトに付与される信用)を大いに意識しているようでした。

〈当協会からのプレゼンテーション〉
 今回ポーランドとリトアニアで合計5回にわたり、日本の原子力発電黎明期の産官学の努力や、日本の原子力産業界のキーワードである”On Time, On Budget”に関するプレゼンの機会も得ました。

*ポーランドでは、経済省、原子力庁(NAEA:規制機関)、原研で、またリトアニアではVAE(ヴィサギナス原子力発電会社)の本部と(閉鎖された)イグナリナ原子力発電所の運転訓練センターの会議室で講演。

ポーランド経済省 左がLewinski原子力局長
3月16日(火)27原発サイト候補地公表は
TVでも特別報道
候補サイトは順位付けされて発表
ポーランドの唯一の研究炉
Maria炉(30MW)
ポーランド原研では日本との提携を希望する原子力関係3企業(計測サービス、コンポーネント納入前試験、装置組立)幹部が参加


〈日本の原子力産業界への期待〉
 両国とも日本の技術に対し、絶大な敬意と信頼を寄せており、日本の企業が協力することを強く望んでいます。しかし、これまでの日本からのアプローチがあまりなされていないためか、どういう協力を日本ができるのかを知ることから始めたいとのことでした。

* 今回出張では、「日本では第三世代炉の炉がもう動いているのか?出力は?」との質問が何度も出た。当方より「APWRは建設準備中。ABWRが4基動いている。最初のABWRは1996年に商業運転開始で、いずれも130万kW級」と説明すると、「もう10数年も前から実績があるのか」と感嘆された。それほどに、日本の原子力技術等の実態が知られていなかった。もちろん当協会出版の「世界の原子力発電開発の動向2009」を贈呈した。

 ポーランド側の日本への期待では、EUの要求に沿った安全規制の枠組みを整備するに際しての協力が挙げられました。たとえば圧力容器の検査等、検査制度の導入に伴う技量レベルの定め方、その資格認定の仕方、それに基づく溶接工等の養成のノウハウを教えてくれないかといった具体的な希望がありました。
 リトアニア側の関心は、プロジェクトを企画・運営するStrategic Investor(募集は本年1月末締切だった。5社が応募)が選定されるから、それに日本企業がコンソーシアムの形で加わってほしいとのことでした。

〈建設サイト見学〉
 リトアニアのヴィサギナス原子力発電所建設予定サイトは、首都ヴィルニスから160kmの地。VAEがホテルからの送迎を手配。随行者2人、現地にも6人の幹部を手配して、運転訓練センターで3時間半ほどディスカッションを行いました。

2009年12月に閉鎖されたイグナリナ
原子力発電所の運転シミュレータ
イグナリナ/ヴィサギナス原子力発電所用の使用済燃料中間貯蔵施設(左)と極低レベル廃棄物埋設施設(右)の建設風景
150万kW×2基のイグナリナ原子力発電所
(手前空地がヴィサギナス1・2号機が建設される候補サイトのひとつ)


 また、閉鎖されたイグナリナ原子力発電所サイト、新規原子力発電所建設サイト(ボーリング機材、取排水口、スイッチヤード)、使用済燃料貯蔵サイトへの施設も訪問しました。

* なお、イグナリナ原子力発電所は、地名としてはヴィサギナスにある。今後新設される原子力発電所の名称はヴィサギナス原子力発電所となる。

なお、当協会HP〈解説・コメント・コラム〉に『ポーランドをめぐる最近の原子力発電開発動向』を掲載しています。http://www.jaif.or.jp/ja/news/2010/poland_nuclear_info100514.html


■情報発信・出版物・会合のご案内

□「輸送・貯蔵専門調査会」平成22年度会員募集

 当協会が実施している「輸送・貯蔵専門調査会」では、原子燃料物質等の輸送および貯蔵に関する研究・技術開発動向、ならびに関連法令や技術基準の国際動向の現状などに関し、講演、関連施設の見学、意見交換を通じた専門情報の提供・交流活動を実施しています。当調査会の場を一層活用して頂くため、会員ニーズの高い輸送貯蔵関係の若手技術者に貢献すべく、平成20年度より準会員制度を設けて、多くの方が参加できるように定例会合を開催しています。

