IEA「世界重要鉱物見通し2026」からみる原子力サプライチェーン -転換・濃縮の制約と供給集中-

国際エネルギー機関(IEA)は2026年7月16日、年次報告書「世界重要鉱物見通し2026(Global Critical Minerals Outlook 2026)」を公表しました。

同報告書は、銅、リチウム、ニッケル、コバルト、黒鉛、希土類(レアアース)など主要なエネルギー鉱物について、足元の需給や投資、技術動向を分析するとともに、中長期の需給を展望し、地政学的な緊張や輸出規制が強まるなかでの供給集中リスクと、サプライチェーンの強靱化・多様化に向けた課題を評価したものです。

IEAは、原子力発電の再拡大によってウランと原子燃料の需要が増える一方、採掘から転換、濃縮、燃料製造に至る各工程の供給能力と集中構造が、供給保証上の課題になると分析しています。 なかでも、採掘では新たな鉱山開発が必要となり、転換能力には供給途絶や需要変動を吸収する余裕がほとんどなく、濃縮も今後の需要増に能力増強が追いつかなければ、供給上の制約になり得るとしています。 以下、同報告書第2章の最終セクション「原子力サプライチェーン」について、主なポイントを図表とともに紹介します。

主なポイント

  • 世界の原子力発電設備容量は2025年に約4億2,000万kWに達し、建設中の設備容量は約7,800万kWと過去30年で最高水準です。IEAの公表政策シナリオ(STEPS)[1]では、2050年までに原子力発電設備容量は約8億kW近くへ拡大し、発電電力量は倍増するとしています。
  • ウラン精鉱の短期取引価格(スポット価格)は、U₃O₈含有量1kg当たり、2020年頃の約60米ドルから2024年初めには220米ドル超まで上昇しました。その後、価格は下落に転じたものの、2026年には190米ドル前後の水準で推移しています。
  • ウランの採掘段階では既に需給が逼迫しており、既存の生産能力と計画中の案件だけでは、今後10年に必要量と供給可能量の差が広がる見通しです。
  • ウラン採掘後の転換能力も逼迫しており、供給途絶や需要変動を吸収する余力がほとんどありません。
  • 濃縮工程では、現時点の能力は需要を満たしているものの、今後の需要増に能力増強が追いつかなければ、濃縮能力が需要に追いつかなくなる可能性があります。
  • 小型モジュール炉(SMR)などが利用するLEU+(濃縮度5~8%)や高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)(濃縮度~20%)は、従来のLEUに比べ、燃料1トンの製造に必要な天然ウランの投入量・濃縮作業量が、濃縮度に応じて大幅に増えます。
  • HALEUの商業生産プロジェクトの多くは2030年代初頭まで十分な供給量を確保できないとみられ、商業規模の供給が本格化する時期とSMRの導入時期のずれも懸念されています。
  • 採掘、転換、濃縮は、上位3か国がウラン採掘では約4分の3、転換・濃縮能力ではそれぞれ約70%を占めています。特に転換・濃縮では、主要供給国の供給能力を利用できないケースを想定したIEAの試算から、他の供給元による代替余力の乏しさが示されています。
  • 二次供給(過去の在庫や再処理、解体核ウランなど)が世界のウラン需要に占める割合は、かつての4分の1超から近年は約10分の1へ低下しており、採掘による一次供給への依存が高まっています。
  • 原子力発電のサプライチェーンはウランだけでなく、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウムなど、供給国が集中し代替が難しい特殊鉱物にも依存しています。

原子力の再拡大がウラン需要を押し上げる

世界の原子力発電設備容量は、2000年代初頭の約3億9,000万kWから2025年には約4億2,000万kWへ増加しました。 現在建設中の設備容量は約7,800万kWと、過去30年で最も高い水準です。 近年の拡大を主に牽引してきたのは中国で、2015年以降に約3,500万kWを追加し、2025年の設備容量は約6,500万kWに達しました。 インド、韓国、トルコ、英国でも原子力発電の拡大に向けた動きが続いています。

STEPSによる想定では、世界の原子力発電設備容量は2050年までに約8億kW近くへ拡大し、発電電力量は2025年の約2倍となり、原子力シェアは約10%を維持する見通しです。 中国は2030年代初頭に世界最大の原子力発電国となり、2050年までの世界の原子力発電設備容量増加分の約3分の1を占めると予測されています。

