lights on with nuclear

 [JAIF]原産協会メールマガジン

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原産協会メールマガジン12月号
2010年12月27日発行

Index

■原子力政策推進活動

 □「原子力産業セミナー2012」に1,900人の学生が参加
 □政治の役割をテーマに、「高レベル放射性廃棄物処分シンポジウム」を開催 

■国際協力活動

 □「ロシアの原子力技術開発の動向に関する懇談会」を開催
~ロシア クルチャトフ研究所 革新エネルギー研究所のクズネツォフ 第一副所長を招き~

会員との連携活動

 □第8回「会員情報連絡協議会」を開催 

■原産協会からのお知らせ

 □年末年始のお知らせ・・・ 
 

■ホームページ・動画の最新情報

 □原産協会HP(一般向け)の更新情報
 □動画配信
 □会員向けHPの更新情報
 □英文HPの更新情報

■原産協会役員の最近の主な活動など
■原産協会入会のお知らせ
■シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」【22】
■げんさんな人達(原産協会役・職員によるショートエッセイ)

本文

■原子力政策推進活動

□「原子力産業セミナー2012」に1,900人の学生が参加

 当協会と関西原子力懇談会は、合同企業説明会「原子力産業セミナー2012」を東京(12月11日)および大阪(12月18日)で開催しました。このセミナーは毎年12月に開催しており、5回目となる今年は2012年の就職を目指して、東京1,256人・大阪647人、合計1,903人(昨年度比787人増、約1.7倍)が来場しました。

 合同企業説明会「原子力産業セミナー2012」に参加した企業・機関は、自社ブースで業務内容や採用スケジュールについて20~30分程度で説明し、学生も熱心にメモを取りながら聞いていました。また、説明後は質問が飛び交うなど活発なやりとりが見られ、会場は熱気に包まれていました。各ブース前には人垣や長蛇の列ができ、原子力関連学科以外を専攻とする理系学生や文系学生も多数参加しており、原子力分野に対する関心の高さが伺えました。
 
 

ブース周辺の様子(新宿エルタワー30階 サンスカイルーム)


 セミナー会場には原子力産業に関連する展示コーナーがあり、放射線や原子力発電のしくみに関するパネル、原子力発電所の縮小模型等により、普段は原子力と接することのない学部・学科の学生たちが、原子力産業に対する理解を深めていました。
 コミュニケーションエリアとして設けたスペースは、来場学生が説明会の合間にリフレッシュしたり、学生と参加企業・機関の担当者が気軽な雰囲気で話し合う場として活用されました。
 
 また、今年度から初の試みとして、セミナー会場内に「原子力なんでも相談コーナー」のブースを設けました。このコーナーは、原子力産業への就職を真剣に考えている学生に対するカウンセリングの場であり、原子力産業の展望や専攻に合った業種の紹介、原子力発電の原理といった初歩的なことから専門的な事柄まで、コーナーを訪れた学生は、様々な相談を行っていました。相談後は「原子力に対する興味が深まった」、「就職の間口を広げられた」、「機械系技術者の重要性を知った」等の声が聞かれました。

「原子力なんでも相談コーナー」

 セミナーの開催報告(速報)をこちらに掲載しています。
http://www.jaif.or.jp/ja/nis/2010/nis2012_prompt-report.pdf



□政治の役割をテーマに、「高レベル放射性廃棄物処分シンポジウム」を開催

 当協会は12月17日、東京・臨海副都心の日本科学未来館“みらいCANホール”において、高レベル放射性廃棄物の処分問題が、一歩でも前に進むために必要な地域の関心の芽が育つ環境を作り上げることをねらいとして、「高レベル放射性廃棄物処分問題の政治の役割について」をテーマとしたシンポジウムを、関係する5つの地方の自主組織と共催しました。招待者や記者を含め約220名が参加しました。当協会では、高レベル放射性廃棄物処分に関するシンポジウムを2008年から開催しており、今回は3回目となります。

