lights on with nuclear

 [JAIF]原産協会メールマガジン

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原産協会メールマガジン11月号
2013年11月25日発行

Index

■原子力政策推進活動

 □理事長メッセージ『福島の復興に向けた取り組みについて』、『福島第一原子力発電所4号機の使用済燃料取り出し開始に際して 』を発表
 □第2回原子力安全シンポジウムを開催
 □福島第一原子力発電所で輸送・貯蔵専門調査会定例会合(見学会)を開催
 □ 「JAIF地域ネットワーク女川交流会・第8回意見交換会」を開催 

■国際協力活動

 □第32回日韓原子力産業セミナーの開催

■情報発信・出版物・会合等のご案内

 □Jaif TV 「汚染水の解決を探る」を公開

■会員との連携活動
 □第12回原産会員フォーラムを開催
■ホームページの最新情報
■原産協会入会のお知らせ
■原産協会役員の最近の主な活動など
■シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」【53】
■げんさんな人達(原産協会役・職員によるショートエッセイ)

本文

■原子力政策推進活動

□理事長メッセージ『福島の復興に向けた取り組みについて』、『福島第一原子力発電所4号機の使用済燃料取り出し開始に際して 』を発表


○11/18 理事長メッセージ『福島の復興に向けた取り組みについて』
http://www.jaif.or.jp/ja/news/2013/president_column22_131118.pdf

○11/15 理事長メッセージ『福島第一原子力発電所4号機の使用済燃料取り出し開始に際
して ~廃止措置に向けた大きな一歩~』
http://www.jaif.or.jp/ja/news/2013/president_column21_131115.pdf


□第2回原子力安全シンポジウムを開催
 
 当協会は10月22日、第2回原子力安全シンポジウムを東京都千代田区のイイノホール&カンファレンスセンターで開催しました。「原子力安全-国民の信頼回復につなげるには」をテーマに、福島第一原子力発電所事故後に混乱がみられた政府等の情報発信の問題点などについて講演とパネル討論を行い、議論を深めました。

本シンポジウムの概要はこちらをご覧下さい。
http://www.jaif.or.jp/ja/news/2013/2nd-safety-sympo_report.html


□福島第一原子力発電所で輸送・貯蔵専門調査会定例会合(見学会)を開催 

 当協会の「輸送・貯蔵専門調査会」では、原子燃料物質や放射性廃棄物等の輸送および貯蔵に関する研究・技術開発動向、関連法令、技術基準の国際動向などに関して、講演や関連施設の見学、意見交換を通じて、情報の提供、交換の活動を実施しています。参加会員からの希望テーマ(講演・見学先)に基づき、年間7回の定例会合を実施しており、今回は第58回定例会合として、10月18日に東京電力・福島第一原子力発電所(以下1Fと称す)を見学しました。

 今回の見学では、1Fの小野所長およびJヴィレッジの福島第一安定化センター 菅沼副所長より挨拶を受け、1F-1~4号機の廃止措置に向けた中長期ロードマップを纏め、使用済燃料プールからの燃料取り出しの為の対応と同時に、汚染水対策等にも取り組まれている旨の状況説明を受けました。小野所長からは、「汚染水対策等で繁忙になっているが、廃炉に向けた議論もしている。今回、視察する方々は輸送・貯蔵の専門家で、今後、福一について対応して頂く関係者ばかり。今回の視察で、その専門の目から現場を見て頂き、提案できる内容があれば、意見を言って頂きたい」とのお話がありました。

 見学前に、Jヴィレッジの福島第一安定化センターで本人確認・一時立入者カード受領・着替えを実施した後、東京電力の専用バスで1Fに移動し、1Fの正門脇に設置された入退域管理施設(6月30日から運用開始)で入域手続きを行い、免震重要棟を見学しました。ここは、手狭な感じがしました。その後、1F構内専用バスで、下記のルートで見学しました。

  原子炉注水ポンプ、処理水貯蔵タンク→乾式キャスク仮保管設備現場
  →多核種除去設備(ALPS)→地下水バイパス揚水井
  →滞留水処理設備制御室→1~4号機外観確認→4号機原子炉建屋
  →1~4号機海側→乾式キャスク保管庫→5,6号機海側設備
  →非常用ディーゼル発電機6B→夜ノ森線鉄塔倒壊現場

