lights on with nuclear

 [JAIF]原産協会メールマガジン

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原産協会メールマガジン7月号
2010年7月26日発行

Index

■最近思うこと (理事長コラム)  
■原子力政策推進活動

 □第6回会員情報連絡協議会を開催 
 □原子力安全規制ラウンドテーブルの開催について

■情報発信・出版物・会合のご案内

 □原子力産業新聞で解説コラムを3回シリーズで掲載
 □「ニュークレオニクス・ウィーク日本語版」購読のご案内

■ホームページ・動画の最新情報

 □原産協会HP(一般向け)の更新情報
 □動画配信
 □会員向けHPの更新情報
 □英文HPの更新情報

■原産協会役員の最近の主な活動など
■原産協会入会のお知らせ
■シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」【17】
■げんさんな人達(原産協会役・職員によるショートエッセイ)

本文

 
最近思うこと (理事長コラム)
 
理事長 服部 拓也
         

 ハルドワールのBHEL社訪問を終え、次の訪問地であるムンバイに移動するため空港へ向かう。今日はデリー市内を抜ける必要はないので多少は楽であるが、基本的には同じ道を辿ってまた6時間近くの長旅である。但し、昨日とは時間帯が違うので、車外の様子もまた違っていて新鮮な感じがする。

 車外を眺めていて一つ気になった事として、広大な農地の一角をそれほど大きな区画ではないがレンガや石を組み上げて囲っている場所をいくつか目にした。案内してくれた現地の人に聞くと、その土地を所有している人が、そこを他の人にむやみに侵害されないようにしているのだという。要は「ここは俺の土地だ、誰にも使わせないぞ」ということらしい。しかし、その周りには何もない農地の一角を誰が不正使用するというのであろうか。インドでは、何もしないでほって置くと誰かに使われてしまうのであろうか、腑に落ちないままに車を走らせる。

 ムンバイのホテルに着いたのは夜遅く、次の日は午前中に原子力委員長を訪問し、その後インドを代表するメーカーの一つであるワルチャンドナガール工業社(WIL)に車で向かうこととした。WIL社はムンバイの東の都市プネを抜け、更に東に位置するワルチャンドナガールにある。プネはムンバイの衛星都市として近年急速に発展を遂げており、防衛大学校(National Defense Academy in Pune)のほか、優秀な大学があって多くの若者が集まり、かの有名なバンガロールと並んでIT産業の拠点となっている所らしい。

 ムンバイとプネの間は片道3斜線の高速道路で結ばれているが、自然渋滞でムンバイ市内を抜けるのに時間を要してしまう。プネまでの道中、周りに広がる景色は低い禿山の連続、まるで夏場のカリフォルニアの景色を見るようだ。周りの景色といい、料金所のたたずまいも米国サンディエゴの南、メキシコ入口のティワナにそっくりなのに驚いてしまう。風力発電の風車も見かけたが、南部に比較して風況はあまり良くないようで止まったままだ。そんな高速道路にも、ヒッチハイクをする人、停留所でバスを待つ人など人があふれている。すべてがインド時間でゆっくり流れている。

 我々は夜までにWILにつく必要があるのでのんびりはしておれない。時間をセーブするため、プネの手前で高速を降りて一般道を走ることにしたが、これが途中からくねくね、でこぼこした大変な山道を走ることになってしまった。大きな鞄を背負った生徒たちの列、牛車、ヤギの群れ、家路につく人々が丘を越えて黙々と歩いている。

 そこへ荷台を二層構造にした小型トラックに人々が上段にも下段にも満員状態座り込んで乗っている車が追い越していく。どこから来てどこへ向かうのだろうか。そのうち通りがかったある村の男たちが皆そろって白い帽子、あのインド初代首相のネルー氏がかぶっていたと同じ帽子(ガーンディー・トーピー)を身に着けているのに気がついた。この場所と何か関係があるのだろうか。 (次号へつづく)


 

■原子力政策推進活動

□第6回会員情報連絡協議会を開催

 当協会は7日、東京・霞ヶ関で第6回会員情報連絡協議会を開催し、経済産業省の三又裕生・原子力政策課長が「原子力発電推進行動計画~安全と信頼――世界の原子力新時代における日本の挑戦」と題して講演しました。

 講演では、わが国が、今後、原子力に関し目指すべき姿として、供給安定性と経済性に優れた低炭素電源である原子力の利用を推進すること、確固たる国家戦略として燃料サイクルを推進すること、世界貢献の観点から技術・人材基盤の強化を含む、原子力産業の国際展開を推進することを取り上げ、これらの着実な推進にあたって国が取り組むべき施策やさまざまな課題への対応に関し、詳細に説明しました。