  開会挨拶した当協会の石塚昶雄・常務理事(=写真右)は、これまで2回のシンポジウムで得た意見および当協会が行ってきた勉強会での議論も含め、この非常に難しい高レベル放射性廃棄物処分の問題を、一歩でも前に進めていくためには、政治の役割が大きいのではないかということに至ったと、今回のシンポジウム開催について説明しました。
 
 今回は基調講演に、野村総合研究所顧問であり、元総務大臣、前岩手県知事の増田寛也(ますだ ひろや)氏(=写真左)を迎え、「地域づくりの新たな視点 ―政府部門との協働をめざして―」と題して、“地方自治とは”、“地方分権の動き”、“原子力政策を考えるに当たって”、“首長からみたいくつかの論点”などについて講演が行われました。
 

 この後のパネルディスカッションでは、元日本経済新聞社・論説委員の鳥井弘之(とりい ひろゆき)(=写真右)氏が議長を務め、パネリストとして前新潟県柏崎市長の西川正純(さいかわ まさずみ)氏、中国新聞社総合編集本部・経済部長の宮田俊範(みやた としのり)氏、東京大学法学部教授の森田朗(もりた あきら)氏、大阪大学コミュニケーションデザインセンター特任准教授の八木絵香(やぎ えこう)氏に参加いただきました。
 
 鳥井議長から、パネル討論の論点として、①政治主導と言うが、そもそも政治が関心を持っていないのが現状だろう。この点をどう克服できるか、すべきか、②国と都道府県、市町村、地域コミュニティとのパートナーシップ、③国策として推進するために考えられる政策手段は、④現代のキーワードとの関連で国の役割を考える、が列挙され、会場からも意見が出され、活発な議論が展開されました。


 パネル討論 会場風景



国際協力活動

□「ロシアの原子力技術開発の動向に関する懇談会」の開催
~ロシア クルチャトフ研究所 革新エネルギー研究所のクズネツォフ第一副所長を招き~

 当協会と協力協定を有するロシア研究センター「クルチャトフ研究所」の革新エネルギー研究所のV.クズネツォフ第一副所長が来日したのを機に、12月17日、当協会にて「ロシアの原子力技術開発の動向に関する懇談会」を開催しました。

 クズネツォフ氏は、その一例として、ロシア極北の石油・ガス資源開発に原子力技術を活用したプロジェクトについて紹介しました。

 まずは、北極海航路・船団における原子力利用の一例である原子力砕氷船について、北極海という特殊な環境の中でも長期間の燃料交換なしで航行が可能で、経済性にもすぐれ(ディーゼル船の1/2の燃料コスト)、どんな出力にも調整ができるとして、その開発の歴史と各砕氷船の特性、貨物運搬の実績について紹介しました。

2007年就航、原子力砕氷船「戦勝50周年号」


 現在運航中の6隻の原子力砕氷船は連続航行3年可能なKLT40炉を搭載していますが、建造中の最新式砕氷船は7年連続航行が可能な原子炉RITM-2000を搭載し、2015年までに就航予定、同タイプの砕氷船が2020年までに3隻就航予定であるとのことです。これとは別に、世界で唯一航行するコンテナ輸送のための商業用の原子力砕氷船もあり、ロシア領海内での航行に何の問題も発生しておらず、国際航路での活用について提案していると述べました。

 さらに、極北の大陸棚の資源開発について、その水深や氷面下という特異の条件下での掘削、ガスの液化に必要な電力の安定的供給やメキシコ湾の原油流出事故のような環境負荷を考えると原子力潜水艦を使った海中での作業に頼らざるを得ないと指摘し、現在、そのプロジェクトを関係者と協議中であると述べました。ガス液化に伴う費用は、原子力利用(300MW炉の2基)の場合、天然ガス利用と比較して1/3となり、経済性にすぐれていること、またテロ攻撃回避の観点から、原子力潜水艦を液化ガス輸送タンカー(容量15万m3)として利用し、海水中を北極海経由で米国や日本に輸送することを外国の研究者とともに検討していることを紹介しました。

