令和7年 第五号 東芝ESS株式会社保正樹輝さんに聞く!令和7年 第五号 東芝ESS株式会社保正樹輝さんに聞く!
  • text: 石井敬之
  • 07 Nov 2025

省エネルギー研究から原子力の現場へ

保正さん:大学では機械科学・航空宇宙学科に在籍し、大学院では空調ヒートポンプの省エネルギーに関する研究を行いました。社会的にカーボンニュートラルへの関心が高まりつつあり、国の補助や企業との連携も盛んな分野で、スケールの大きい研究ができることに魅力を感じて選びました。

学生時代は学園祭の実行委員会に所属し、イベント企画や広報を担当。さらに、銀座の“回らない”寿司店でアルバイトをし、接客を通して人との関わりやチームで働くことの楽しさを学びました。こうした経験は、社会に出てからのコミュニケーション力や協調性の基礎になっています。

保正さん:東芝を選んだのは、大学時代に学んだ空調研究の知識を活かしながら、原子力発電事業にも携われる点に大きな魅力を感じたからです。特に現在所属する「原子力機械システム設計部」が、原子力発電所の空調設計を担当していたことが決め手になりました。入社前は「原子力業界は保守的で若手には責任ある仕事が任されにくい」と思っていましたが、実際には入社直後からプロジェクトの主担当として重要な役割を担うことができ、良い意味でのギャップを感じました。

再稼働現場で学んだ責任とやりがい

保正さん:現在は原子力発電所の火災防護設計を担当しています。火災の発生を未然に防ぐための設計だけでなく、発生した場合の影響評価解析、さらに機器製作や現地での据え付け試験など、プロジェクト全体をマネジメントしています。系統設計から現場工事まで幅広く関わることができる点に、大きなやりがいを感じています。

設計業務は非常に複雑で、多くの技術者が関わるため、調整の難しさを感じることも少なくありません。しかし、自分が考えた設計方針や解析結果が下流工程に反映され、現場で実際に形になっていく過程を見ると、技術者としての責任と誇りを強く実感します。

特に印象に残っているのは、女川原子力発電所の再稼働プロジェクトに約半年間現場常駐した経験です。火災感知器の設置作業では、設備との干渉や消防法との整合性など、さまざまな課題に直面しました。ひとつひとつ丁寧に確認を重ね、関係者と協議を重ねた結果、最終的に再稼働が実現した瞬間の達成感は忘れられません。

原子力の未来をつくる挑戦者として

保正さん:将来的には、日本の電源構成において原子力発電の比率を高め、エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立に貢献したいと考えています。そのために、既存プラントの再稼働支援や新設プラントの建設プロジェクトにおいて、プロジェクトリーダーとして中心的な役割を担えるよう努力を続けています。

就職活動を控える後輩たちには、ぜひインターンシップに積極的に参加してほしいと伝えたいです。私自身、コロナ禍でオンライン中心のインターンシップしか体験できませんでしたが、現在は対面型のプログラムも復活しています。実際に職場の雰囲気や社員の姿勢を体感することで、自分に合った会社を見極めることができるはずです。

原子力業界は、機械・電気・建築・化学など多様な分野の技術が融合する総合産業です。自分の専門だけにこだわらず、広い視野を持って挑戦すれば、必ずやりがいのある道が開けると信じています。

Contents 原子力をもっと知ろう!