日本原子力産業協会 今井会長 年頭所感

新年明けましておめでとうございます。日本原子力産業協会会長の今井でございます。
新型コロナウイルスの影響により、昨年の「新年の集い」は開催を見送らざるを得ませんでしたが、今年はこのような形で開催することが出来、大変嬉しく思っております。

さて、年頭にあたり、原子力について考えていることを申し上げます。昨年、COP26が開催されました。地球温暖化への対応は、今や最優先の国際課題となっており、先進国を中心に、温室効果ガスの排出削減に向けた取り組みが活発化しています。
一方、中国、インドなどは、発展途上国という立場を強調し、カーボンニュートラルの達成時期について、10年、20年、後ろ倒しすることを明言しております。こうして安価な石炭の使用を続けますと、温室効果ガスの削減が停滞するだけではなく、産業界においてコスト的に高い先進国が競争出来ない事態になる恐れがあります。市場経済は同じ条件でなければならないので、この点についてはこれからよく議論しないといけないと思っております。
地球温暖化を抑制することは大変重要でありますが、一方、我が国経済が持続的に発展していくためには、経済性や供給安定性なども踏まえ、現実に立った視点でエネルギー政策を立案することが必要不可欠です。資源に乏しい日本において、脱炭素社会の実現と、経済発展を両立させるためには、クリーンで、且つ、発電コストが安定している原子力を最大限に活用することが最も合理的な手段であります。

一方、我が国のエネルギー政策に目を向けますと、原子力の活用方針は依然として不明確なままであります。
昨年、政府主導のもと、2030年度における温室効果ガスの排出削減目標が大幅に改定されました。これまで、2013年度比で26%の削減となっていた目標値が一気に46%まで引き上げられたわけであります。
昨年10月に閣議決定されました「第6次エネルギー基本計画」も、こうした極めてハードルの高い数字が起点となって策定されたため、計画達成に向けたシナリオは非常に厳しいものとなっております。特に、電力の使用面では、産業も家庭も20%程度削減しないといけないということが書かれており、また供給面においては、再生可能エネルギーを最大限に拡大することが示されています。
しかしながら、我が国は山林が多いため利用できる平地には制約があり、また風力発電に適した浅い海域も少ないため、再生可能エネルギーを増産する余地は限られています。
こうした実態を踏まえますと、温室効果ガスを排出せず、安定した電力供給源となる原子力発電の重要性は益々高まるばかりであります。欧州においても、電力の安定供給と脱炭素社会の実現を目指す観点から、原子力を活用する動きが ドイツとオーストリアを除き活発になっているところであります。しかし、我が国の「第6次エネルギー基本計画」において、原子力は「原発依存度の可能な限りの低減」が基本方針となっており、新増設・リプレースへの言及もございません。
日本のエネルギー政策において、 原子力の正当な価値が認められ、将来にわたる活用が明示されるよう、当協会といたしましては、引き続き国民や関係機関に強く訴え働きかけて参りたいと思います。

また、原子力を有効利用していくためには、核燃料サイクルの早期確立や、高レベル放射性廃棄物の処分事業を着実に進展させることが非常に大事です。経済産業省がプルサーマル発電に新たに同意した自治体へ来年度より交付金を出す制度を設けるようですが、プルトニウムの有効活用は極めて重要な取り組みであります。プルトニウムは再生エネルギーであり、プルトニウムを使用済燃料から取り出すことにより廃棄物を処理しやすくし、プルトニウムを一般の燃料に混ぜてプルサーマル発電を行います。余剰プルトニウムを持つということは各国から注目されており問題になります。したがって、今プルサーマル発電を行っているのは4基ですが、出来るだけ多くの炉でプルサーマルを利用することを電力各社にはお願いしたいと思います。

また、先進的な技術開発によって、原子力を将来世代の有用な選択肢の一つとして位置付けていくことも大変重要な視点であります。直近では、米国が政府や私的な資金を利用して高速炉の建設の検討を進めているそうですが、もんじゅの経験がある日本の技術を利用したいといった報道も出ております。次世代革新炉や、小型モジュール炉などの技術開発については、先延ばしするのではなく、国際連携のもと、産・官・学の総力を結集いただきたいと思います。
こうしたプロジェクトには、優れた人材を惹きつける魅力もあります。原子力イノベーションを通じた人材の確保・育成についても、産業界が連携して取り組むことを期待しております。

最後となりますが、当協会といたしましては、会員の皆様、会場にお越しの皆様のご支援を頂戴しながら、原子力業界全体の発展に資する取り組みを、今後とも積極的に展開して参ります。
「福島における廃炉の推進と福島全体の復興への支援」をはじめとして、「地域や国民に原子力の重要性を訴える」「産業の活性化に向けて人材の確保・育成に努力する」「国際関係活動を促進する」、これらの取り組みに、今まで以上に最大限努力することをお約束申し上げ、新年のご挨拶とさせて頂きます。皆さまよろしくお願いいたします。ご清聴ありがとうございました。

以 上

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