この拡大に伴い、年間のウラン需要は、現在の天然ウラン換算約7万トン(7万tU)から増加する見通しです。 2050年までの需要増加分の約40%を中国が、約20%を新規の原子力開発計画が進むインド、中東、アフリカなどが占めるとみられています。

原子力発電の拡大に伴うウラン需要の増加見通しに加え、電力会社による長期契約の活発化や二次供給の減少を背景に、ウランの需給が逼迫しています。 ウラン精鉱の短期取引価格(スポット価格)は、U₃O₈含有量1kg当たり、2020年頃の約60米ドルから2024年初めには220米ドル超まで上昇しました。 その後はやや低下したものの、2026年には190米ドル前後の水準で推移しています。

図1 原子力発電設備容量の拡大とウラン価格の上昇

左側は世界の原子力発電設備容量が2025年の約4.2億kWから2050年の約8億kWへ拡大するSTEPSの見通しと、2025年時点で建設中の約7,800万kWを示す。右側は2019~2026年のウラン長期契約価格とスポット価格の推移を示し、スポット価格は2024年に1kg当たり約221米ドルでピークとなっている。
建設中容量は設備容量の推移に加算した値ではない。価格はU₃O₈の酸化物含有量1kg当たり。容量はグロス値。IEA. CC BY 4.0.

ウラン転換能力は、供給途絶や需要変動への対応余地わずか

燃料サイクルの前段にあたる採掘・転換・濃縮は、いずれも供給の余裕が乏しくなっていますが、逼迫の度合いと時間軸は工程ごとに異なります。まず、この3工程の状況を一覧で示します。

表1 燃料サイクル前段(採掘・転換・濃縮)の状況一覧

工程現状の供給余力時間軸・見通し価格シグナル
採掘需給が逼迫(資源量自体は概ね十分)既存能力・計画案件だけでは今後10年で需給ギャップが拡大スポット価格が2024年初めにピーク
転換予備能力がほとんどなく、最も切迫新規・増強計画は効果発現に時間転換価格が年間で約30%上昇(過去最高)
濃縮当面(2025年)は需要を満たす中期的に能力増強が追いつかなければボトルネック化スポット10%超・長期6%超上昇(対2024年比)

まず、転換工程の前段にあたる採掘では、資源量そのものよりも、必要な時期に必要量を供給できるかが課題です。現在確認されているウラン資源量は、予測される原子力発電の拡大を支えるうえで概ね十分と評価されていますが、IEAは、長期的な供給リスクは物理的な資源量よりも、投資とプロジェクト開発の速度に左右されると指摘しています。

実際、既存の生産能力と計画中の案件だけでは、今後10年に必要量と供給可能量の差が広がると見込まれています。鉱山の開発には通常10~15年を要し、規制対応の厳格化、投入コストの上昇、操業の複雑化などの要因が新規開発の立ち上げを難しくしています。

また、採掘したウランの供給は地政学的なリスクにも左右されます。以前はEU需要の約23%に相当するウランを供給していたニジェールでは、地政学的混乱に伴い約1,000トンの生産が失われました[2]。IEAは本報告書で、こうした供給リスクを踏まえ、休止鉱山の再操業や既存鉱山の拡張に加え、新規鉱山の開発を加速する必要があると指摘しています。

採掘したウラン精鉱を濃縮用の六フッ化ウラン(UF6)にする転換工程は、IEAが燃料サイクルの中で最も早く供給の滞りが顕在化しかねないとみる工程です。世界の転換能力は年間6万2,000tUで、供給途絶や需要の変動を吸収する予備能力がほとんどありません。

転換能力の逼迫は価格にも表れています。転換価格は過去最高を記録し、年間で約30%上昇しました。IEAは、貿易の流れの変化と需要増の見通しが価格上昇の背景にあると分析しています。

今後の需要増に対応するには、転換能力の大幅な拡張が必要です。カナダ、フランス、英国、米国では新規計画や能力拡張が進められていますが、最近稼働した施設も増産途上にあり、新規計画も開発に時間を要するため、十分な供給増につながるまでには時間がかかります。長期契約や商業在庫は短期的な供給途絶を和らげますが、転換施設の処理能力そのものを増やすものではありません。

