カナダ原子力協会(CNA)年次大会参加概要報告
2025年4月15日~17日、カナダ・オタワで開催されたカナダ原子力協会(CNA)の年次大会に当協会の増井理事長が参加しました。本大会は、2025年4月15日から17日まで、オンタリオ州オタワのロジャース・センターにて開催されました。「Building for Tomorrow Today(明日を築く)」をテーマに掲げ、持続可能な社会に向けて原子力産業が果たす役割と今後の展望に焦点を当てた、過去最大規模の開催となりました。参加者数は約1,700人にのぼり、講演者数は60名以上、セッション数は30(基調講演、パネルディスカッション、セミナー、ネットワーキングイベントなど多岐にわたる)を超えました。展示エリアには80以上の企業ブースが出展されました。
初日には、カナダ原子力安全委員会(CNSC)やカナダ影響評価庁(IAAC)などの規制当局によるセミナーが実施され、特に先住民コミュニティとの関与や小型モジュール炉(SMR)に関する規制準備状況についての議論が交わされました。また、CNAが実施した国内世論調査の結果をもとに、今後の原子力人材戦略についても検討がなされました。さらに、選挙の結果が原子力産業に与える影響やエネルギー政策の地政学的課題に関しても専門家による分析が紹介されました。
2日目には、Hatch社のネイサン・テッドフォード技術ディレクターが、カーボンフリー社会の構築における原子力の役割について基調講演を行いました。続いて行われた国際パネルディスカッションでは、「Building Resilience: International Responses and Collaboration in the Nuclear Industry」と題し、カナダと海外のパートナーが協力し、原子力技術の開発や規制、普及をどのように進めていくかについて意見を交わしました。また、ジョージアン・カレッジをはじめとする教育機関が、原子力産業における人材育成のためのトレーニングプログラムやマイクロクレデンシャル制度の導入事例を紹介し、実務的な教育連携の可能性が示されました。
最終日となる3日目には、CNSCのピエール・トレンブレイ代表取締役社長が登壇し、カナダの原子力規制の現状とその未来について語りました。その後行われたクロージングランチでは、3日間の成果を振り返りながら、参加者同士がさらなるネットワーキングを深める機会が設けられました。
本大会の大きな特徴は、産業界、政府、教育機関、さらには先住民代表など、幅広い関係者が参加し、多角的な視点から原子力の将来を見据えた意見交換が行われた点が挙げられます。中でも、2050年を見据えた人材育成の重要性が繰り返し強調され、将来のエネルギー需要と産業維持のための教育投資が不可欠であるとの認識が共有されました。
なお、CNAは2025年10月20日から22日にかけて、サスカチュワン州サスカトゥーンで「CNA WEST」を開催する予定です。これは、カナダ西部の原子力開発の潜在力と地域経済への貢献を探る初のイベントとして位置付けられ、今後の原子力政策の地域展開にも注目が集まっています。当協会といたしましても、引き続き、カナダの原子力産業の動向を注視し、CNAとの協力関係を継続する所存です。






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