海中で原子力潜水艦を利用した電力供給の仕組み



 クズネツォフ氏は、講演の後半で、事前に会場参加者から寄せられた関心項目、質問項目に答える形で、最新のロシアの原子力開発状況について紹介しました。

 2010年の原子力発電電力量は1690億kWh、稼働率は約81%を予測しており、順調な伸びをみせていること、発電所周辺への放射能影響も極めて少数か皆無であると述べました。なお、連邦プログラムに従い、原子力発電のシェアを現況の16%から25~30%拡大することとしていますが、軽水炉の開発については、既存のV-320(VVER1000)をより進化させた炉、NPP2006(VVER1200)を開発し、現在建設中であることに言及しました。NPP2006の改良された各技術特性の他、安全性確保のコンセプトについて紹介し、欧米の原子炉には劣らない品質であると述べました。

 高速炉の開発については、現在、建設中のベロヤルスク原子力発電所4号機(高速炉BN800、ナトリウム冷却炉)は、建設作業員不足で若干の遅れが出ているもののほぼ計画どおりであり、建設に必要な資金の40%が既に投下、臨界は2013年、商業運転は2014年の予定であると述べました(フルMOXによる運転は2016年を予定)。鉛ビスマス炉については、ロスアトムと民間企業の合同出資により、商業用プロトタイプ100MW炉を作る計画であること、また、鉛炉BRESTの研究チームは、この先10年以内にプロトタイプ製造を目指していることに言及しました。

 最後に、米ロの原子力協定が12月9日に米国議会で採択され、この動きが日ロ原子力協定の早期発効を後押しし、具体的な協力が進むことへの期待を表明しました。

懇談会の光景



■会員との連携活動

□第8回「会員情報連絡協議会」を開催

 当協会は12月6日、第8回会員情報連絡協議会を東京・霞が関の東海大学校友会館で開催しました。国際原子力開発(JINED)の武黒一郎社長から今後の日本の原子力国際展開に焦点を当てた、「国際原子力開発(株)の事業方針と活動状況」について、原子力国際協力センター(JICC)の酒井利明センター長から「原子力発電新規導入国の動向」について講演をいただきました。

 武黒社長は、10月末に日本がベトナムのニントゥアン省第二サイトの原子力発電プロジェクトのパートナーとして選定されたことを受け、ベトナム側が提起している六条件①先進技術の提供②人材育成協力③資金面の協力④燃料安定供給⑤使用済み燃料・放射性廃棄物管理支援⑥原子力産業発展支援――をいかに今後具体化させていくかが課題だ、と強調しました(=写真)。

 そのためにはまず、「ベトナムのために」の1点で国、電力会社、メーカーがまとまることが重要だと指摘するとともに、2015年の着工、21年運開までの道筋を、日本の経験・強みを生かして、スケジュール通り、予算通りに取り組んでいくことを目指す、と述べました。

 さらに、途上国への原子力輸出は初めてのこととなることから、安全の確保、相手先の政策変更、原子力賠償制度の確立、長期の1資金調達などのリスク管理にも力を入れていく方針を表明する一方、武黒社長は「ベトナムへの輸出は、新規導入国での原子力発電所建設の試金石であり、チーム日本をマーケットが見ている」と強調するとともに、ビジネスモデルの構築など、「次」や「次の次」のマーケットを見据えた取組みの重要性も指摘しました。

 JICCの酒井センター長は、世界に誇れる原子力発電技術・経験を蓄積しているわが国に対し、原子力発電導入計画をもつ国々から、人材育成や法制度整備など基盤整備に対する様々な協力要請に的確に応え、効率的・効果的な協力・支援の取組み、および原子力発電導入を巡る各国の動きについて紹介しました(=写真)。