一方、転換に続く濃縮工程の世界の設備能力は、2025年時点では需要を満たしており、IEAは短期的には十分と評価しています。ただし、中期的には、今後の需要増に能力増強が追いつかなければ、濃縮工程がボトルネックとなる可能性があります。現在の濃縮需要は年間約4,900万SWU(分離作業単位)です。新規施設のリードタイムは長く、2030年より前に大規模な新設商業施設の稼働は見込まれていません。濃縮の短期取引価格(スポット価格)と長期契約価格は、2024年に比べそれぞれ10%超、6%超上昇しました。

濃縮能力の増強に向け、米国ではエネルギー省(DOE)が国内事業に27億米ドルを拠出しています。欧州では2028年に、ウレンコ社がオランダのアルメロ工場で約75万SWU、オラノ社がフランスのジョルジュ・ベスII工場で約250万SWUを増強する計画です。

ただし、欧州の濃縮需給には域外との取引が組み込まれています。欧州は、域内向けにロシアから濃縮ウランを輸入する一方、域内で濃縮したウランを日本、韓国、米国などへ輸出しています。欧州で計画中の増強は、同地域の需給バランスを維持することが主眼です。報告書では、ロシアからの輸入をはじめとする既存の域外供給が減少すれば、増強後も十分な対応余力を確保できない可能性があると分析しています。

次世代炉の展開 — フロントエンドに新たな負荷

大型炉が新設の中心である状況は続きますが、SMRの開発も広がっています。中国では、陸上SMRが既に運転しており、これとは別に電気出力12.5万kWの商業用SMRが建設中です[3]。ロシアでは、浮体式SMRが運転しているほか、電気出力30万kWのSMRが建設中です[4]。STEPSでは、SMRの設備容量は2030年代初頭から増え始め、2050年には約4,000万kW、世界の原子力発電設備容量の約5%に達します。

現在、PWRとBWRを中心とする軽水炉は、世界の原子力発電設備容量の約9割を占めています。軽水炉燃料には、ウラン235の濃縮度2~5%の低濃縮ウラン(LEU)が使用されています。これに対し、開発中のSMRや先進炉の多くは、濃縮度5~8%のLEU+、または8~20%の高アッセイ低濃縮ウラン(HALEU)の使用を想定した設計です。濃縮度を高めることで、燃料の燃焼度を高め、運転サイクルを長くできる一方、必要となる天然ウランと濃縮作業量は増加します。HALEU燃料はLEUに比べ、濃縮度に応じて、燃料1トン当たりのウラン投入量が最大4倍、濃縮作業量が最大5倍となる可能性があります。

図2 HALEU燃料のフロントエンドへの負荷(LEU比)

HALEU燃料は、LEU(=1)と比べ、燃料1トン当たりの天然ウラン投入量が最大4倍、濃縮作業量(SWU)が最大5倍となり得ることを、実寸比の横棒で対比している。
濃縮度が高いほど負荷は増える。倍率は濃縮度などの条件により変化し、いずれも燃料1トン当たりの最大値。IEA. CC BY 4.0.

商業規模のHALEU供給は現在、ロシアと中国の事業者が高濃縮ウランなどを希釈して製造するものに限られます。両国以外で、HALEUを実際に供給している稼働中のパイロット規模の濃縮カスケードは、米セントラス・エナジー社のオハイオ州パイクトン施設だけです[5]。2023年末から2025年半ばまでの累積供給量は1トン未満で、同社は年間約12トンへの拡張を目指しています。

米国のHALEU供給プログラムでは、連邦政府の在庫が2026年半ばに約21トンへ達する見込みで、このうち約15トンが、商業規模の供給が立ち上がるまでの間、米国内の先進炉・燃料開発プロジェクトに割り当て可能とみられています[6]。米欧では複数のHALEU関連プロジェクトが進められているものの、その多くは2030年代初頭より前に本格的な供給量を確保できない見通しです。IEAは、先行する次世代炉プロジェクトを支える暫定供給の重要性を指摘するとともに、HALEUの供給時期とSMRの導入時期との間にギャップが生じる可能性を示しています。

原子燃料の安定供給、少数国・企業への集中が課題

原子燃料サイクルでは、工程ごとに異なる形で供給が少数の国・企業へ集中しています。採掘ではカナダ、カザフスタン、ナミビアの3か国が世界の生産量の約70%を占め、所有者ベースでは6社が世界供給の88%を管理しています。 転換と濃縮でも、施設所在地別にみると、それぞれの工程で上位3カ国が世界の設備容量の約7割を占めています。一方、燃料製造では、上位3地域のシェアは47%で、採掘、転換、濃縮に比べて地理的な集中度は低くなっています。

図3 原子燃料サイクルの工程別にみた供給国・所有者の集中(2025年)

2025年の採掘、転換、濃縮、燃料製造について、施設所在地別と所有者国籍別の構成比を積み上げ棒で比較する。施設所在地別の上位3地域のシェアは採掘73.3%、転換68.5%、濃縮69.4%、燃料製造47.0%で、工程ごとに集中の形態が異なる。
IEA. CC BY 4.0.