 また、当協会からは、原子力産業の国際展開に関する活動、原子力人材育成関係者協議会における活動および今年4月に松江市で開催された年次大会の概要を報告しました。

第6回会員情報連絡協議会の様子



□原子力安全規制ラウンドテーブルの開催について

 原子力安全・保安院と原子力産業界による公開の場での初めての意見交換会「原子力安全規制ラウンドテーブル」が20日、東京・霞が関の経済産業省で開かれ、安全規制のあり方や規制課題への取り組みなどについて、率直な意見交換が行われました。今回、当協会は保安院と共同事務局を務めました。

 原子力安全・保安部会小委などでは、ステークホルダー間の対話の重要性が指摘されており、ラウンドテーブルはそれを受けて実施されたもので、規制当局と被規制側が対等の立場で、共に一つの規制ルールを作り上げていくコミュニケーションの重要性を確認し、「この会議が新たな時代のスタートになることを期待する」との声などが相次ぎました。

 会議の冒頭、寺坂信昭・原子力安全・保安院長は、しっかりと議論に参画して意思疎通を図り、規制の充実を含め、この場が活用されることへの期待を表明しました。

 当協会の服部理事長は、「たいへん有意義な会議であり、安全規制の高度化はむろん、安全性に対する国民の理解、信頼にとっても極めて有益なものとなろう」と述べました。

 武藤栄・電事連原子力開発対策委員会委員長(東京電力副社長)は、「信頼性向上に向けて、一義的に安全に責任を有する事業者として、保安活動を一層充実して信頼を高めていきたい。世界で規制を含めて日本の原子力が注目されている中、実効性、信頼される規制が重要だ」と指摘しました。

 丸彰・電工会原子力政策委員会副委員長(日立製作所執行役常務)が、「日本の技術力と規制とのバランスが取れ、相手国から見て魅力的と受け止められる状況の達成が重要」と述べたほか、「原子力への期待が高まっていると同時に、多くの課題を解決していくことが求められている」(各務正博・電力中央研究所理事長)、「かつて米国原子力規制委員会のメザーブ委員長(当時)が安全最優先を前提に、①規制活動の効率化②規制活動の不必要な負担の軽減③国民の信頼獲得――を活動の目標に掲げ、規制改革に取り組んだ」(藤江孝夫・日本原子力技術協会理事長)等の意見も出されました。

 保安活動総合評価をめぐっては、平岡英治・同院次長が、規制当局と産業界の役割、立場の違いをわきまえることが重要としつつ、「我々はあくまで規制の立場。事業者が行う保安活動をきちんと確認することが役割」としたのに対し、武藤原対委員長からは、「保安活動総合評価は試行を通じていいものにしていきたい。現場を良くしていくため、現場の感覚に合うことが大切」と応じました。  

 寺坂院長は最後に、「規制当局のあり方、立場、責任について考えるとき、科学的・合理的なものを超えるものが行政機関には必要と考える」と述べ、今後も規制当局の課題について、関係者間で議論していってほしい、とまとめました。

 また、服部理事長は、「初めての試みであり、この場を育てていきたいという思いは共有されたと思う」とし、次回は年内にも開催したい、と結びました。

20日に行われた原子力安全規制ラウンドテーブル


■情報発信・出版物・会合のご案内

□原子力産業新聞で解説コラムを3回シリーズで掲載

 当協会発行の原子力産業新聞ではこのほど、いま世の中で話題になっている原子力や環境、エネルギーなどの課題について、また今後、重要になってくるであろう項目について、「分かりやすさ」を主眼にして説明する「原子力ワンポイント」コーナーを設けました。初回は「原子力発電の役割と今後の展開」をテーマに、6月7日付号から7月1日付号まで3回シリーズで取り上げました。各副題は、「地球温暖化対策に原子力は役立つの?」「既設炉の有効活用は設備利用率向上から」「『既設プラントの「出力向上』も確実に貢献へ」-。

 今後も購読者の皆さまに興味をもっていただけるテーマを取り上げていく方針です。

 同コーナーはこちらからご覧いただけます。
http://www.jaif.or.jp/ja/news/2010/shimbun-one_point2010.pdf