 当協会からは、活動報告として、4府省(内閣府、文部科学省、経済産業省、外務省)が呼びかけ、国内の原子力人材育成に関係する企業、大学、高等専門学校、研究機関、団体等が協力して、「原子力人材育成ネットワーク」が設立されたこと、当協会は、日本原子力研究開発機構とともにネットワーク共同事務局として実施運営を担当することを報告しました。
 



■原産協会からのお知らせ

□・・・年末年始のお知らせ・・・

 当協会の年末年始の休業期間を下記の通りとさせていただきます。     
【休 業 期 間】 平成22年12月29日(水)~平成23年1月4日(火)  
【業務開始日】 平成23年1月5日(水)                   


■ホームページ・動画の最新情報

□原産協会HP(一般向け)の更新情報 ( http://www.jaif.or.jp/ )

*国内、海外ニュースは毎週および随時更新しております。

・「原子力産業セミナー2012」開催報告を掲載(12/21)
・「原産協会事務局年末年始休業のお知らせ」ならびに「原産新聞からのお知らせ」(12/15
・第1回、第2回原子力安全規制ラウンドテーブルの関係資料を取りまとめ、掲載。(12/2)


□動画配信 ( http://www.jaif.or.jp/ja/jaiftv/ )

*「高速増殖炉実用化を見据えて─高速増殖原型炉もんじゅのいま」 (12/15配信)

□会員向けHPの更新情報( https://www.jaif.or.jp/member/
・「日本の原子力発電所の運転実績」11月分データ (12/6)
・『海外原子力情報』10月分、11月分を追加 (12/1)

□英文HPの更新情報( http://www.jaif.or.jp/english/

・Atoms in Japan (AIJ):週刊英文ニュース(12本 12/1-12/27)
・AIJ FOCUS:Japan's Nuclear Industry 2010 (12/22)


■原産協会役員の最近の主な活動など

[石塚常務理事]
・12/8(水) ㈱東芝京浜事業所視察
・12/10(金) ㈱日本製鋼所室蘭製作所視察
・12/16(木) 日本原子力学会・マスメディアとの交流会にて講演 (於:原子力学会会議室)
    

■原産協会入会のお知らせ(2010年12月)

・国際原子力開発(株)
・(株)ベントレー・システムズ


■シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」【22】

ポーランドの原子力開発事情と原賠制度
 今回は、豊富な石炭資源を持つポーランドの原子力開発事情と原賠制度についてQ&A方式でお話します。

Q1.(ポーランドの原子力開発事情)
石炭火力発電が9割超を占めるポーランドにおいては、原子力開発はどのような状況ですか?

A1.
・ ポーランドでは1950年代から原子力に関する研究が行われてきましたが、国内に豊富に石炭があるため、原子力発電所の建設は先送りにされてきました。
・ 発電を石炭に依存したために大気汚染がひどくなり、1980年代には原子力発電所の建設に着工しましたが、チェルノブイリ事故を受けて計画は白紙撤回されました。
・ 近年、温暖化防止やエネルギーセキュリティの観点からポーランドでは電源の多様化が喫緊の課題となっており、2009年には首相から具体的な原子力発電導入計画が発表されました。
・ ポーランドの原子力発電導入に当たっては、外国企業の全面的な支援・協力が期待されています。


【A1.の解説】
 ポーランドには1958年に初めて建設されたEWA、1974年に運転開始されたマリア炉などの研究炉があり、原子力に関する研究は古くから行われてきました。一方で、国内に石炭、褐炭等のエネルギー資源が豊富にあったことなどから、1960年代に旧ソ連による強い勧めがあったにも関わらず、ポーランドの原子力発電所の建設計画は先送りにされてきました。