採掘では資源の分布以上に、鉱山から転換施設までの輸送経路の集中が課題となっています。内陸国のカザフスタンとウズベキスタンは、合わせて世界の採掘量の約45%を占めますが、転換・濃縮は全面的に国外の施設へ依存しています。報告書によると、2015~2025年には、世界で採掘されたウランの約半分がロシアまたは中国を通るルートで流通しました。ロシアは中継または転換の経路、中国はカザフスタン産ウランの最大の最終市場として位置付けられています[7]。カスピ海とコーカサスを通る「カスピ海横断回廊」の利用も進められていますが、輸送能力が限られ、積み替えによる複雑さとコストが加わります。放射性物質の輸送許可が国ごとに異なり、相互承認されていないことも、利用可能な経路を狭める要因です。

転換は、地理的にも事業者別にも供給が集中しています。商業規模で転換を行えるのは、ロスアトム社、カメコ社、オラノ社、コンバーダイン社、中国核工業集団(CNNC)が所有・運営する5つの主要施設に限られます。IEAは、二大供給国と位置付けるロシアと中国の転換能力を利用できない場合、残る能力では需要の80%しか賄えないと試算しており、供給元の多様化に向けて両国以外の転換能力を増強する必要性を示しています。

濃縮は、地理的にも事業者別にも転換以上に集中度が高く、ロスアトム社、ウレンコ社、オラノ社、CNNCの4社が世界の濃縮能力の92%を占めています。米国は、ロシアからの濃縮ウランの調達を2028年までに段階的に終了する方針です。IEAは、主要供給国への依存による供給リスクを検証するため、上位2供給国を需要と能力の双方から除く「N-2」シナリオによる試算・分析を行いました。2025年の世界全体の名目濃縮能力は需要を満たしていますが、この「N-2」の条件での試算では、濃縮能力は需要の約90%にとどまりました。これは現在の実際の供給不足を示すものではなく、濃縮能力が地理的に集中しているロシアと中国を除いた場合に、残る濃縮能力だけでは需要を満たせないことを示しています。実際の設備の稼働率は100%に満たないため、実効的な供給力はさらに小さくなる可能性もあります。

図4 上位2供給国を除いた場合の濃縮需給(N-2、2025年)

2025年の濃縮能力と需要を、上位2供給国とそれ以外の地域に分けて示す。上位2供給国を能力と需要の双方から除くN-2条件では、残る能力は3,113万SWU、残る需要は3,408万SWUで、能力は需要の約91%となる。
N-2は上位2供給国を能力だけでなく需要からも除外し、残る地域同士を比較するストレスケース。現在の実際の供給不足を示すものではない。IEA. CC BY 4.0.

燃料製造では、従来型燃料の世界全体の設備稼働率が70%を下回っており、現在の需要を賄ったうえで、短期的な需要増にも対応できる余力があるとみられます。ただし、燃料集合体の仕様は炉型ごとに異なり、製造能力の余力を別の炉型に対応する燃料製造へ直ちに振り替えられるとは限りません。 ウェスチングハウス社、フラマトム社、TVEL社、グローバル・ニュークリア・フュエル(GNF)社、韓国電力公社(KEPCO)の5社が、世界の燃料製造能力の約65%を占めています。

ロシア型加圧水型炉(VVER)が世界の原子炉群の約14%を占めていますが、使用できる認証済み燃料の選択肢は限定されています。ウェスチングハウス社はVVER-440とVVER-1000向けの代替燃料供給を進め、フラマトム社も新たな製造施設を計画しています。しかし、燃料の認証、許認可、炉型固有の適合確認には時間がかかり、直ちに利用可能となるわけではありません。 特にVVER-1200には現在、TVEL社以外の代替燃料がなく、同炉を導入しているバングラデシュ、ハンガリー、トルコなどにとって課題となっています。

図5 VVER燃料の需要地と供給者(2025年)

2025年のVVER燃料について、スウェーデン・ロシア・中国の地域別供給能力と、欧州・アジア各国およびロシアの需要を積み上げ棒で比較する。供給能力はロシア(1,200 tHM)に集中している。
数量は地域別の需要・供給能力。能力は認証・許認可を経て直ちに利用可能になるとは限らない。IEA. CC BY 4.0.