 なお、原子力産業新聞のご購読は、当協会HPからお申込ください。


□「ニュークレオニクス・ウィーク日本語版」購読のご案内

 当協会では、1960年から米国マグローヒル社が発行している原子力情報専門誌(週刊)「Nucleonics Week」の独占翻訳権を入手して、特に会員の皆様を対象に「ニュークレオニクス・ウィーク日本語版」(有料)として発行しております。

 オリジナルとなる「Nucleonics Week」誌は、世界各国に駐在する原子力に造詣の深い記者の取材による最新かつ国際的にも信頼性の高い原子力情報と評価されております。
(ご参考URL) http://www.platts.com/Products.aspx?xmlFile=nucleonicsweek.xml

  「ニュークレオニクス・ウィーク日本語版」は、米国本土で毎週木曜に発行される英文オリジナル誌を、優秀な翻訳者によって日本語に翻訳し、さらに経験深い原子力専門家による校閲を経て、翌日の金曜夕方にはご購読者のもとにメールで配信されます。

 購読にご関心がありましたら、担当の情報・コミュニケーション部木室(きむろ)まで、ご連絡くださいますようご案内申し上げます。

日本原子力産業協会 情報・コミュニケーション部
電話:03-6812-7118   e-mail:kimuro@jaif.or.jp


■ホームページ・動画の最新情報

□原産協会HP(一般向け)の更新情報 ( http://www.jaif.or.jp/ )

*国内、海外ニュースは毎週および随時更新しております。

〈原産協会からのお知らせ〉
・原子力産業新聞の連載シリーズ『原子力ワンポイント』 (7/13)
・『我が国の二国間原子力協力協定の現状』 (7/13)

〈解説・コメント・コラム〉
・理事長コメント『責任ある関係に期待する~中国エネルギー消費世界一
 の記事に接して~』 (7/23)
・理事長コメント『原子力発電所の保安活動総合評価について』 (7/14)
・『ヨルダンの原子力開発の現状』 (7/12)



□動画配信 ( http://www.jaif.or.jp/ja/jaiftv/ )

・「加速する原子力ルネッサンス-世界の原子力発電開発-」(7/15公開)



□会員向けHPの更新情報( https://www.jaif.or.jp/member/

・『日本の原子力発電所の運転実績』6月分データ (7/12)
・『ポーランドの原子力発電をめぐる動向』 (7/5)
・『リトアニアの原子力発電をめぐる動向』(7/5)


□英文HPの更新情報( http://www.jaif.or.jp/english/

・Atoms in Japan (AIJ) : 週刊英文ニュース(12本 7/1-7/26)



■原産協会役員の最近の主な活動など

[服部理事長]
・7/7(水) ルイス・エチャバリOECD/NEA事務局長来訪
・7/20(火) 原子力安全規制ラウンドテーブル(於:経産省別館)

[石塚常務理事]
・7/7(水) ルイス・エチャバリOECD/NEA事務局長来訪


◇役員の雑誌等への寄稿、インタビュー掲載記事◇
○服部理事長
 ・Fuji Sankei Business I  (2010年7月20日)
 インタビュー記事掲載 「すべての国のニーズに応えられる」


原産協会入会のお知らせ(2010年7月)

 ・サンエス(株)
 ・日本軽金属(株)
 ・JFEエンジニアリング(株)
 ・東電ピーアール(株)


■シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」【17】

インドの原子力開発事情と原賠制度について
 今回は、大規模な原子力開発計画を持つインドの原子力事情と原賠制度についてQ&A方式でお話します。

Q1.(インドの原子力事業)
インドの原子力開発はどのように進んできましたか?

A1.
・ インドは1947年の建国時より英国、米国、カナダなどの協力を得ながら原子力開発を進めていましたが、1974年に核実験を行ったことにより国際協力を得られにくくなり、以降自主開発や国産化の道を歩んできました。
・ しかしながら、近年の原子力ルネサンスへの変化を背景に、2005年に米印間で原子力協力の合意が成立したことから、2008年にはIAEAが保障措置協定を承認したうえで、原子力供給国グループ(NSG)からの例外措置を受けることとなり、同10月に米国と正式に原子力協力協定を締結しました。
・ インドでは現在、19基4,560MWの原子力発電プラントが運転中であり、原子力発電の全発電量に対する割合は3%程度ですが、4基2,720MWが建設中、さらに2032年までに原子力発電設備容量を63,000MWに拡大する計画を持っています。


