[JAIF] 躍進するアジアの原子力

インド共和国

2010年1月27日現在

目次

X.原子力関係法規の整備状況

1.主要な原子力関係法

  1. 1962年原子力法が、インドの原子力に関連した諸活動に関する基本法であり、頂点には原子力委員会(AEC)がある(図表8参照)。この下に、原子力規制委員会(AERB)と原子力省(DAE)が、以下のように多くの規則・規格類等を制定している。
    • 放射線防護規則1971年
    • 原子力(仲裁手続き)規則1983年
    • 原子力(鉱山作業、鉱物、所定物資の取扱)規則1984年
    • 原子力(放射性廃棄物の安全処分)規則1987年
    • 原子力(工場)規則1996年
    • 原子力(食品照射管理)規則1996年
  2. 2009年11月、内閣は原子力損害賠償法案を承認。近く議会に上程される予定となっている。

2. 原子力法に基づく安全規制

  1. 1962年原子力法に規定された安全・規制機能を担うAERBが、1983年11月に設置された。
  2. AERBは、インドにおける放射線安全のための規制を担当するが、DAE傘下の施設での産業安全規制や、環境保護法に基づく一部の規制も委任されている。
    *AERBの発足以前は、DAEの安全審査委員会(DAE-SRC)がこれらの機能を果たしていた。
  3. AERBは、原子力施設が公衆および従業員に放射線リスクを及ぼさないように、サイト許可、建設、試運転、運転、デコミショニング等の許認可で、段階ごとに詳細なレビューを行う。
    申請者は、各段階で安全原則の考え方、安全解析の結果、用いた基準・規準類の妥当性、さらに施設が公衆や従業員に不当なリスクを与えないことを実証する品質保証計画等、すべての関係情報のAERBへの提出を求められる。
  4. 原子力規制委員会(AERB)は、三層の安全審査システムをもっている。
    (第一層)サイト評価委員会、プロジェクト設計委員会、土木工学安全委員会、テーマ別安全委員会(専門家グループ)
    (第二層)AERBは、プロジェクト安全審査諮問委員会(SARCOP)の助言に基づいて許認可を発給する。
    (第三層)AERB
    AERBの介入としては、定期的安全審査(10年ごとの詳細審査と、5年ごとの簡易審査)がある(X-1)
    また事業者に、法定検査(6ヶ月ごと)、保健物理報告書(3ヶ月ごと)、重要事象報告書、経年劣化管理、安全設備改良による安全向上努力を要求する。
    プラント操業中の安全評価は、SARCOPが行う。運転は一定の限定期間だけ許可され、それを超える期間については、さらに許可が必要である。申請者が遵守しなければならない条件を付して許可されることもある。
  5. AERBはまた、すべての原子力施設に対して緊急時対応計画策定と所要の組織化を義務付けている。

3.原子力法の改正の必要性(I-3)(I-7)

原子力法の課題を、2008年11月時点でジャインNPCIL総裁は以下のように指摘した。

  • 現行のインド原子力法は、政府所有のNPCILとBHAVINIのみに原子力発電所の建設を認めている。
  • 民間企業の原発所有は、NPCILとの少数持ち株によって始めることができるが、原子力法を改正して民間企業の原子力発電事業への参入を促す動きもある。
  • 原子力法の改正が必要である。その手続きには少なくとも2〜2.5年はかかるが、その間はNPCILが着実に原子力発電開発を進めていく。
  • 民生用原子力利用損害賠償法が政府によって採択される予定である。
  • 品質基準、核燃料サイクル、また廃炉の責任を規定する規制枠組みを整備すべき。
    また、今後は軽水炉の安全性に関するスタンダードの開発を急ぐ必要があるとの認識をAERBのシャルマ委員長が示している(X-1)
<注記>

(I-3) 出典:2009年2月(社)日本原子力産業協会刊「インドの原子力事情:INSAC-2008(第19回インド原子力学会年会)参加原産協会訪印団報告書」
(I-7) 出典:インド中央電力庁(Central Electricity Authority:CEA)のHP
http://cea.nic.in/ また
http://cea.nic.in/power_sec_reports/Executive_Summary/2009_08/1-2.pdf
(X-1) 出典:「INSAC-2008」でのAERBのS.K.Sharma委員長の発表「Role of AERB in the Emerging Nuclear Power Scenario in India」

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