 見学終了後、退域手続きを行い、Jヴィレッジの福島第一安定化センターに移動、質疑応答を行い、見学終了としました。

 今回の見学で、1F事故対応には時間がかかり、しかも大変な工事であることを実感し、参加された輸送・貯蔵の専門家の見学が、今後に役立つことを期待するものです。
 なお、同調査会は会員募集を毎年4月に行い、7月から1年間活動を行います。参加希望の方は途中からの参加も可能ですので、当協会にご連絡ください。

詳細・お問い合せはこちらをご覧ください。
http://www.jaif.or.jp/ja/seisaku/yuso_chosakai_activity.html


□ 「JAIF地域ネットワーク女川交流会・第8回意見交換会」を開催 

 当協会JAIF地域ネットワークは10月30日、宮城県牡鹿郡女川町においてメンバー間の交流会及び第8回意見交換会を開催しました。翌31日には、東北電力(株)女川原子力発電所見学会を開催し、東日本大震災後の発電所の安全対策の現場等を視察しました。

 交流会、意見交換会には、全国各地のJAIF地域ネットワークメンバー22名が参加し、30日は、女川町内の高台にある女川町地域医療センター(旧町立病院)や救世軍の支援によって建てられた「きぼうのかね商店街」、女川漁港等を視察したのち、津波で被災した宿泊施設のオーナー3名の共同経営によるトレーラーハウス宿泊村に移動し、メンバー間の意見交換会を開催しました。

 この意見交換会には、震災後、地域のコミュニティー再生のためにカフェを立ち上げて町民の集いの場づくりを行っている女川町民の方々が参加してくださり、現在の心境や復興に向けた取り組みを語ってくださいました。また、子どもたちにむけた放射線教育について意見交換を行いました。
 
 31日に開催した女川原子力発電所見学会では、敷地内高台にある大容量電源センターや注水車、防潮堤工事現場を視察しました。また、発電所の安全への取組みや震災当時、避難所として女川町民約300人を受け入れた話等を伺いました。
 参加したメンバーからは、「発電所見学は“百聞は一見にしかず”で本当に勉強になった」「今回、学んだところを少しでも地域に還元していきたい」「意見交換会では様々な視点の意見を知ることができてよかった」「人と人とのネットワークの大切さを痛感した」等ご意見をいただき大変好評でした。
 

 


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  JAIF地域ネットワークは、平成21年6月に発足し、メンバー相互の情報交換や交流を通じて、正確な情報の共有を図り、意見を交換することによって、原子力の平和利用が推進される社会を目指す活動を行っています。メンバー構成は主に、全国各地のオピニオンリーダー、教育関係者、消費者団体関係者、草の根グループなど。(現在:個人77名、9団体が登録)
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■国際協力活動

□第32回日韓原子力産業セミナーの開催

 当協会は10月29日、東京都千代田区の如水会館で、第32回日韓原子力産業セミナー(日本側準備委員長:服部拓也原産協会理事長)を開催し(=写真)、両国の原子力産業の状況をめぐる最新の情報・意見交換を行いました。
 
 同セミナーは、1979年以来、韓国原子力産業会議との共催で、原子力開発利用に関する情報・意見の交換の場として交互に開催(第29回以降隔年開催)されているものです。
 
 今回、韓国側からは、韓国原子力産業会議の李鍾振(リ・ジョンジン)常勤副会長を団長とし、韓国水力原子力(株)、韓国原子力文化財団、韓国原子力環境公団、韓国原子力研究所、韓国原子力国際協力協会等からの参加があり、日本側からは、日本エネルギー経済研究所、電気事業連合会、三菱重工業(株)、東京電力(株)及び新しく発足した(技術研究組合)国際廃炉研究開発機構からの発表者を含めて約100名が参加しました。     
 

     
   


 セミナーでは、日本エネルギー経済研究所 小山常務理事及び韓国原子力産業会議 金克培(キム・クッペ)相談役の基調講演の後、「福島第一原子力発電所事故後の状況と安全対策」、「原子力発電所の品質保証と保守管理」、「原子力発電所の技術開発」と「福島第一原子力発電所の現状と対策/放射性廃棄物の管理」をテーマとした講演が行われ、引き続き質疑が行われました。
 
