原子力人材育成ネットワーク 原子力理解度向上分科会活動紹介~原子力をめぐる「理解の土台」とは何か:国内外の事例から~

2026年3月19日

近年の世論調査では、原子力について「賛成」「反対」だけでなく、判断するための材料が十分にないと感じている人が少なくないことがうかがえます。特に若い世代では、原子力について考える機会や情報に接する機会が限られている、といった声も見られます。

また、産業界や研究者からも、原子力に関する情報が専門的になりやすく、一般の人にとって必ずしも身近でわかりやすい形で共有されていないとの指摘があります。

こうした課題意識のもと、産官学が連携する原子力人材育成ネットワークでは、今年度新たに「原子力理解度向上分科会」を設置しました。日本原子力産業協会が事務局を務める本分科会では、原子力に関する理解が深まっていくような環境づくりに向けて、情報の届け方や社会とのつながり方の在り方、国内外の先進事例の調査などに取り組んでいます。

その活動の一環として今回は、(一社)土木技術者女性の会 および スタズビック・ジャパン社(スウェーデン) をお招きし、専門性の高い分野が社会にどのように理解されていくのかという観点から、情報発信・対話の取り組みや認識のギャップが生まれる背景について意見交換を行いました。

意見交換会の概要

<土木技術者女性の会との意見交換会>

土木技術者女性の会からは、専門職であるにもかかわらず「土木=工事現場」というイメージが根強く、実際の仕事の幅広さや専門性が十分に伝わっていないという課題が紹介されました。こうした認識のギャップを放置せず、まずは「土木とは何か」を丁寧に説明することから取り組みを始めた点が印象的でした。

夏休みの体験イベント、SNSを活用した発信、女性技術者の可視化などの取り組みは、専門分野が社会の中でどのように理解されていくかを踏まえた、いわば“土台づくり”です。技術や働き方に対する基本的な認識を社会と共有しない限り、どれだけ魅力を語っても届きにくいという現場感覚は、原子力分野にも共通する課題として受け止められました。

また、同会の活動が40 年以上続いてきた背景として、女性技術者同士が悩みや経験を共有し、「自分は一人ではない」と感じられるつながりが大きな役割を果たしているというお話もありました。企業を超えた働く人同士のつながりは、職業人生を支えるだけでなく、結果として分野全体の魅力向上にもつながっている点で、大変示唆に富むものでした。

<スタズビック・ジャパン社との意見交換会>

スウェーデンでは原子力拡大へと大きく政策転換を進めていますが、背景には、単に政策判断の巧拙ではなく、市民が主体的に学び、判断し、意思決定に参加するという文化的基盤がありました。

特に印象的だったのは、情報の真偽を見極める力(リテラシー)、批判的思考および自分たちで決めるという民主主義の姿勢を育むことに重点を置いている点です。幼稚園の遠足のおやつ選びのような日常の小さな場面から「自分が選び、決める」経験を積み重ねることが、後に社会課題に当事者として向き合う姿勢の土台となるというお話は、参加者に強く印象づけられました。

また、原子力政策のような国家的課題に対し、市民が学習サークルや大学の社会人講座へ自ら足を運び、必要な情報を主体的に取りにいく文化も紹介されました。情報を「待つ」のではなく、主権者として「取りにいく」という姿勢は、情報の受け手側のあり方を根本から問い直すものです。

スウェーデンの政策転換を支えているのは、「民主主義とは、国民全員が意思決定に関与し、その結果に責任を負うこと」という強い当事者意識です。「政治が悪いのだとすれば、それは(自分たちが選んだ結果としての)自分たちの責任である」という覚悟をもって議論に参加する文化を認識し、専門分野が社会とどう向き合い信頼を積み重ねていくか、国民が自ら考え判断できる環境を共に整えていくための重要な視点を得ることができました。

日本原子力産業協会は、今回得られた知見を踏まえ、今後とも原子力人材育成ネットワークの活動を通じて、原子力に関する理解が深まる環境づくりに取り組んでまいります。

意見交換会の様子 

お問い合わせ先:人材育成部 TEL:03-6256-9315(直通)