

- text: 石井敬之
- 17 Oct 2025
エネルギーの未来を支える使命感で
福岡さん:私は福井県出身で、身近に原子力発電所がある環境で育ちました。ただ、大学・大学院では原子力ではなく化学工学を専攻し、化学的なアプローチからカーボンニュートラルやエネルギー循環を研究していました。特に、石炭の熱分解に伴う化学変化と資源の有効活用に取り組み、エネルギーの安定供給と環境負荷低減の両立を目指しました。
エネルギー業界を志したのは、日本の将来にとって「エネルギー供給を安定させること」が極めて重要だと感じたからです。再生可能エネルギーだけでなく、火力や原子力などの大規模発電プラントにも関わりたいという思いから、東芝を志望しました。
福岡さん:入社前は原子力業界に「お堅い」「ネガティブ」といったイメージを持っていましたが、実際に働いてみると、再稼働に向けて情熱を持ち、使命感を持って取り組む社員の姿に触れ、その印象は大きく変わりました。エネルギーの安定供給を通じて社会を支えるという強い意志を共有する仲間たちに出会えたことは、私の大きな財産です。
設計からマネジメントまで、現場を動かす
福岡さん:現在は、原子力発電所における非常用発電設備の機器系統設計を担当しています。停電時にも冷却設備などが確実に作動するよう、電源供給を支えるシステムを設計しています。また、設計業務だけでなく、他メーカーへの製造依頼や、工事会社への据え付け依頼など、プロジェクトマネジメントも行っています。
この仕事の難しさは、地震時にも安全に稼働することを保証するための精密な解析や計算が求められる点です。顧客の要望に応じて、安全性とコスト、スケジュールのすべてを両立させる必要があります。しかし、こうした課題を乗り越え、顧客の望む通りのプラントを完成させたときの達成感は格別です。自分の設計が実際の発電所という巨大なシステムの一部として機能する――その責任感とやりがいを日々感じています。
入社前は原子力との直接的な関わりがなかった私ですが、業界内の人々の熱意に触れ、今では自分自身もその一員として、原子力の安全性向上と社会的信頼の回復に貢献したいと強く感じています。日本の電力安定供給やカーボンニュートラル実現のために、原子力は欠かせない存在です。その一翼を担うことが、私の使命だと考えています。
多様な経験を自分の力に
福岡さん:学生時代は合唱サークルに所属し、文化系の活動を行っていました。音楽を通じて仲間と協調しながら一つの作品を作り上げる経験は、チームでの仕事にも通じています。また、大学寮では副寮長を務め、数百人規模の寮生の管理や連絡、クレーム対応などに携わりました。人の意見を聞き、最適な解決策を探る過程で、リーダーシップや対話力を培うことができました。
学生のみなさんへのアドバイスとして伝えたいことは、「専攻分野にとらわれず、幅広く学ぶことの大切さ」です。私は化学工学出身ですが、現在は機械系の業務を担当しています。大学時代に学んだ知識や論理的な考え方が、今の仕事にさまざまな形で活きています。
東芝の入社面談の際、担当マネジャーが偶然同じ大学の出身で、異なる分野から原子力業界に入ることの面白さについて語り合ったことを覚えています。原子力業界は機械・電気・化学・建築など多様な専門分野の人々が協力して成り立つ総合技術の世界です。今後は、再稼働や新設プロジェクトでリーダーシップを発揮し、日本のエネルギー課題の解決に貢献していきたいと考えています。