 セッションでは、東京電力(株)より、福島第一原子力発電所の現状と対策についての説明があり、韓国側より、地下水の水位の管理や、20~30km圏内の放射線量の現状などについての関心が寄せられました。また、国際廃炉研究開発機構より組織概要と活動についての説明があり、韓国側より、韓国でも廃炉技術への関心が高まっている等のコメントがあり質疑が行われました。

 セミナー後、韓国代表団は、日本原燃(株)六ヶ所施設、東京電力(株)福島第二原子力発電所、(独)日本原子力研究開発機構J-PARCを見学しました。
六ヶ所施設では、韓国側より、低レベル埋設に要する費用、再処理工場の運営や核査察についての質疑がおこなわれ、また福島第二原子力発電所では、周辺の放射線量や福島第一との連携などについて、また、J-PARCでは、施設の運営や韓国からの研究参加等について質疑がおこなわれ、懇切な説明を受けました。

六ヶ所施設 PR館での説明風景  
   福島第二原子力発電所シミュレレーター室での説明風景
 J-PARC施設での説明風景  




■情報発信・出版物・会合等のご案内

□Jaif TV 「汚染水の解決を探る」を公開

 当協会は20日、第52回動画配信として、「汚染水の解決を探る」を公開しました。

 番組では、福島第一原子力発電所での汚染水問題について、「汚染水」の経緯、中身、環境影響などの基礎情報を整理するとともに、海外事例を基に合理的な解決策を探ります。

動画番組は、以下からご覧いただけます。

○原産協会ウェブサイト
http://www.jaif.or.jp/ja/jaiftv/archive54.html

○YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=8zY7uh5Juks

*YouTubeが閲覧できない場合、低画質版ですが、こちらからご覧ください。
https://www.jaif.or.jp/member/jaiftv2/131120/index.html
 



■会員との連携活動

□第12回原産会員フォーラムを開催

 当協会は10月30日、「第12回原産会員フォーラム」を東京・東海大学校友会館で開催し、約120名の会員に参加いただきました。

 東京電力(株)常務執行役・原子力改革特別タスクフォース事務局長の姉川尚史氏から、「福島原子力事故の総括および原子力安全改革プラン」と題するご講演をいただき、福島第一原子力発電所事故に関する反省、原因分析、東京電力組織内の問題点等の総括および原子力安全改革プランについてお話しいただきました。

 さらに、本年8月に設立された、技術研究組合 国際廃炉研究開発機構(略称IRID)理事長の山名 元氏からは、「技術研究組合国際廃炉研究開発機構の概要について」と題し、同機構の役割および組織体制、研究開発と課題等についてお話しいただきました。

 ご講演を受け、当協会の服部理事長は「廃炉については、以前から国際的に開かれた中で進めていただくことを願っていた。国際廃炉研究開発機構が設立され、そのような方向で作業が進められることを大いに期待している」との感想を述べました。

 講演資料は当協会の会員専用ページに掲載しています。
  https://www.jaif.or.jp/member/login.php 

   
 講演風景



■ホームページの最新情報

□原産協会HP(一般向け)の更新情報 ( http://www.jaif.or.jp/ )

*国内、海外ニュースは毎週および随時更新しております。

・理事長メッセージ『福島第一原子力発電所4号機の使用済燃料取り出し
 開始に際して ~廃止措置に向けた大きな一歩~』 (11/18)
・理事長メッセージ『福島の復興に向けた取り組みについて』(11/15)
・「第2回原子力安全シンポジウム」開催概要 (10/31)
・「日本の原子力発電所の運転・建設状況」を更新 (10/30)
・福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等の状況 (随時)
・福島原子力発電所に関する環境影響・放射線被ばく情報 (随時)
・福島地域・支援情報ページ (随時)
 地元自治体の動きやニュース、地元物産・製品等の情報を掲載中
・「日本の原子力発電所(福島事故前後の運転状況)」を掲載 (随時)

□JaifTv動画配信

・第52回「汚染水の解決を探る」(11/20公開)
http://www.jaif.or.jp/ja/jaiftv/archive54.html

□会員向けHPの更新情報( https://www.jaif.or.jp/member/ )

・【日本の原子力発電所の運転実績】10月分データ (11/25)
・「新年会員交流会」開催のご案内 (11/14)
・第13回原産会員フォーラム 開催のご案内 (11/11)


□英文HPの更新情報( http://www.jaif.or.jp/english/ )

