チェコ:改定版エネルギー戦略で原子力の増強を明示

2015年5月22日

 チェコの産業貿易省は5月19日、長期にわたった議論の末に改定した国家エネルギー戦略を承認した。2040年までに原子力の発電シェアを現在のレベル(2014年実績で35.8%)から6割近くまで上昇させるなど、国家的なエネルギー供給保証の実現には再生可能エネルギーとともに原子力開発の増強が重要な役割を果たすとの見解を表明した。しかし、テメリン原子力発電所増設計画を進めていたチェコ電力(CEZ)は2014年4月、完成原子炉からの電力に固定価格での買い取り保証は与えられないとする政府見解を受けて同計画を中止。同国政府は国家予算をリスクにさらすことなく原子力設備を増強する方策を模索していく考えとみられている。

 産業貿易省のJ.ムラーデク大臣によると、改定版エネルギー戦略(ASEK)では国民や国家経済が必要とする安全で信頼性が高く環境にも優しいエネルギーの供給保証を目的としており、例え不測の事態が生じた場合でも盤石なエネルギーが供給されることを目指した内容。2004年版の古いエネルギー戦略は2012年11月に一旦改定したものの、エネルギー部門や欧州経済で発生した様々な出来事を多くの点で反映されなくなっていた。特に、欧州連合が打ち出した目標の中でも地球温暖化対策やエネルギー政策に関するものを満たすには、新たな改定が必要だったと説明した。

 こうした目標を達成するためのメカニズムとして、ASEKはエネルギー源のさらなる多様化と電熱供給の完全自給が重要だとしており、チェコにおいては原子力発電の拡大によってのみ、達成が可能だと指摘。2040年におけるバランスの取れたエネルギー・ミックスとして、総発電量に占める原子力シェアを46~58%、再生可能エネルギーは18~25%、天然ガスは5~15%とする一方、現在の主力エネルギー源である石炭は11~21%とする目標を提示している。