 しかし、発電を石炭や褐炭に依存したために大気汚染がひどくなり、1972年にポーランド政府は、バルト海沿岸のジャルノヴィエツに旧ソ連型の加圧水型炉VVER-440(出力44万kW)を4基建設することを決定しました。このうち2基は1986年に着工されましたが、同じ年に隣接する旧ソ連(現ウクライナ)で発生したチェルノブイリ事故(ポーランドの一部には大量の放射性降下物があった)をきっかけに反原子力の世論が高まったため、政府は1991年に建設計画を中断し、原子力発電導入計画は白紙撤回されました。

 現在、ポーランドの電力供給の9割以上は石炭火力によって賄われており、また一次エネルギーの6割が石炭、3割が石油、1割が天然ガスによっています。さらに石油のほとんどと天然ガスの7割を輸入に頼っているため、環境や気候変動問題への配慮だけでなく、エネルギーセキュリティの面(とりわけロシアへのエネルギー依存を減少させるという)からも、エネルギー源の多様化が喫緊の課題となっています。

 こうしたなか、近年は世界的な原子力ルネッサンスの流れの中で、再び原子力発電の導入が議論されています。2005年には原子力発電所の建設計画が盛り込まれたエネルギー政策案が政府により発表され、2009年には首相から「2020年までに初号機を、2030年までに合計出力600万kW(2サイトで各300万kW)を運転開始する」との原子力発電導入計画が発表されました。
 今後の開発スケジュールでは、2010年秋に原子力発電開発計画の立案、2011~2013年発電所のサイト選定・サイト準備作業・機器供給契約等の締結、2014~2015年詳細設計・許認可の取得、2016年初号機の着工、2020年運転開始とされていますが、若干の遅延も予想されています。
 
 原子力発電の導入にあたって、ポーランドは米国、フランス、日本、韓国などの各国と原子力協力協定を結ぶとともに、原子力発電事業の出資者であるポーランド・エネルギー・グループ(PGE)は、海外のエネルギー企業の資本参加を求めて、フランス電力、GE日立ニュークリア・エナジー社、ウェスチングハウス・エレクトリック社との間においてそれぞれ、原子力発電分野での協力に関する覚書を締結しています。
 さらに、2010年にはポーランドはOECDの原子力機関であるNEAの29番目の加盟国となり、IAEA基準とEU規則を満たす第3世代原子炉を目指している模様です。
 

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Q2.(ポーランドの原賠制度)
ウィーン条約の加盟国であるポーランドの原賠制度はどのようになっていますか?


A2.
・ ポーランドの原賠制度は、2000年11月に制定の原子力法の一部として規定されており、同法は直近では2008年に改正されています。
・ ポーランドの現行原賠法では、用語の定義、運転者への責任集中、損害賠償措置の強制、責任限度額、国の補償など、原賠制度の基本的原則が網羅されています。
・ ポーランドは1990年にウィーン条約に、2010年に改正ウィーン条約に加盟しました。


【A2.の解説】
 ポーランドにおける原子力法は、もともと旧ソ連型の原子力発電所(VVER)の建設計画が着工した1986年に制定されました。しかし、この計画が頓挫した後、2000年11月29日に現行の原子力法が改めて制定され、直近では2008年4月11日に改正されています。現行の原賠制度はこの2000年原子力法の第12章「原子力損害に関わる民事責任」(100条~108条)に規定されており、用語の定義、運転者への責任集中、免責事項、責任限度額(1.5億SDR)、損害賠償措置、国による補償、除斥期間、裁判管轄権など、原賠制度の基本的な原則がほぼ網羅されています。制度の主な内容は以下の通りです。