・Atoms in Japan:英文原子力ニュース(AIJ) (随時)
・Fukushima & Nuclear News (随時)
・Status of the efforts towards the Decommissioning of Fukushima Daiichi
 Unit 1-4 (随時)
・Environmental effect caused by the nuclear power accident at Fukushima
 Daiichi nuclear power station (随時)

[Information]
* JAIF President's Comment on Efforts to Reconstruct Fukushima (11/20)
* JAIF President's Comment on Removal of SF from Unit 4 (11/18)
* The 2nd Nuclear Safety Symposium (10/31)	
* Stress Test and Restart Status (随時)
* Current Status before and after the earthquake (随時)
* Operating Records of Nuclear Power Plants (随時)
* Developments in Energy and Nuclear Policies after Fukushima Accident
 in Japan (随時)
* Trend of Public Opinions on Nuclear Energy after Fukushima Accident  
in Japan (随時)


[福島事故情報専用ページ] 「Information on Fukushima NuclearAccident」 (随時)


■原産協会入会のお知らせ

・信越化学工業(株)


■原産協会役員の最近の主な活動など

[今井会長]
11/6 主要紙論説委員との懇談会(於:経団連会館)

[服部理事長]
11/6 主要紙論説委員との懇談会(於:経団連会館)
11/11~13 第20回日仏原子力専門家会合(於:如水会館)
11/21 原子力の自主的安全性向上に関するワーキンググループ(於:経済産業省)
11/22  ㈱千代田テクノル 新測定センター落成記念式典出席(於:大洗大貫台事業所)
11/25 第13回原産会員フォーラム(於:東海大学校友会館)
11/28 京都大学国際シンポジウム(於:京都大学)

[佐藤常務理事]
11/6 主要紙論説委員との懇談会(於:経団連会館)
11/25 第13回原産会員フォーラム(於:東海大学校友会館)


■シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」【53】

原賠ADR時効中断特例法と我が国がCSCに加盟するための課題

 今回は、原賠ADR時効中断特例法と、我が国がCSCに加盟するために解決しなければならない課題についてQ&A方式でお話します。

Q1.(原子力損害賠償請求の時効)
原子力損害賠償紛争解決センターにおける和解仲介の途中で時効が経過した場合、その後に裁判で争うことはできないのですか?



A1.
・ 民法では損害賠償について「損害を知った時から3年」の時効期間があり、原子力損害賠償紛争解決センターによる和解の仲介の申立てには時効中断の効力が認められていません。
・ 時効の経過を恐れて被害者が和解仲介手続の利用を躊躇し、和解仲介制度が十分に活用されない可能性があったため、原賠ADR時効中断特例法が制定されました。
・ 原賠ADR時効中断特例法により、和解仲介の途中で時効の期間が来てしまった場合でも、打切りから一月以内に裁判所に訴えることにより時効にかからないようになりました。


【A1.の解説】
原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)において時効に関する規定はありません。そのため、時効に関する一般規定である民法724条の「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。」が、原子力損害賠償の時効にも適用されることになります。ここでいう請求権の行使とは、原則として訴訟による請求を指しており(民法147条以下)、例外として認められる場合としては、例えば下記のADR法で認証を受けたADR機関のように、法律で特別に認められた手続上の請求でなければなりません。
 現在、原発事故の損害賠償を扱っている原子力損害賠償紛争解決センターの和解仲介手続は、裁判外紛争解決手続(ADR:Alternative Dispute Resolution)の一種ですが、同センターは政府により設置されたADR機関であるため、民間事業者の設置するADRを対象とした「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律」(ADR法)は適用されません。その結果、原子力損害賠償紛争解決センターへの申立てには時効中断の効力は認められず、和解仲介の途中で時効が経過してしまった場合には、和解仲介手続が打ち切られるとその後に裁判で争うことが困難になってしまいます。

 その結果、被害者が時効の完成を危惧してADRの利用を躊躇したり、時効の完成前に和解が成立する見込みがない場合には訴訟手続に移行したりすることにより、被害者にとって利点のある和解仲介制度が活用されなくなる恐れがありました。