 昨年度の主なテーマは、①原子力安全における技術説明学の必要性と展開について、②中間貯蔵のための知見の蓄積、③MOX粉末輸送容器の開発、④大型機器輸送の展望、⑤大型放射性機器輸送に係るIAEA輸送規則の改定状況、⑥浜岡原子力発電所リプレース計画についてなどでした。 今後も原子力開発利用の進展状況や会員のニーズに対応して活動を展開してまいりますので、多数の皆様のご参加をお待ちしています。

 詳細は、http://www.jaif.or.jp/ja/seisaku/yuso_chosakai_activity.html


□カザフスタン原子力情報を紹介-駐日カザフスタン大使の講演会から

 当協会では、アジアを中心に新興国の原子力発電導入計画を調査し、当協会ホームページの「アジアの原子力情報」等に調査結果を掲載しております。カザフスタンについては昨年2月、原子力開発の全体像を同サイトのコラムで紹介いたしました。
 
 今回、東海大学・国際戦略本部主催、在日カザフスタン共和国大使館共催による講演会「核不拡散・軍縮による世界平和へのカザフスタンの貢献」で、駐日カザフスタン大使の講演を傍聴する機会を得ました。講演では、いったんは1,150発の世界第4位の核弾頭を得ながら、自らの意思でそれを放棄したカザフスタンの真摯な姿等が紹介されました。ちょうどこの講演の前日の5月19日に、参議院でわが国との二国間原子力協力協定が承認され、これからの具体的な原子力ビジネス協力が進展する段階になったこともあり、同講演会での概要を紹介します。

                    ◇   ◇
 5月20日(木)、新緑の東海大学の湘南校舎で、カザフスタンのカマルディノフ駐日大使の講演会が開かれ、200人を超える学生が聴講しました。

講演中のカマルディノフ大使


 カマルディノフ大使は、2003年からカザフスタン首相室対外経済部部長を務め、2007年に大使として来日されました。講演は日本語で行われました。概要は次のとおりです。