・ 用語の定義(100条、100a条)
原子力施設とは船舶、航空機の動力源として以外の原子炉、核物質製造施設・使用済燃料再処理施設、核物質保管施設(輸送時保管を除く)をいう。
原子力損害とは身体障害、財産損傷、公共財としての環境損害をいう。これらの損害には、原子力事故の発生後に行う適切な防止措置の費用が含まれる。
運転者は原子力施設を運営するものをいう。
本法律で規定していない場合の原子力損害は民法により賠償される。
公共財とされる環境への原子力損害は当局により執行される回復措置費用を弁済するものとする。
・ 運転者の責任(101条)
原子力損害の唯一の責任は運転者が負う。ただし戦争や武力紛争の行為によって直接生じる損害は除く。
核物質の輸送中の責任は、荷受人との契約に別途規定がない限り、発送側の原子力施設の運転者にある。
当人の意図的行為により被害を被った損害については、裁判所が運転者の賠償支払いを免除することがある。
・ 責任限度額(102条)
運転者の責任限度額は1.5億SDR(約193億円)とする。賠償請求が1.5億SDRを超過場合には、運転者は有限責任基金を設置し、この基金の設置・配分の手順は本法律および海事法における海事訴訟の有限責任に関する法規により規制され、その裁判管轄権はワルシャワ地方裁判所にある。
・ 損害賠償措置(103条)
運転者は原子力損害賠償責任保険の契約が義務付けられる。人身損害が生じた場合には、保険による保証総額のうち10%は財産や環境に与えた損害ではなく生命・身体の損害に充てることとする。
原子力事故の日から5年以内に人身損害に関する賠償請求が、それに充てる金額(保証総額の10%)を超過しなかった場合、残りは財産や環境に与えた損害の賠償請求や、原子力事故の日から10年以内に請求された人身の損害賠償請求に使われる。
運転者ではない個人によって引き起こされた原子力損害で、原子力損害賠償責任保険によって解決されないものは国が保証する。
財務大臣は、関係省庁と図った後に、運転者の賠償措置額を別途定める規定を設ける。(注)
運転者は規定された賠償措置額を保険契約しなければならない。
・ 賠償の請求(104条)
原子力損害の賠償請求は直接保険者(保険会社)に対して行うこと。その際、保険者は運転者の有する支払制限等の権利を継承する。
・ 除斥期間(105条)
人身障害の原子力損害賠償請求は出訴期限の法令により制限されない。
財産や環境の原子力損害賠償請求は、被害者が損害と責任者を知った日から3年以内に提出しなければ無効となる。また、それらの賠償請求権は原子力事故の日から10年後に消滅する。
環境損害の損害賠償請求権は環境問題を所管する大臣に付与される。
・ 裁判管轄権(106条)
ポーランドの国内で発生した原子力事故に起因する原子力損害の場合、賠償請求の裁判管轄権は地方司法裁判所に存する。
ポーランドの国外で発生した原子力事故に起因する原子力損害の場合、裁判管轄権はウィーン条約により定められる裁判所に存する。
・ 関係法(107条)
本章に記載のない事項については、原子力施設に関わる該当規則により規定される。
本章に記載のない範囲の損害請求は民事法令によって規定される。
・ 社会保障法(108条)
本章の規定は労働者災害補償や職業病補償の給付金支払の規定を侵害するものではない。

(注)別途規定・2004年4月の財務大臣「原子力施設の運転者に対する賠償責任保険の強制付保に関わる規則」によれば、賠償措置額は凡そ以下の通り。
> 原子炉:~30MW 40万SDR(約5,134万円)
    30MW~ 1.5億SDR(約193億円)
> 核燃料製造施設&核燃料使用施設:1.5億SDR(約193億円)
> 使用済燃料貯蔵所(輸送時を除く):4.5万SDR(約578万円)
> 放射性廃棄物貯蔵所:2万SDR(約257万円)

 ポーランドは1990年にウィーン条約に加盟、2010年には改正ウィーン条約に加盟(2010年9月21日批准、同年12月21日発効)しています。その他の国際枠組みとしては、原子力安全条約、使用済み燃料安全管理・放射性廃棄物安全管理合同条約、原子力事故早期通報条約、原子力事故または放射線緊急事態における援助条約、核不拡散条約(NPT)、包括的核実験禁止条約(CTBT)、核物質防護条約改定条約に加盟しており、IAEA保障措置協定(自発的協定)、追加議定書も締結しています。

