将来の科学者のためのJoshikaiⅡ(第1回):科学・工学に関する国際メンタリングワークショップを開催

2018年8月23日

 8月8日と9日の両日、「将来の科学者のためのJoshikaiⅡ:科学・工学に関する国際メンタリングワークショップ(以下、「JoshikaiⅡ」)」が日本科学未来館で開催された。全国の12校から51名の女子中高生が参加し、国内外の著名な女性研究者らと共に議論し、実験などに取り組んだ。原産新聞では、このワークショップを2回に分けて紹介する。

 世界的に科学・工学分野での女性の参画が促される中、我が国においては理系分野に進む女性の割合が他国に比べて少ないことが課題となっている。そのため、日本原子力研究開発機構(JAEA)は、この分野で女性が大きな役割を果たす可能性に鑑み、科学・工学に関心を持つ女子中高生が自分の選択に夢と自信を持ち、各々が将来像を描けるよう、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)との共催で「JoshikaiⅡ」を開催した。第2回目となる今回は、参加対象を中学生にも広げ、さらに親や学校の教員のためのセッションがプログラムに組まれた。

(第1回:初日)

開会セッション

主催者からの挨拶

JAEA・児玉敏雄理事長

 JAEAの児玉敏雄理事長は「男女共同参画の重要性が認識される今、理系分野においても女性が大きな役割を果たすことが重要」と述べ、昨年の「Joshikai」では国内外で活躍する女性研究者と触れ合うことで、参加した女子高校生の理系分野への取り組みが大きく変わったと聞いている」とし、参加対象を中学生に広げた今回の「JoshikaiⅡ」においても「視野を広げてほしい」と期待の言葉を綴った。

OECD/NEA・ウィリアム・マグウッド事務局長

 続いて、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)のウィリアム・マグウッド事務局長は「女性は新たな視点をもたらす。そういった意味でも原子力産業においてもっと女性の参画を期待している」と述べた。そこで参加する女子中高生に、「夢を追い、自信を持って、自分の好きな仕事の道を進めることを支援するために世界から理系分野で活躍する先輩たちは、ここに集まりましたこの「JoshikaiⅡ」の機会を活かしてもらいたい」と促した。

 来賓として出席した男女共同参画を担当する内閣府 大臣政務官 山下雄平氏ならびに文部科学省 大臣政務官 新妻秀規氏が挨拶の言葉を述べた。その中で、現状、理工系の職業につく女性が少ないことの背景に、育児、介護などのライフイベントとの両立が立ちはだかることや、女子中高生への理科系の啓発が進んでいないなどの課題を挙げた。こうした背景の中で、「科学技術分野で我が国がトップランナーを目指すには、若い人、シニア、女性、男性など多様な人が多様な研究をすることが重要」と述べた。夢を諦めなくてもいい社会を政府として実現させたいという思いを込め、原子力分野をはじめ理系分野を選ぶ学生らにエールを送った。

京都大学大学院・浅井歩准教授

 基調講演では京都大学大学院 理学研究科附属天文台 浅井歩准教授が「The way to the sun and the space」というテーマで登壇した。京都に生まれ、剣道に没頭。中学高校時代から物理や化学、数学が好きだったという根っからの理系だったという。現在に至る太陽物理を専攻したのは、京都大学に入学した後だったことなど、これまでの経緯を紹介した。ただし、研究の成果は挙げる機会に恵まれたものの、研究のためには結婚した後もなかなか家族で生活することができなかったことも明かした。その後に続いたプレゼンテーションで語られた太陽での爆発とガス放出が宇宙や地球上で生活する私たちに与える影響などの浅井准教授の話に、会場の生徒たちは熱心に耳を傾けた。浅井准教授は「人生にはたくさんの選択肢があり、その中から自分が本当に進みたい道を選ぶことに自信を持ってください。」と学生たちを勇気付けた。

エジンバラ大学・ケイト・マクフィー教授

 続いて、オーストラリアで生まれ、現在は英国のエジンバラ大学で物理学を教えるケイト・マクフィー教授が「キャリアの選択」について自身の経験をもとに話をした。現在は、タンパク質の構造と働きを研究し、アルツハイマーやパーキンンソン病発症プロセス解明に取り組んでいる。実に、華々しい理系のキャリアを積んでいるが、もともとは物理を選択していたわけではなく大学ではクラリネット奏者を目指し、音楽を専攻。のちに「自分は不向きなのでは」と思い、科学を選んだ。ただただ、自身の好奇心に向き合い、選びたい道を選んできた。科学においても生物学から法則性を見出せる物理へとシフトしたという。こうしたキャリアを重ねる過程で、結婚し2人の子供を授かったマクフィー教授によれば、女性の物理学者の68%は物理学者と結婚しており、自身もその1人だという。学者同士が結婚すると、同じ職場で2人の職を見つけることは困難とされ、女性の方が大変だという。そのため、結婚までの2年間は遠距離で、互いにケンブリッジとエジンバラを往復していたが、マクフィー教授の妊娠をきっかけにエジンバラ大学に移り住み、夫が家事を分担する環境の中で研究を続けることができたという。音楽、生物化学、物理と専門を変えてきたマクフィー教授は、「キャリアは空港の動く歩道のようにまっすぐではない。自分が何をやりたいのかわからなくてもいい。自分で選ぶことと自信を持つことが大事」と強調した。

 開会式の締めくくりには、著名な科学者でありマリー・キュリーの孫娘にあたるエレーヌ・ランジュバン=ジョリオ博士からのビデオメッセージが紹介された。ジョリオ博士は両親ともに科学者という家庭で育っているため、科学の道を選ぶのはごく自然のことだった。しかし、ジョリオ博士が中学生だった時にナチスドイツによる占領が始まり、女性の役割を制限する倫理教育を受けることになる。ここで、女性も男性も同じようにキャリアを積むべきだと反発したが、母から「女性は自分たちの存在感を高めるためにもっと自信を身につけるよう努力をすべき」と言われたという。女性を起用したことで物事がうまく進むこともあるが、女性が社会で活躍しやすい状況とは言い切れないなか、ジュリオ博士は日本の若い女性たちの中には家庭とキャリアを両立させることが大事だと考える人が圧倒的ではないかと述べている。「人生の大切な一部となる家庭を持つ自由を取り上げたらうまくいくはずがない」、「望まない男性もいるかもしれないが、女性だけの問題として終わらせず、存在する問題にともに対峙していくことが大事」だとし、そのためには社会からの支援が必要であると締めくくった。

 午後は、機器を使っての科学実験の実習体験(=写真下)や、各国から参加した女性研究者らによるパネルディスカッションが行われた。  (続く)