炉型別の代替状況

VVER-440/1000

代替供給が進展(ただし認証・許認可が制約)

VVER-1200

現在、代替燃料なし・TVEL依存が継続

生産者側に有利になった契約条件と、減少する二次供給

二次供給の減少と需要の回復を背景に、ウランの取引条件は生産者側に有利な方向へ変化しています。2011年以降のウラン価格低迷期には、固定価格または基準価格を一定の条件で引き上げる契約が中心で、電力会社が契約数量をある程度調整できる場合も多くありました。しかし2020年以降、電力会社がウランを調達する際の契約は取引時の価格に連動する方式や、高い最低価格を設定する方式へ移っています。

生産者は、現在より高い価格で数年先の供給契約を結ぶ姿勢を示す一方、電力会社は長期契約と在庫積み増しによって、価格変動や地政学上の不確実性に備えています。2026年2月にカザフスタンとインド原子力庁(DAE)が結んだ長期契約は、政府機関が長期契約を通じて将来の供給量を確保する動きの一例です。また、上場投資信託(ETF)などの現物ウラン投資商品がウラン精鉱を購入・保管することで、市場で取引可能な量を実質的に減らしていることも、需給の引き締まりにつながっています。

これまで需給の緩衝材となってきたのが二次供給です。これには、在庫の取り崩し、使用済み燃料のリサイクル、濃縮作業を増やす代わりに天然ウランの投入量を抑える運用、濃縮工程で生じた劣化ウランの再濃縮、高濃縮ウランなどを希釈して濃縮度を下げる処理などが含まれます。二次供給はかつて世界のウラン需要の4分の1超を賄うこともありましたが、近年は約10分の1まで低下しました。在庫が減り、濃縮作業量を増やすことで天然ウランの投入量を抑える余地も小さくなるにつれて、採掘による一次供給への依存はさらに高まるとみられています。

使用済み燃料の再処理で回収したウランやプルトニウムを利用する燃料も、安定した供給源ではあるものの、規模は限られます。フランスでは、こうした燃料が現在の原子燃料供給の約10%を占めています。同国は、再濃縮した再処理ウランも利用しながら、リサイクル・プルトニウムの寄与を約25%まで拡大し、将来的には40%近くまで高めることを目標としています。オラノ社はMELOX工場の生産回復と近代化を進め、ラ・アーグ再処理工場では2040年以降も見据えた施設更新を計画しています。

一方、世界全体では再処理の進展にばらつきがあります。ロシアでは2026年にREMIX燃料のパイロット事業が完了しましたが、日本の六ヶ所再処理工場など主要施設の遅延は、リサイクル拡大の制約となっています。米国でも、将来のSMRを念頭に再処理再開の議論がありますが、具体的な導入経路は不透明です。IEAは、短期的にはMOX燃料や回収ウランを利用した燃料が世界の燃料供給に占める割合が大きく拡大するというより、現在の利用基盤が維持・強化されるとみています。

原子力はウラン以外の特殊鉱物にも依存する

原子力発電所が使用する非ウラン鉱物の量は、他のエネルギー技術に比べて小さいものの、必要な素材のなかには供給国が集中し、代替が難しいものがあります。IEAは原子力サプライチェーンに関する章の末尾に、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウムなどの特殊鉱物を取り上げています。

ウラン燃料ペレットを炉内で包む被覆管には、少量のニオブ、スズ、クロム、ニッケルなどを加えた原子力グレードのジルコニウム合金がほぼ専ら使われます。原料となるジルコンの採掘は豪州と南アフリカが世界の約60%、ジルコニウム精製は中国が約38%を占めています。ニオブはさらに集中しており、ブラジルの3鉱山が世界生産の約90%を供給し、そのうち1鉱山だけで全体の80%を占めています。