※円換算は平成22年12月21日の為替レートによる。


                     ◇    ◇    ◇

○ 原産協会メールマガジン2009年3月号~2010年9月号に掲載されたQ&A方式による原子力損害賠償制度の解説、「シリーズ『あなたに知ってもらいたい原賠制度』」の19回分を取りまとめ、小冊子を作成いたしました。

 小冊子の入手をご希望の方は(1)送付先住所 (2)所属・役職(3)氏名(4)電話番号(5)必要部数をEメールで genbai@jaif.or.jp へ、もしくはFAXで03-6812-7110へお送りください。


 シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」のコンテンツは、あなたの声を生かして作ってまいります。原子力損害の賠償についてあなたの疑問や関心をEメールで genbai@jaif.or.jp へお寄せ下さい。


■げんさんな人達 (原産協会役・職員によるショートエッセイ)

東京スカイツリーを眺めて

 私の最近の日課は、建設中の東京スカイツリーを眺めることである。浅草のはずれに建つマンションの一室である我が家からは、東の方向に位置し、運よく障害になるような建造物がないのでよく見える。なぜか楽しい気分になるので、朝起きたときと夜寝る前に必ず見るようにしている。

 天気のいい日の朝は、輝く朝日を背負い、光を浴びた姿が凛として、とても美しい。一方、雨や曇りの日は、てっぺんに重い灰色の雲を纏っている。土砂降りの雨の日などは、鈍色の空に姿を隠す。少しずつ背が高くなっていくのを確認するのも一興。
 夜はと言えば、いつも変わらずそこに佇んで、ネオンが煌く街を静かに見下ろしている。
 
 数年前に国民的コミック「ALWAYS 三丁目の夕日」が映画になり、大ヒットしていたが、東京スカイツリーを眺めていると時折あの映画を思い出す。昭和33年(1958年)の東京・下町を舞台に、夕日町に暮らす人々の暖かい交流を描いたドラマには、下町の活気と息遣いとともに、建設中の「東京タワー」が登場する。わずか15ヶ月という突貫工事で完成し、当時、パリのエッフェル塔を抜いて世界一になったテレビ塔に、世界中が驚愕したと聞いている。
 

1年前のタワーの姿

 東京スカイツリーは、皆さんご存知の通り、東京都墨田区押上に現在建設中の電波塔。
 高さ634m、完成すれば世界一の自立式電波塔となる。ちなみに現在、世界で一番高いタワーは、カナダのトロントに建っている「CNタワー」で553.3m。第2位は、ロシアの「オスタンキノタワー」で高さ540.1mのモスクワのテレビ塔である。第3位は、中国・上海にある「東方明珠電視塔」。オリエンタルパールタワーと呼ばれており、467.9mである。そうだ、「世界のタワー巡りの旅」、なんてのもいいなぁ、とふと思った。

 東京スカイツリーは人工の建造物としては、「ブルジュハリファ」(アラブ首長国連邦、ドバイにある世界一高い高層ビル)の828mに次ぐ世界第2位の高さになる。こういった高さを競う記録は、どんどん塗り替えられていくのだろうが。
 
 東京スカイツリーのライトアップはすべてLED化を目指していると聞いている。また、ライティングデザインには東京下町らしく「粋」と「雅」という二つのコンセプトがあるそうだ。「粋」は隅田川の水をモチーフに、「雅」は江戸紫をテーマカラーに夜空に光を散りばめていく。
 
 2010年3月には、東京タワーの333mを超え、日本一高い建造物となった。
着工から2年以上経ち、現在は514m。第2展望台も見えてきた。
 住んでいる場所の近くにシンボリックなものができるのはいいものだ。
東京スカイツリーの開業予定は2012年春。完成は1年以上先のことである。当分の間ワクワクが続く。   (カモノハシ)



◎「原産協会メールマガジン」2010年12月号(2010.12.27発行)
発行:(社)日本原子力産業協会 情報・コミュニケーション部(担当:木下、八十島)
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