・ 世界中でテロ、人種差別、他民族排斥、内乱等の争いが起きており、軍拡競争も進展している。カザフスタンはこれらを残念なことと考え、世界平和のために独自な働きかけをしている。
・ カザフスタンは、日本と核による痛みを共有している。1949年8月、わが国のセミパラチンスクで、ソ連最初の核実験が行われ、そこで1989年まで500回近くの核実験により、(人口の1割に当たる)150万人のカザフ人と国土の3/4が放射能による重大な被害を受けている。
・ 1991年12月にカザフスタン共和国として独立したとき、ソ連から1,150発(世界4位)の核弾頭を受け継ぎ、イスラム圏で初めての核兵器保有国になった。しかし1994年2月に、わが国はこの全核弾頭を廃棄した。核兵器保有の利点を説く人もいたが、ナザルバエフ大統領は「相互協力と信頼醸成」を国の基本戦略に置いて、核兵器を放棄した。
・ わが国は、人類の脅威である核兵器の削減のために、核軍縮・廃絶、核不拡散、テロリストへの流出防止のすべての局面で、次のように積極的な活動や提案を行っている。
-核兵器級核物質200トンの削減、大陸間ミサイル発射台148の撤去、高濃縮ウラン3トンの米国への拠出
-2008年9月、包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効への協力のため、統合査察演習をアルマティで4週間にわたり実施。またCTBT未署名の9カ国へ加入を働きかけた。
-兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約:FMCT)にも加入する。
-ナザルバエフ大統領は、4月の米国での核セキュリティ・サミットで、核兵器の水平的ならびに垂直的な削減を提唱した。また4月にカザフスタンを訪問した潘基文(パン・ギムン)国連事務総長とともに、核兵器国5カ国に核軍縮を呼びかけた。
-カザフスタンは2009年12月、北朝鮮の核実験、イランの核開発疑惑、印パの対立、テロリスト集団の核保有への挑戦等の動きを見据え、セミパラチンスクで日本を含む26カ国と共同で「核兵器のない世界を求める決議」を採択した。
・ カザフスタンは、NPTと追加議定書を含むIAEAとの契約に基づく透明性を満たせば、どの国にも平和利用の権利があると考えている。この権利をまっとうするため、カザフスタンはIAEAが提唱する国際核燃料バンク構想に賛成している。ウラン採掘量で世界第1位であるカザフスタンは、このバンクの設置国になる用意がある。
・ 国際テロ、宗教の過激主義、組織犯罪、麻薬販売、不法移民等への対処では、未然防止が必要である。ナザルバエフ大統領は、この観点から、「アジア相互協力・信頼醸成措置会議(CICA)」を1992年10月の第47回国連総会で提唱し、世界人口の1/2を擁するアジア・太平洋地域の20カ国が加盟している。日本はオブザーバーであるが、早く加盟国になってほしい。
・ カザフスタンには130の民族と40の宗教が共存し、民族間ならびに宗教間でバランスのとれた調和が図られている。2001年9月11日の米国同時多発テロ事件で、宗教間の対立が国家や民族の憎悪を増幅した不幸な実例が示されたため、ナザルバエフ大統領は、「宗教の対話から文明の和解まで」をテーマに、2003年9月に第1回の「世界宗教指導者会議」を主宰した。日本の神社本庁が参加し、全日本仏教会もメッセージを寄せた。この会議は、2006年9月、2009年7月と回を重ねて開催されている。
・ カザフスタンは、イスラム社会と欧米世界の対立を緩和し対話を促すための「共通の世界:多様による進展」というイニシアティブの会議を、2007年10月にアスタナで開催した。2009年12月にもこの流れの会議を開催している。
・ 2011年にカザフスタンのアルマティでアジア冬季競技大会が開催されるので、日本から多くの人に参加してほしい。

○ この後、次の質疑応答がありました。

(質疑)核廃絶のために今後必要なことはなにか?
(応答)カザフスタンは、かつて世界最大の核実験場を閉鎖したことが評価されている。米国での核セキュリティ・サミットで、ナザルバエフ大統領は、「核実験場の閉鎖」を提案した。米露の核兵器削減条約はいい兆候となる。他の核兵器国もこれに倣ってほしい。
また、国際核燃料バンクをカザフスタンは引き受ける用意がある。核燃料の平和利用を考えている国が、安定的に核燃料を入手できることは大切なことだ。原子力は平和利用にこそ真価がある。核兵器を持つと究極的には人類が滅びる。平和利用と滅亡への道のどちらを選ぶのかをしっかり考えてほしい。
(質疑)日本は米の核の傘で守られている。中東のパレスチナやイスラエルが安全保障のために核兵器をもつことは許されないのか?
(応答)カザフスタンでは安全保障とはいえ核兵器をもつことは考えられない。すべてIAEAの査察下に置き、約束した計量管理をしっかり行っている。


■ホームページ・動画の最新情報

□原産協会HP(一般向け)の更新情報 ( http://www.jaif.or.jp/ )

*国内、海外ニュースは毎週および随時更新しております。

〈原産協会からのお知らせ〉
・「我が国の原子力産業の海外展開に向けての提言」を提出(4/27)
・第43回原産年次大会における『今井会長所信表明』を掲載(4/27)

〈解説・コメント・コラム〉
・『ポーランドをめぐる最近の原子力発電開発動向』(5/14)
・理事長コメント:高速増殖原型炉「もんじゅ」の運転再開によせて(5/6)



□動画配信 ( http://www.jaif.or.jp/ja/jaiftv/ )

・第43回 原産年次大会と開催地 松江市の紹介 (5/17配信)


□会員向けHPの更新情報( https://www.jaif.or.jp/member/

・ JaifTv動画配信『第43回 原産年次大会と開催地 松江市の紹介』 (5/17)
・『日本の原子力発電所の運転実績』4月分データを掲載(5/17)