制御棒には炭化ホウ素、ハフニウム、銀‐インジウム‐カドミウム合金が使われ、ガドリニウムは運転初期の余分な中性子を吸収し、炉心の反応度を調整する「可燃性毒物」として燃料に添加されます。これらの鉱物には、生産国の集中に加え、一部は他の鉱物を生産する際の副産物としてしか得られないという供給上の制約があります。例えば、ハフニウムはジルコニウム精製の副産物で、中国が主要な精製国です。インジウムも亜鉛精製の副産物で、精製生産の約70%を中国が占めます。

図6 原子力関連特殊鉱物の最大生産国シェアと主な用途(2025年)

ジルコニウム、クロム、スズ、ニオブ、カドミウム、ホウ素、ハフニウム、インジウム、タンタルについて、精製段階の最大生産国シェアを、用途(被覆管系→制御棒系)ごとにシェア降順で横棒に配列し、主な原子力用途を併記する。最大はブラジルのニオブ88.2%で、多くの鉱物では中国が最大生産国となっている。
各値は精製段階の最大生産国シェア。ジルコン採掘やニオブ鉱山のシェアとは工程・分母が異なる。IEA. CC BY 4.0.

先進炉や次世代燃料の導入が進めば、原子力グレードの黒鉛[8]、イットリウム、ベリリウムなどの重要性も高まる可能性があります。IEAの分析が示すのは、原子力発電の再拡大を支える供給網を考える際、ウラン資源の量だけでなく、転換・濃縮・炉型別燃料の供給能力、輸送経路、二次供給、さらに非ウラン鉱物までを含め、原子力サプライチェーン全体として捉える必要があるということです。


References:


  1. 現行の政策設定に基づき、エネルギーシステムが進む主な方向性を示す探索的シナリオ。意欲的な目標の達成は前提としない。 ↩︎

  2. Oranoによると、2023年7月以降の主要な供給・輸出回廊の閉鎖や代替輸出案が承認されなかったことを背景に、SOMAÏRは2024年10月末から活動を停止しました。Oranoは同年12月、ニジェール当局側が生産物の輸出拒否を確認したとして、同社の操業管理権を失ったと公表しています。(Niger: growing financial difficulties will force SOMAÏR to suspend operations, 2024年10月23日/Orano confirms the loss of operational control of SOMAÏR in Niger, 2024年12月4日) ↩︎

  3. 中国で運転中の陸上SMRは、山東省石島湾のペブルベッド型モジュール式高温ガス炉「HTR-PM」(電気出力21.1万kW)です。建設中の商業用SMRは、海南省の昌江原子力発電所に建設されている一体型PWR「玲龍一号(ACP100)」です。 ↩︎

  4. ロシアで運転中の海上SMRは、チュクチ自治管区ペヴェクの海上浮揚式原子力発電所「アカデミック・ロモノソフ号」です。建設中のSMRは、シベリアのセヴェルスクに建設されている鉛冷却高速炉「BREST-OD-300」です。 ↩︎

  5. 報告書p.223では、米Global Laser Enrichment(GLE)社がノースカロライナ州ウィルミントンでレーザー濃縮技術の実証試験ループを運転しているとしています。外部資料による補足: 米原子力規制委員会(NRC)によると、同設備はSILEX法の性能・信頼性の向上と商業設備の設計最適化を目的とする試験設備です。(https://www.nrc.gov/info-finder/fc/global-laser-enrichment-nc-lc) ↩︎

  6. 米エネルギー省(DOE)は2025年4月、第1回の条件付き割り当て先として、TRISO-X、Kairos Power、Radiant Industries、Westinghouse、TerraPowerの5社を選定しました。その後も、先進炉・燃料開発や研究プロジェクトを対象に追加選定を行っています。(https://www.energy.gov/ne/us-department-energy-haleu-allocation-process) ↩︎

  7. カザトムプロムの2025年年次報告書によると、ロシアを通る西向けルートでは、カザフスタン産ウランは通常、鉄道でサンクトペテルブルク港へ運ばれ、そこから米国、カナダまたは欧州の港を経て各地の転換施設へ輸送されます。中国向けは鉄道でカザフスタン・中国国境のアラシャンコウ駅まで運ばれます。(https://www.kazatomprom.kz/storage/cc/integrated_annual_report_2025.pdf) ↩︎

  8. 中性子を吸収する不純物を極力除き、中性子照射下での寸法安定性や強度、熱伝導性を厳しく管理した黒鉛 ↩︎

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