 福島原発事故の原子力損害賠償責任を負う東京電力は、消滅時効の完成後にあった請求についても支払いに応じる姿勢を示していましたが、「時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。」(民法146条)という規定があることから、時効期間経過後の支払いについて法的な担保が求められたこともあり、和解仲介制度の活用を促進する観点から「東日本大震災に係る原子力損害賠償紛争についての原子力損害賠償紛争審査会による和解仲介手続の利用に係る時効の中断の特例に関する法律」(原賠ADR時効中断特例法)が平成25年6月5日に制定されました。

 原賠ADR時効中断特例法は、原子力損害賠償紛争審査会が和解の仲介の手続の利用に係る時効の中断の特例について「原子力損害賠償紛争審査会が和解の仲介を打ち切った場合において、当該和解の仲介の申立てをした者がその旨の通知を受けた日から一月以内に当該和解の仲介の目的となった請求について訴えを提起したときには、時効の中断に関しては、当該和解の仲介の申立ての時に、訴えの提起があったものとみなす。」と規定するものです。
 これによって、和解の仲介の途中で時効が経過してしまった場合でも、打切りから1ヶ月以内に裁判所に訴訟を提起すれば、その裁判において東京電力は時効による請求権の消滅を主張することができなくなることが法的に担保されました。
 ADRに関する時効中断の考え方は、建設業法における建設工事の請負契約に関する紛争処理のあっせんや公害紛争処理法における紛争の調停の規定などにおいて前例があり、原賠ADR時効中断特例法もそれらの規定と同様の考え方に基づいています。

 


 なお、原賠ADR時効中断特例法の適用は原子力損害賠償紛争審査会が和解の仲介を打ち切った場合に限って適用されるものであり、例えば未請求の被害者が時効期間経過後に請求を行った場合等については、東京電力は「時効の完成をもって一律に賠償請求をお断りすることは考えておらず、時効完成後も、ご請求者さまの個別のご事情を踏まえ、消滅時効に関しては柔軟な対応を行わせていただきたい」という考え方を示しているものの、時効適用の可能性が全く排除されたわけではないため、更なる対処を求める声もあります。これ等への対処のため、現在、福島原発事故の賠償請求に関し、民法の定める3年の時効期間を10年とする等の特例法案の検討が進められており、今後に国会での審議が予定されています。

原賠ADR時効中断特例法の本文はこちら
http://www.mext.go.jp/a_menu/genshi_baisho/jiko_baisho/detail/1335890.htm

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Q2.(我が国がCSCに加盟するための課題)
我が国ではCSC加盟に向けて検討が行われますが、我が国がCSCに加盟するためには、どのような課題がありますか?

 
A2.
・ 過去の検討に加え、今般福島原発事故が発生したことから、これを踏まえたうえで、我が国にとってCSCへの加盟がどのような意義を持つのかを改めて検討し、国民的な議論がなされる必要があります。
・ もしCSCへ加盟するならば、CSCの規定内容と、我が国の国内法の規定内容との間の整合性を確保するための検討が必要となります。
・ また、拠出金の負担者や、支払いあるいは受取のための手続など、国内における運用体制の検討が必要です。


【A2.の解説】
 我が国では原子力損害賠償に関する国際枠組みに直ちに参加すべき状況にはないとされてきたものの、従前より様々な視点から原子力損害賠償に関する国際条約に加盟することの意義が検討されてきました。例えば2009年の「原子力損害賠償制度の在り方に関する検討会第1次報告書」では、次のような政策的課題について検討を深めるべきとされています。
・ アジア周辺地域での越境損害の対応の明確化と充実
・ 我が国原子力産業の国際展開の支援
・ 各国の損害賠償措置を補完する国際的な資金措置
・ 原子力導入国等における原子力損害賠償制度の整備・充実
 このような過去の検討に加えて、2011年に発生した福島原発事故の賠償や事故処理等においても、改めて条約加盟の意義が検討されつつあります。例えば、今後の汚染水処理や廃炉等の作業では、事故が発生した場合の原子力損害賠償責任を明確化にする必要があります。これにより、作業に協力する事業者に賠償責任が及ぶ可能性を排除し、海外の事業者等が協力しやすい環境を整えることによって、世界中の英知を結集して作業にあたることができることになります。
 CSCの加盟にあたっては、このように我が国の置かれた状況に適応した意義を改めて検討し、これを社会に広く開示した上で、国民的な合意形成を得ることが必要です。

