データセンターの電力消費量 2030年に日本超え IEA報告書

国際エネルギー機関(IEA)は2025年4月10日、報告書「Energy and AI」を公表。データセンターの電力消費量が、2030年までに約9,450億kWhと2024年の水準から倍増するとの見通しを明らかにしました。これは、現在の日本の総電力消費量をわずかに上回る規模です。
報告書によると、AIが他のデジタルサービスに対する需要増と並んで、この増加を牽引する最大の要因です。特に米国の影響が圧倒的に大きく、2030年までに見込まれる電力需要の増加分の約半分を、データセンターが占める見通しです。さらに、データセンターによる電力消費量は、アルミニウム、鉄鋼、セメント、化学などのエネルギー集約型産業全体で使用される電力の合計を上回ると予想しています。なお、現在、米国のデータセンターの半分近くが、5つの地域クラスターに集中しており、これにより、これらの地域では既にデータセンターが、電力市場に大きな影響を及ぼしています。
また、報告書は、データセンターの旺盛な電力需要に対して、蓄電設備や地域間の電力融通といった電力系統のバックアップに支えられた、再生可能エネルギー(再エネ)と天然ガス火力が、供給面での主導的な役割を担うと指摘しています。具体的には、今後5年間で世界のデータセンターにおける電力需要の伸びの半分を、再エネがカバーすると予測。再エネについては、短い建設期間や高い経済競争力、そしてIT企業による積極的な電力調達戦略を背景に、2035年までに4,500億kWh以上増加すると見込まれています。

原子力については、2030年以降に小型モジュール炉(SMR)の導入が進むと予想。米国では、大手IT企業がSMR開発の支援に乗り出しており、特に、SMR初号機が運転開始予定の2030年以降、原子力発電の役割が一段と大きくなる見通しです。現在、IT企業は既に合計出力2,000万kW以上ものSMRへの出資を計画しており、SMR開発が順調に進めば、さらに大きな展開が見込まれています。また、再エネの着実な増加とSMRの拡大により、天然ガス火力の追加需要は抑えられ、2035年までに米国のデータセンターへの電力供給の半分以上を低排出電源が占めると予測しています。
同様に、中国でも2030年以降、SMRの導入により、データセンター向け電力供給における原子力シェアが大幅に増加する見込みです。2030年から2035年にかけて、再エネと原子力の拡大が進むなかで、石炭利用が相対的に減少。報告書は、2035年までに再エネと原子力を合わせて、中国のデータセンターへの電力供給の約60%を占めると予想しています。
そのほか、欧州では、再エネと原子力が、追加で必要となる電力の大部分を供給する見通しです。これにより、欧州全体における両電源のシェアは合わせて、2030年までに85%に上昇します。また、現在、日本と韓国のデータセンターが消費する電力は、世界のデータセンターの電力需要の約5%を占めており、このシェアは2030年まで維持される見込みです。両国では、再エネと原子力が、2030年のデータセンターの消費電力の現在の35%から60%近くをカバーすると見られています。
一方で報告書は、AIやデータセンター事業者による原子力投資が実現せず、既設インフラからデータセンターに電力供給される場合、2035年までにデータセンター向けの電力供給に占める原子力の割合は、現在の約15%から約10%にまで低下する可能性があると指摘しています。

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