EC 初のSMR戦略を発表ーー2030年代初頭に初号機運開めざす

2026年3月19日

© European Union

欧州委員会(EC)は3月10日、小型モジュール炉(SMR)*の開発・導入を加速する初の戦略文書「欧州におけるSMRの開発および導入に向けた戦略(Strategy for the development and deployment of Small Modular Reactors (SMRs) in Europe)」を発表しました。ECは、SMRを欧州の主要な産業開発プロジェクトの一つと位置づけ、2030年代初頭までに欧州で初のSMRの運転開始をめざすとしています。SMRを、脱炭素化やエネルギー安全保障の強化に加え、欧州の産業競争力の強化にも寄与する技術と位置付けた格好です。

同戦略では、研究、サプライチェーン、許認可、人材育成、資金調達などの分野でEU加盟国や産業界、規制当局、投資家の協力強化を図る方針を示すとともに、SMR導入を促進するための9つの行動を提示。具体的には、技術開発やサプライチェーン、規制面などでの取組みとして、産業向け高温熱供給や海上利用などを想定した先進モジュール炉(AMR)の開発加速、燃料サイクルを含む欧州域内のサプライチェーン強化、同一設計の炉を複数導入するフリート・アプローチの推進と、それに伴う産業標準化の策定や許認可に関する規制協力などを打ち出しています。これらの取組みは、EU加盟国間の協力強化や志を同じくする国との国際協力のほか、2024年2月に設立された欧州SMR産業アライアンス(European Industrial Alliance on SMRs)とも連携して進めていく方針です。

さらに、SMR導入を後押しするため、資金支援の枠組みも提示。EUの投資支援制度であるInvestEUやイノベーション基金などを活用し、初号機(FOAK)プロジェクトのリスク低減を図り、民間投資の呼び込みを進めるとしています。そのほか、革新的原子力技術に関するIPCEI(Important Project of Common European Interest)の枠組みを通じて、投資促進の方針も示しています。

また、SMRの製造拠点や関連産業を集積するSMRバレー(SMR Valley)の形成や、SMR導入に関心を持つEU加盟国が選定された炉型について規制や政策、経済面などで協力する枠組みのSMR連合(SMR Coalition)を設立する提案も示されています。

ECはまた同日、原子力実証プログラム(PINC)を発表。同プログラムによると、EUにおけるSMRの設備容量は、2050年までに1,700万kWから5,300万kWに達する可能性があるとの見通しを示しています。

* 軽水炉型SMRのほか、液体金属炉や熔融塩炉、高温ガス炉などの先進モジュール炉(AMR)およびマイクロ炉を含む。

ECが提示したSMR導入促進に向けた9つの行動

行動1: 有望炉型への重点支援とEU主導の取組み強化

加盟国および欧州SMR産業アライアンスは、欧州が世界的リーダーシップを確保し、競争力と戦略的自律性を強化するとともに、廃棄物管理と循環性に関する世界標準の確立につながる可能性のある有望な炉型のうち、対象を絞って重点的に支援する必要がある。

また、成功の可能性を高めるため、同アライアンスが、EUおよび関係国の競争法に沿って、支援対象プロジェクト間の協力と連携を促進する。さらに、特定されたプロジェクトについては、定期的に見直しを行う。

行動2:域内調達と整合した競争力のある欧州サプライチェーンの構築

加盟国は、アライアンスの支援を受けつつ、サプライチェーン上の不足や課題を特定するとともに、サプライヤー間やSMR開発事業者との協力を促進し、SMR開発に向けた欧州のサプライチェーン強化に取り組む必要がある。

これらの取組みは、ECが提案する産業加速法(Industrial Accelerator Act)における域内調達要件と整合させて進める。

行動3:SMRのフリート・アプローチを支える産業標準の策定と実装

電力会社や運転事業者を含む産業界は、標準化機関と協力し、SMRのフリート・アプローチを支える産業標準の策定と実装に向けた取組みを継続するとともに、モジュール製造の高度化を図ることが求められる。