□英文HPの更新情報( http://www.jaif.or.jp/english/

・Atoms in Japan (AIJ) : 週刊英文ニュース(10本 5/1-5/25)


■原産協会役員の最近の主な活動など

[服部理事長]
・5/3(月)~5/9(日) 日米官民原子力ラウンドテーブル出席に伴うワシントンD.C.出張
・5/25(火) ~5/29(金) ベトナム事務所開所式およびハノイ国際原子力展示会他に伴うベトナム出張(石塚常務同行)

[石塚常務理事]
・5/13(木)~5/16(日) 田湾原子力発電所視察に伴う上海出張

[八束常務理事]
・5/13(木)中部原子力懇談会総会出席(於:名古屋商工会議所ビル)


■シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」【15】

原子力災害への対策
 今回は、原子力災害への対策についてQ&A方式でお話します。

Q1.(原子力災害対策特別措置法)
万が一原子力災害が発生した場合の法制度はどのようになっていますか?

A1.
 原子力災害への対策は、従来、災害対策基本法の枠組みの中で行われてきました。この枠組での原子力防災は、原子力発電所等を対象としたものでした。しかし、平成11年9月に発生したJCO臨界事故が原子力発電所ではなく、核燃料の加工施設での事故であったこと等から、防災対策の面で主に以下の課題が顕在化しました。
① 災害時の国による迅速な初動体制を確保すること
② 原子力の専門的知識を有する国の役割を強化すること
③ 国、関係自治体、原子力事業者等の連携を強化すること
④ 原子力事業者の防災対策上の責務を明確化すること
これらの課題に取り組んだ結果、「原子力災害対策特別措置法(原災法)」が平成11年12月に制定、12年6月に施行され、現在は国・自治体・原子力事業者等の関係者が一体となり、原子力災害対策の強化が図られています。


【A1.の解説】
 原子力災害の特殊性を踏まえ、JCO臨界事故により顕在化した課題を法的に解決するために、災害対策基本法と原子炉等規正法の特別法として「原子力災害対策特別措置法(原災法)」が制定されました。原子力災害については、まず十分な安全規制により災害の発生を防止することが基本となりますが、平常時から防災計画の策定・緊急時対応体制の構築・防災訓練の実施等を行うこと、および災害発生時に際しては初期対応・緊急事態応急対策の実施・事後対策の実施等が重要となります。原災法では、これらの諸対策を盛込むことにより災害発生時の対応を迅速に講じられるようにしており、主な事項は以下の通りです。

① 災害時の国による迅速な初動体制の確保
原災法では、原子力事業者による通報(10条1項)や政府による原子力緊急事態宣言を出す基準を明確化(15条)するとともに、宣言が出された場合には政府の原子力災害対策本部及び現地対策本部を設置することなどを定めており(16条)、緊急時における初期動作の判断要素を極力少なくすることで迅速な対応が図れるようになっています。

② 原子力の専門的知識を有する国の役割の強化
緊急時に国が実効的に対応するため、関係行政機関、地方公共団体、原子力事業者等に対して指示を行う(20条3項)という強力な権限や、自衛隊派遣の要請権限を政府の原子力災害対策本部長に対して与える(20条4項)ことで対応体制の強化が図られています。
また、現地対策本部長が現地における実質的な責任者として関係機関の調整や指示を行うことで、原子力事業者、原子力の専門家、派遣された自衛隊、警察、消防、医療チーム等が連携を取りつつ、総力を挙げて緊急事態応急対策を実施することになります。
さらに、原子力災害対策本部長に対する原子力安全委員会の助言を明確に位置付けたり(20条6項)、原子力安全委員会に緊急事態応急対策調査委員を設けることにより一層の体制強化が図られています。

③ 国、関係自治体、原子力事業者等の連携の強化
国と地方公共団体との連携強化を図るため、原子力事業所のある地域に日頃から国の原子力防災専門官を駐在させて事業者への指導や地方公共団体と連携した活動を行う(30条)ほか、緊急事態応急対策を実施する拠点施設(オフサイトセンター)をあらかじめ指定し(12条)、緊急時には、緊急事態応急対策に関する国、地方公共団体、事業者との間の情報交換や相互協力を行う原子力災害合同対策協議会を組織する(23条)などして円滑な協力体制を構築することになっています。また、平常時には国、地方公共団体、原子力事業者等関係者が実践的な防災訓練を実施することになっています。

