セレス 電中研の実験や分析のサポート業務で原子力安全向上に貢献

2017年8月9日

特集のロゴ(仮) 株式会社セレスは、電気事業に関係する土木や環境分野の試験や化学分析等など、主に電力中央研究所(電中研)の協力会社として研究のサポートやコンサルタント業務などを行っている。様々な実験や調査を通じて取得した科学的かつ技術的な裏付けとなるデータを活用し、原子力安全を支える同社の4人に話を聞いた。

(写真左→右)
月山清 取締役/技術士(原子力・放射線部門)
黒澤健哉 技術本部 バックエンド部長
並木正明 執行役員・技術本部長
森敦史 技術本部 地圏・構造部長

<電中研のサポート業務を中心として環境やエネルギーの課題を解決>
 セレスは2003年、使用済み燃料輸送容器信頼性実証試験等を行っていた「シー・アール・エス」(1977年設立)と、生物環境調査等を行っていた「環境リサーチ」(1983年設立)の2社合併によって設立した。さらに2015年から2016年にかけて協力会社の「ユウワビジネス」から食堂や警備などの事業を譲受している。2017年7月現在、事業本部の構成は、我孫子事業室(千葉)のほか、狛江(東京)、横須賀(神奈川)、赤城(群馬)に事業室がある。
 セレスでは、技術本部が中心となって発電所を取り巻く環境の調査や分析、施設健全性評価のための実験などを主な業務としている。電中研が行う調査や実験のサポート業務が多いが、直接電力会社やゼネコン、官公庁などからも請け負っている。環境やエネルギー問題を解決するための技術開発に携わっていくことで、持続可能な社会を実現していきたいと考えている。

<津波や地震なども想定した実験や調査を通じ原子力安全に寄与>
 電力土木分野では、電力施設の立地や維持管理のための調査や解析を行っている。造波実験や水理模型実験では、電中研が保有する大型造波水路で津波を含めた大小の波を起こしたり流木の模型を流したり、取得したデータを実際の設計に活かして原子力発電所などの港湾の安全対策に貢献している。振動実験では、最大60トンまでの搭載が可能な振動台を使って地震と同様の波形で加振し、原子力発電所の構造物や機材の耐震性を評価している。流速計校正試験では、狛江にある流速計の検定水路で発電水力流量調査や河川流量調査などで使用する流速計の検定を年間2,000台くらい行い、各種成績書を発行している。
 さらに、発電所施設の健全性評価支援では、現地に赴いての地表地震断層調査、現地で採取した地下水やボーリングした岩石などの断層破砕帯試料の分析、セメントやベントナイトなどバリア性能を持つ緩衝材等の物性試験を実施している。実規模構造物の健全性実証試験では、実験施設で高さ9mに吊り上げた重量約100トンの大型輸送容器を落下させ、損傷や漏洩の有無を確認している。水路構造物の載荷試験では、発電所内での構造物模型などに様々な方向から荷重をかけて破損の進行具合やひずみを計測している。これらの実験から取得したデータをもとに各種評価方法の指標を作っていき、原子力発電所内構造物の検討や、放射性物質の輸送や貯蔵および処分時の長期安定性の確認に役立ててもらう。
 環境・景観分野では、動植物の調査や河川調査などを行っており、原子力発電所の立地計画時やバックエンドの環境アセスメントなども手掛けている。そのほか、環境計量証明などの化学分析や森林保全など研究所の環境整備などの業務も行っている。

<より厳しくなった原子力安全要求にも対応>

津波・氾濫流水路(写真提供:電力中央研究所)

 福島第一原子力発電所事故後には、原子力安全に対する要求がより厳しくなり、これに対応してさらに高性能な実験を行える体制を整えている。津波や河川等の氾濫に備えた実験では、これまで100分の1から50分の1程度の縮尺で行ってきたが、さらに大きな津波に備え、数分の1程度のスケールでバルブやゲートを連続的に制御しながら多様な津波の流れを再現できる津波・氾濫流水路を2014年に電中研が完成させた。
 近年では、特にケーブルの難燃性などがクローズアップされてきており、火災試験も多く行っている。この数年は原子力規制庁担当官向けの火災研修を受託した。実際の消火訓練では、消火器を使ったりスプリンクラーを作動させたりし、消火時にはどのように火が消えていくか体験してもらい、各地のオフサイトセンター等で成果が活かされている。訓練の設定や実験の計画などは主に原子力規制庁が行うが、具体的な実施段階ではこれまでのノウハウを活かし、弊社からも提案しながら一緒に進めている。
 さらに、我孫子市からの依頼で食品の放射能検査も行っており、市民が自宅の庭で育てた野菜などを弊社に持ち込んで計測することもできる。

<原子力安全を引き継いでいく次世代へも期待>
 実験では大型で重量のある装置を扱うことも多いため、弊社内でも念を入れて安全教育を行っている。特に最近では事前に関係者が集まって安全打ち合わせを行うことを徹底しており、想定外に起こることを極力想定し、手を打てるところはカバーして臨むようにしている。弊社が積み上げてきた原子力安全に資する業績とともに、こうした社内の取り組みも次の世代へとしっかり引き継いでいきたい。
 特にバックエンド分野に関しては、現存する原子力発電所だけを対象としても今後も長く続いていく課題だ。福島第一原子力発電所の廃炉や保守などについて適切に評価していくことも必要となるため、人材育成の重要性を実感している。原産協会の学生向け合同企業説明会「原産セミナー」にも昨年度は弊社ブースを出展し、採用に至った実績があり、今後も優秀な人材を積極的に採用していきたい。