これらの取組みは、2030年代初頭の運転開始目標に沿って、速やかに進める必要がある。

行動4:革新的原子力技術の商用化に向けたリスク低減スキームの構築

SMRプロジェクトを対象としたイノベーション基金の公募結果をふまえ、ECはEU域内における革新的原子力技術(軽水炉型SMR<LW-SMR>、先進モジュール炉<AMR>、マイクロ炉、核融合を含む)の初期商用機の導入を一層支援するため、2028年までの期間限定でInvestEUに最大2億ユーロを追加拠出することを検討する。

また、戦略的技術分野で有望な欧州企業への投資を目的とする新たなスケールアップ欧州基金(Scaleup Europe Fund)も、革新的原子力技術の導入加速を後押しする可能性がある。

行動5:革新的原子力技術に関するIPCEIの設計

加盟国は、本戦略の目標に沿って、SMRを含む革新的原子力技術に関するIPCEI(欧州共通利益に適合する重要プロジェクト)を設計する。その際、欧州が世界的リーダーシップを確保し、競争力の強化につながる枠組みづくりに重点を置く。

ECは、Design Support Hub(IPCEIの設計段階にあるプロジェクトに対し、専門的な技術支援や専門家による支援を提供する枠組み)を通じて、引き続きこの取組みを支援するとともに、アライアンスの活動と整合した形で推進する。

行動6:ネットゼロ加速バレー(Net-Zero Acceleration Valleys)におけるSMR開発の支援

加盟国や地域は、ネットゼロ加速バレー(ネットゼロ関連産業の集積拠点)の整備にあたり、SMR由来の電力や熱の利用可能性を見極めるとともに、必要に応じて制度面の整備を進めることが求められる。

こうした取組みを加速し、2030年代初頭のSMR導入や強固で競争力のあるサプライチェーンの構築につなげるためには、すべての関係主体の強いコミットメントと幅広い参画が不可欠である。

行動7:域内流通の円滑化と欧州の知的財産の保護

加盟国は、SMRプロジェクトに関連して加盟国間で適用される輸出管理に係る行政手続きを簡素化、迅速化する必要がある。

また、加盟国およびECは、SMR分野で創出される欧州の知的財産(IP)の保護の在り方について検討を進める。主な手段としては、外国直接投資(FDI)審査や企業結合規制の活用が想定される。

行動8:SMR連合(SMR Coalition)設立による導入促進と規制協力の強化

SMR導入に関心を有する加盟国は、アライアンスが選定した炉型の導入を国内で促進するため、SMR連合の設立を検討する。SMR連合は、政策、規制面での緊密な協力を通じて進められ、やむを得ない場合を除き、国ごとの個別対応を最小限に抑えることを目的とする。

各国は許認可手続きの整合化や、相互承認の導入も視野に入れる。ECは、SMRプロジェクトに関する共通の安全評価や共同の早期審査に取り組む規制当局を支援する助成制度を維持するほか、加盟国によるSMR向け規制サンドボックス(規制の柔軟運用による実証制度)の構築も支援する。

こうした取組みを通じて、関心を有する加盟国は2030年代初頭のSMR導入を促進するとともに、将来的なフリート・アプローチに向けた基盤整備を加速させることが求められる。

行動9:志を同じくするパートナー国との国際協力と相互利益の追求

ECは、今後SMR導入を計画するパートナー国との協力を引き続き進める。さらに、OECD/NEA(原子力機関)や国際原子力機関(IAEA)、第4世代原子力システム国際フォーラム(GIF)などの国際機関・枠組みとも連携を強化する。特に、SMRに関する共通の保障措置アプローチの策定において、IAEAとの協力は重要である。

また、EU産業とパートナー国の産業双方にとって利益となるよう、企業間(B2B)対話の促進にも取り組む。

お問い合わせ先:情報・コミュニケーション部 TEL:03-6256-9312(直通)