【A1.の解説】
 インドは1947年の建国時から原子力を国家戦略と位置づけてその研究・開発を行っており、インド憲法発布前の1948年には原子力法が制定され、原子力政策の要ともいえる原子力委員会(AEC)が発足しています。以来、1956年には英国の協力によりアジア初の研究炉APSARAが臨界、1969年には米国の協力のもと2基のBWRが運転開始、1973年にはカナダの協力で1基のCANDU炉が運転開始しました。

 ところが、中国の核保有に影響を受け、1974年にインドも核実験を実施したことから、カナダや米国などが協力を停止し、さらに国際的な輸出規制のためのNSGを設置したため、インドは原子力関係の資機材や技術の輸入ができなくなり、ウラン燃料、重水、原子炉関係機器などの調達から、建設・運転・保守の技術に至るまで国産で賄わざるを得なくなりました。

 1998年にインドが実施した2回目の核実験は多くの国の反発を招きましたが、その後、インドが核不拡散に協力する姿勢を見せたこともあり、2005年には米国の対印原子力政策が転換され、2008年8月のIAEA理事会による対印保障措置協定案の承認、同9月のNSGによるインドへの原発輸出の承認を経て、同10月に米印原子力協力協定が署名されて、発効しました。

 インドでは現在、インド国営原子力発電会社がカナダCANDUの設計をもとに独自開発した加圧水型重水炉(PHWR)を主体に、米国から導入されたBWR 2基とカナダから導入されたCANDU 2基を含む19基4,560MWが運転中であり、またロシア製のVVER2基や高速増殖原型炉1基を含む4基2,720MWが建設中、さらに2032年までに40数基を建設・稼動することによって原子力発電設備容量を63,000MWに拡大する計画を持っています。

 この巨大な原子力市場を狙って現在、フランス、米国、カザフスタン、モンゴル、ナミビア、アルゼンチン、ロシア、カナダの8カ国がそれぞれインドと二国間協定を結んでいます。また、英国、韓国もインドとの協定締結に向けて交渉を行っています。我が国も2010年6月に日印原子力協定締結に向けた交渉を始めました。

 原子力関係の国際条約への加盟状況については、
・ 「原子力安全条約」、「原子力事故早期通報条約」、「IAEA保障措置協定」、「核物質防護条約」に加盟
・ 「核不拡散条約(NPT)」、「使用済燃料安全管理・放射性廃棄物安全管理合同条約」、「包括的核実験禁止条約(CTBT)」、その他原子力損害賠償に関わる諸条約には非加盟
という状況にあります。


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Q2.(インドの原賠制度)
インドの原賠制度はどのようになっていますか?


A2.
・ インドは1948年に原子力法を制定しているものの、原賠制度に関する法律はまだ成立していません。
・ 2009年11月に、インドの内閣は原賠に関わる国際条約の締結を視野に入れた原子力損害賠償責任法案を承認しましたが、左派政党の反対などにより、現在、議会への提出が見送られています。
・ この法案は7章49条からなり、原賠制度の基本的原則事項(責任集中、厳格責任、賠償責任限度額、賠償措置、国の責任など)に加え、賠償請求に関わる裁定の体制や手続き等も定めてあります。


【A2.の解説】
 インド建国の翌年1948年には最初の原子力法が制定され、現在では1962年原子力法が原子力に関連した諸活動に関する基本法となっています。原子力関係組織では、その頂点に原子力委員会(AEC)があり、その下にある原子力規制委員会(AERB)と原子力省(DAE)によって、「放射線防護規則(1971年)」および原子力に関わる「仲裁手続き(1983年)」、「鉱山作業、鉱物、所定物資の取扱(1984年)」、「放射性廃棄物の安全処分(1987年)」、「工場(1996年)」、「食品照射管理(1996年)」の各規則が制定されています。

 原賠制度に関する法律については、2009年11月にインドの内閣は原子力事故による人身・財物・環境に対する甚大な損害を懸念し、また越境損害による国際的な賠償責任も勘案して、原子力損害賠償責任法案を承認しましたが、左派政党が反対したことなどにより、一旦、議会への提出が見送られました。当該法案は2010年5月に議会に提出され、議会の中で原子力事業者の責任限度額の引上げ等や反対者への対応等による修正が検討されています。インドにおける米国等原子力先進国の企業による原子力発電施設等の建設にあたって、原賠法の制定は不可欠なものとなっています。

 法案は、Ⅰ 序章、Ⅱ 原子力損害の賠償責任、Ⅲ 賠償請求に関わる裁定者、Ⅳ 賠償請求と裁定、Ⅴ 原子力損害賠償裁定委員会、Ⅵ 違反と罰則、Ⅶ 雑則 の7章49条から成っており、事業者への責任集中や責任限度額の設定、国の役割など原賠制度の基本的内容を備えているほか、賠償請求に関する裁定者の任命や権限、裁定委員会の設置、請求の手続きや裁定方法等まで規定されています。

