量子放射線利用普及連絡協議会第32回会合を開催しました

2020年12月11日

 量子放射線利用普及連絡協議会(注1)では、2020年11月24日(火)に第32回会合を行い、農業・食品産業技術総合研究機構の等々力 節子氏より、「食品照射〜現状と今後〜」という演題で、食品照射に関する歴史的な経緯や、照射技術の最新状況、また照射農産物の二国間の輸出入を含む国際的な実用動向についてご講演をいただきました。本会合は当協議会として初となる、オンライン(ZOOM)での講演会となりました。

 今回の講演では、まず食品照射とは、食品や農産物に放射線を照射して、殺菌、殺虫、芽止めを行う技術であり、加熱処理や化学薬剤の代替技術であることを述べられました。意図した技術上の目的を達成するために適正な線量であれば、線量に上限を設ける必要はなく、安全に摂取できる とのWHOの見解を紹介いただきました。近年、世界全体で食品照射処理量が増大していますが、中国やベトナムでの増加が著しいこと、米国でも多いが、EUでは減少傾向にあるなど国際状況を説明されました。オーストラリアとニュージーランドも、植物検疫の分野での導入に積極的で、特にオーストラリアは照射果実の輸出を大きく増やしているとのことです。一方国内では、1972年からジャガイモの照射が許可されるなど、当初は世界をリードしたが、その後は進んでいない実態を指摘されました。しかし、平成30年に農産物の輸出促進研究プロジェクトの中でミカンやリンゴの照射効果の検討がなされたとの説明がありました。また最新の技術動向として、低エネルギーの電子装置やX線装置の開発が進んでいることを紹介いただきました。

 講演後は、最近注目される低エネルギー照射装置の詳細や、将来的な照射農産物の貿易拡大などについて質疑応答がありました。等々力氏より、米国は、検疫処理において将来の輸出を想定して、戦略的に照射農産物の輸入を解禁していることなど指摘があり、活発な意見交換が行われました。

 量子放射線利用普及連絡協議会では、今後も放射線利用に関する最新の話題、知見についてテーマとして取上げ、放射線利用の普及、理解促進に寄与する活動を行ってまいります。

量子放射線利用普及連絡協議会とは
放射線利用について関係者が問題意識、情報を共有し、協力、協働してそれぞれが戦略的に事業に取組み、より効果的に普及活動を展開させることを目的に2006年に設置されました。構成員は放射線照射企業、各地域組織、教育関係者等です。

お問い合わせ先:人材育成部 TEL:03-6256-9315(直通)