 そのうえで、我が国においてCSCの規定内容と、我が国の国内法の規定内容との間の整合性を確保するための問題について検討する必要があります。例えば、両者の関係に関しては次のような課題があります。
○ 原子力損害の定義
・ CSCで列挙されている「環境損害の原状回復措置費用」(当局により承認された除染の費用)、「防止措置による損害」(原子力損害を防止又は最小限にするために当局により承認された合理的措置)、「環境汚染によって生じたものではない経済的損失」(就労不能損害、営業損害、風評損害、間接的損害等)などの原子力損害と、原賠法が一般的な民事責任を想定して包括的に定義している原子力損害との整合性をどのように図るか。
○ 国際裁判管轄・準拠法
・ 原則として損害発生の原因となった原子力施設が所在する締約国に専属的な裁判管轄が認められるというCSCの規定と、不法行為地に原則的な裁判管轄を認める我が国の「民事訴訟法」との整合性をどのように図るか。
・ 準拠法について、管轄裁判所の法とするCSCの規定と、損害発生地の法とする我が国の「法の適用に関する通則法」との整合性をどのように整理するか。
○ 少額賠償措置額に係る公的資金の確保
・ 原子炉の運転等の区分に応じて定められる240億円や40億円の少額の賠償措置について、CSCでは原則的な賠償措置額である3億SDRとの差額を埋める公的資金の確保が義務付けられることから、その資金をどのように確保するか、またその法的整備をどのようにおこなうか。
○ 国際輸送に関する賠償責任
・ CSC付属書第3条では核物質等の国際輸送に関し、国際的事業者間の賠償責任の所在を規定しているが、日本の原賠法では、国内の原子力事業者が付随して行う輸送として適用され、日本の原子力事業者が責任を負うものと解釈されている。このため、原賠法上の規定を整備するなど輸送に関する責任の所在をどのように整備するか。
○ 責任保険の効力の継続性確保
・ CSC付属書第5条では、資金的保証について「保険者又はその他の資金的保証者は、保険その他の資金的保証を、権限ある当局に対し少なくとも2ヶ月前に書面による予告を与えないで停止し又は取消してはならず、また、その保険その他の資金的保証が核物質の輸送に関連する場合には、その輸送期間中は、停止し又は取消してはならない。」規定されていることから、これを担保するための責任保険契約の約款整備、原賠法との整合性をどのように図るか。
○ 原子力事業者の求償権
・ CSC付属書10条では、契約上の明示及び個人の故意の場合にのみ求償権を認めているが、日本の原賠法では契約及び第三者の故意としており、求償権の対象には法人も含まれるとされていることから、両者の整合性をどのように図るか。
○ 拠出金の負担に関する国内制度
・ CSCが規定する補完基金に対して資金を拠出するため負担者(条約上では国の負担となるが、その最終負担者と分担方法)や支払いのための手続について制度を構築する必要がある。
○ 拠出金を受ける場合の国内制度
・ 我が国がCSCの規定に基づいて拠出金を受ける場合、賠償請求額が3億SDRを超え賠償措置額に満たない場合の拠出金の充当方法など、受け取り手続に関する国内制度を策定する必要がある。

 上記に加えて、付属書3条6項の過失相殺や同条10項の運営者の責任限定に関わる規定については、日本の民法との整合性を検討する余地がある。

 なお、CSCへの加盟にあたってはCSCの第19条に規定されている「国内法がCSC付属書の規定に適合すること」などの条件を充足したと見做されれば、必ずしも上記のような法的課題が全て解決されなくとも加盟は妨げられません。また、米国の例では、拠出金の負担者について「2007年エネルギー自立・安全保障法」第934条にて、米国内の事故の場合には原子力事業者に、米国外の事故の場合には原子力供給者に分担費用を割り当てることを規定し、原子力供給者に「遡及的リスクプール制度」への参加を義務付けていますが、各供給者の負担割合を決定する「リスク情報評価式」に関する規則については供給者の理解が得られず未だ成立していません。

 さらに、我が国においてCSCがより有効に機能するためには、我が国だけでなく周辺諸国にも加盟を働きかけ、アジア周辺諸国を含めた国際枠組みの形成を目指すことが期待されます。

◇    ◇

○ 原産協会メールマガジン2009年3月号~2012年10月号に掲載されたQ&A方式による原子力損害賠償制度の解説、「シリーズ『あなたに知ってもらいたい原賠制度』」を冊子にまとめました。