 原子力事業者は原子力事故により生じた原子力損害の賠償責任を負いますが、異常に巨大な自然災害や武力闘争、戦争行為、内乱、反乱、テロ行為が直接起因する原子力事故の場合には免責となります。事業者の賠償責任額は50億ルピー(約93億円*)であり、その責任額を事業者は保険などにより財務的保証を措置することとなっています。一事故あたりの賠償責任限度額は3億SDR(約396億円*)であり、事業者の責任額50億ルピーを超える部分および事業者の免責事項については、国が賠償責任限度額(3億SDR)まで責任を負います。

 なお、インドは現在、原賠に関するいずれの条約(パリ/改正パリ条約、ウィーン/改正ウィーン条約、補完基金条約(CSC))にも加盟していません。

*平成22年7月23日現在のレートによる。


 シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」のコンテンツは、あなたの声を生かして作ってまいります。原子力損害の賠償についてあなたの疑問や関心をEメールで genbai@jaif.or.jp へお寄せ下さい。


■げんさんな人達 (原産協会役・職員によるショートエッセイ)

「座右の銘」

 原子力界に30年以上お世話になってきたことから、仕事以外に個人的にもたくさんのことを学ばせていただいた。
 その中でも、人生訓として時に感銘を受けたのは、ある大会社の偉大な経営者(故人)が座右の銘にしていたという「強くなければ生きていけない。優しくなければ、生きていく資格がない」というどこかの国の作家の言葉を目にしたときだ。仄聞(そくぶん)なので、正確な表現もその作家の名前もいまだに知らないのだが。

 私の記憶に残っているのは、その言葉の内容もさりながら、大物経営者が言うにしては、「いかにも青年くさい」という第一印象の方だった。それでも、その言葉は、折にふれて思い出され、散歩などをしているときにも、ふと頭に浮かぶほどであった。
 その忘れられなかった理由は、この歳になっていま、はっきりと言えるような気がする。それは、その大物経営者が、臆面もなく(年甲斐もなく)、誰はばからず、どこででも公言できるほどの「勇気と信念」の持ち主であったからだと考えるからだ。「強さと優しさ」は、コインの裏・表とも言える。

 このような言葉を自分の座右の銘として生きていけるほど、青臭くもなく凡人の私には、長い間、“これだ”という座右の銘が見つからなかった。
 若いころは、「人生の一回性を大事にしたい」とか言って、当たり前のことを偉そうに嘯(うそぶ)き、その場をしのいできたと言っていい。

 だがここ数年前に、地球温暖化の悪影響が身近に忍び寄るという社会的風潮もあってか、(風潮に影響されやすい?)、ある日、ラジオ番組から流れてきた「明日、地球が滅びようとも、君は今日、木を植える」という言葉にいたく感動してしまった。これはある別の作家の言葉で、本人自らも木を植え続けているらしいが、作家名はすぐに忘れてしまった。
 これなら自己紹介などで、自分の座右の銘と言って、語れそうな気がした。世間的に恥ずかしくもなく、ちょっとは青臭いかも知れないが、「庭に一本の木を植えても、木を植えたことには違いないだろう」、「まさか明日には地球はなくならないだろうし」と強弁できると思ったからだ。

 これから何本の木を植えられるのか分からないけれど、まずは自分ができることを実践し、継続していく。地域の自然に目を向けながら、行政などにも働きかけて地域のみんなで木を植える。また、いつまで林の間伐などできるか分からないけれど、まずは気持ちの立て方が重要と思って、堂々とこれからも「座右の銘」としていきたい。 (き)

 千葉市のはずれで、地域のみんなと篠を刈り取り、小さな水田を開拓。すべて手作業で、しろかき、田植え(=写真)、草取り、稲刈り、天 日干しまで行う。素人には本当はここからがたいへん。脱穀、もみすり、精米までは、さすがに手作業ではできず(1回やってみたけれど)、つてを頼ってプロ の農家に機械でお願いする。ここで、エネルギーがないと米も食べることができないことを身をもって実感する。
 梅雨は日本人にとっても暮らしにくい時期ではありますが、このように小さな稲が大きくなるために不可欠な時期ですので、日本の四季を楽しみましょう。




◎「原産協会メールマガジン」2010年7月号(2010.7.26発行)
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