④ 原子力事業者の防災対策上の責務の明確化
原災法により、原子力事業者に対して原子力災害の発生や拡大を防止するための原子力事業者防災業務計画の作成を義務付ける(7条)とともに、当該業務を行うために必要な要員や資機材の準備、放射線測定設備の設置(11条1項)およびその数値の記録・公表等(11条7項)を義務付けており、原子力事業者の防災対策が適切に確保されるようになっています。


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Q2.(原賠制度の運用)
原子力災害が発生したとき、原賠制度はどのように運用されますか?


A2.
 前掲の原子力災害対策そのものとは異なりますが、JCO臨界事故の際の被害者への損害賠償対応の経験をもとに、原子力災害発生時の損害賠償請求等にすみやかに必要な対応がなされるよう、このたびの法改正(平成21年4月の「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」、「原子力損害賠償補償契約に関する法律(補償契約法)」及び関係法令)の他に、文部科学省によって原子力事業者を始め国・地方公共団体・原子力保険プール等の関係者に関わる原子力損害賠償の手続きや損害の拡大防止のための要点が記された「原子力損害賠償制度の運用マニュアル」が平成21年12月に作成されています。
これにより、原子力事業者をはじめ関係者が、原子力損害賠償への対応につき具体的な想定を持って、適切かつ迅速に行われることと期待されます。


【A2.の解説】
 原子力損害賠償制度については、原賠法、補償契約法等により、原子力事業者の損害賠償責任や、損害賠償措置、国の援助、原子力損害賠償紛争審査会の活動などが規定されています。

 原子力損害の賠償が行われた唯一の事例であるJCO臨界事故の経験を通して、損害賠償は当事者である原子力事業者と被害者との間で解決を図るのが基本であるものの、スムーズな解決には国や地方公共団体による支援が不可欠であること、特に、初動の時点で住民にどのような対応を行うかを明確な仕組みにより示していくことが重要であるという教訓が得られました。

 また、万が一原子力災害が発生した場合には、原子力損害に関して短期間に発生する多数かつ多様な賠償請求に迅速に対応しなければならないため、原子力事業者や他の関係者との間で原子力損害賠償制度の的確な運用について共通理解を形成して備える必要があります。

 こうしたことから原賠関係法令を補うものとして「原子力損害賠償制度の運用マニュアル」が作成され、原子力災害発生時における、原子力損害の発生から損害賠償の合意までのプロセスや平常時における関係者間の連携方策、原子力事業者に求められる対応、関係者間で共通理解を形成しておくべき事項などが示されています。
その主な事項は次の通りです。
①「賠償手続きの全体像」では、原賠制度のあらまし、賠償手続きのプロセス、賠償請求の対象など
②「損害発生から損害賠償の合意まで」として、原子力損害の発生、支援手続きの開始、原子力損害の拡大防止策、全体の損害状況の迅速な把握、原子力事業者による被害届(賠償請求)の受付と関係者の支援、原子力損害賠償紛争審査会による損害指針の策定、損害賠償の合意、紛争審査会による仲介、訴訟など
③「保険金(補償金)の支払」では、損害賠償と保険金支払い、請求手続きなど
④「国による原子力事業者の支援」では、国による援助、事業者の対応、援助の在り方など
⑤「平常時における関係者間の連携」では、災害対策基本法や原子力災害対策特別措置法に基づく組織的・計画的な協働体制の活用、賠償に関わる連絡体制の構築、関係者の情報共有、国・地方公共団体の対応など

 なお、本マニュアルは制度の基本的な考え方を踏まえつつ運用面で必要となる具体的な対応の標準例が示されたものであり、実際に原子力災害が発生した際には、このマニュアルに一律に服することなく、関係者間において様々な状況を踏まえて最善の対応をすることが重要とされています。


 シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」のコンテンツは、あなたの声を生かして作ってまいります。原子力損害の賠償についてあなたの疑問や関心をEメールで genbai@jaif.or.jp へお寄せ下さい。


■げんさんな人達 (原産協会役・職員によるショートエッセイ)

国の力の方程式

 アジア人のアジア知らずの筆者であるが、最近たまたま、NHKのドキュメンタリーシリーズ「アジアンスマイル」を3回ほど見た。

 この番組は、アジアの若者が様々な(どちらかと言えばかなり厳しい)環境の中で夢を持って生きている姿を紹介するものらしく、生活感、そして生活観とともに、国情についてもよく伝わってくる。

 初めて見たプログラムは、中国、といっても殆どシベリア近くで、年間の平均気温がなんと零下という辺境の地で、20歳くらいの若い女性が一人で旅館を経営している、というもの。寒さが半端で無い厳しい真冬にこそ、極限の環境で味わえる雰囲気や体験を観光地としての魅力にしてしまおうと、極寒のなかで厚い氷を割っての釣りなど、いろいろなアイデアを実現している。

 そのほかでは、かつて内戦時代に埋められた地雷が大きな問題となっているカンボジアで、地雷探知犬を訓練し、訓練後にはその犬とともに地雷探知に携わる青年が紹介されていた。彼は、故郷の村に妻とまだ生まれたばかりの子供がいるにも関わらず、未来のカンボジアのためになるなら、とこの命にかかわる危険な仕事について明るく語っていた。

「地雷探知犬」アターを訓練する青年ボンテイン(29歳)。アターはカンボジアで生まれた犬として、初めて地雷探知犬としての試験に合格した。(NHKの番組HPから)


 一方の日本で、このゴールデンウィーク中に新聞やニュースを見ていて目に留まった記事といえば、「アメリカの安いファッションブランドに1,000人の行列」「この連休中の10代、20代の若者の過ごし方No1はアルバイト」また、「若い日本人の海外への留学志向が下がる」というものだった。

 定職を見つけることさえ難しい日本で、安売り店が繁盛するのは当たり前だし、若い人が連休中に遊んでばかりいないで平和な日本でアルバイトに励むことは、良いことなのかもしれない。

 しかし、日本の将来を考えた時、この若い人たちには、先の番組でとりあげられていた中国の女の子や、カンボジアの青年のような意欲や夢ってあるのかなあ、とちょっと老婆心。

 時代が違うと言ってしまえばその通りなのだが、私が高校、大学の頃は、連休となれば、欧米の文化に触れたいために美術館めぐりをしたり、まとまって与えられた時間を利用して大作の小説を読んだりしていた気がする。

 また、世の中はスーパーカーブームで、男の子たちは、いつかはいい車を手に入れるんだ、と頑張っていた、それだからこそ、国としても海外に負けないようないい車を作ることをめざしていた。今の若い人たちは、車は不要だし、そういうものに関心もないという。

 ただでさえ若い人の人口が減っていく日本。手近な安いもので満足してしまい、向上心とか意欲が段々小さくなって、なんとか暮らせればいい、という意識が若者の間に蔓延していっている印象を受ける。

 若者の人数×意欲=将来の国の力、という方程式で韓国や新興国に負けないよう、彼らが夢を持つことができる国であり、見習いたいような素敵な大人になるよう努めなければ、とやはりNHKのミニ番組「100歳バンザイ!」にエネルギーをもらっている私としては反省しきりの5月であった。

追記

このメルマガ脱稿直後に発表された衝撃の順位です

スイスに本部を置き、ヨーロッパを代表するビジネススクールである国際経営開発研究所(IMD)が19日、「2010年 世界競争力年鑑」を発表した。今年の1位はシンガポール、2位が香港、米国が3位となった。アジア圏ではほかに、台湾が8位、マレーシアが10位、中国は18位、韓国は23位となり、日本は27位だった。Paloma)




◎「原産協会メールマガジン」2010年5月号(2010.5.25発行)
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