最新版の冊子「あなたに知ってもらいたい原賠制度2012年版(A4版324頁、2012年12月発行)」をご希望の方は、有料[当協会会員1000円、非会員2000円(消費税・送料込み)]にて頒布しておりますので、(1)必要部数、(2)送付先、(3)請求書宛名、(4)ご連絡先をEメールで genbai@jaif.or.jp へ、もしくはFAXで03-6812-7110へお送りください。

シリーズ「あなたに知ってもらいたい原賠制度」のコンテンツは、あなたの声を生かして作ってまいります。原子力損害の賠償についてあなたの疑問や関心をEメールで genbai@jaif.or.jp へお寄せ下さい。
■げんさんな人達(原産協会役・職員によるショートエッセイ)

SNS(Social Network System)考

 最近、SNSやtwitter、line等々の言葉を耳にすることも多いと思う。一昔前と違って、主婦層までもがfbやlineを活発に使いこなしている。

 一方、ここで話し合われている内容は頗る簡単な会話である。時に、「いいね!」とだけいった反応で、見てくれたという反応だけをを確認しているということもある。昨今、若者の間では、いや年配者も含め、「手軽に」「効率的」で、「面倒のない」会話が求められているのかも知れない。それで、どういうことになっているのか?

 Connected but Alone.

 とでも表現するとわかり易いのかも知れない。
 沢山の人と「繋がる」ことは可能になり、それで安心していることもあるだろう。確かに、手軽に沢山の知己を得るには便利なツールが増えている。

 しかし、彼らは何時その関係を深めるのであろうか?

 繋がっているけど、いつも忙しく連絡は取り合っているけど、なぜか、「孤独だ」という状態が米国でも広がっているそうだ。
 肝胆相照らす本当の「友情」というものは、これらの付き合いの中から本当に生まれてくるのか? 私には、疑問に思える。

 「大切なことは数ではなく、真の友情を育むことだ」

 オープンなSNSやtwitter、line等々の手段は大きな威力を発揮するが、ここで発言することは、よく考えてみると大通りで大声で叫んでいるに等しい。
 仲間に限定した会話も可能というが、元々集客と広告をビジネスモデルとするサイトにどれだけの信頼を置けるのか? 
 既に、様々なリスクが発生しつつつある。

 これらのソーシャル・システムが登場した時に、私はこの「威力」と「脅威」を同時に察知した。そして、考えた。

 この「威力」を活かし、効果的なコミュニティを作るには、リアルで信頼ある関係を構築することが先行せねばならない。この「脅威」を回避するためには、独自のクローズドなSNSサイトを自ら立ち上げるべきだと。


 リアルに信頼できる仲間をこのシステムに結集し、時間と空間を超えたコミュニケーションを可能にする、またバーチャルなSNS空間での会話に留まらず、リアルイベントでの意義ある交流を企図する。

 このことによって、初めて「信頼のネットワーク」が成立する。

 こういった環境の中では、「限られた仲間」と「長い時間」をかけて人間関係を熟成していくことが可能になる。人の書いたものに、「いいね!」といった単発的な反応だけ示すものではなく、丁寧にコメントを返して交流していく。

 ここには独特な「信頼関係」が醸成される。

 現在の風潮に棹差すものだが、いずれ今のSNS等もこういう姿に収斂して行くのではないかと考えている。

  このクローズドSNSサイトは、立ち上げて7年が経つが、メンバーは漸増し、現在250名を数える様になった。その中では、ビジネス・政治・経済・文化・社会、そしてリベラルアーツの領域まで様々な会話が交わされている。メンバーも大企業の役員や中堅管理職、中小企業主、弁護士・公認会計士・税理士・社労士・診断士等々多彩なメンバーが集まっている。

 何より大切なことは、大企業の幹部も若手社員も直ぐに並行目線で話す雰囲気が育っていることだ。

 発足当初から、会のモットーとして、「酒の下の平等」を掲げた。 会のビジョンは、「元気な日本を人から創る」だ。

 全ての基本は「人」である。しかし、誰でも判っている事が時に疎かにされている。

 原産協会の「人材育成ネットワーク」の構築にも、これまで蓄積したノウハウを、生かして行きたいと考えている。
                                                               (林da!


◎「原産協会メールマガジン」2013年11月号(2013.11.25発行)
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