第2回「新しい原子力へのロードマップ」会議における産業界共同声明の発表について
一般社団法人日本原子力産業協会
日本原子力産業協会は、現地時間2024年9月19~20日、フランスのパリにて開催された経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)およびスウェーデン政府が主催する第2回「新しい原子力へのロードマップ」会議に出席し、カナダ原子力協会、カナダ加圧重水炉(CANDU)オーナーズグループ、米国電力研究所、仏原子力産業協会、韓国原子力産業協会、米原子力エネルギー協会、英国原子力産業協会、欧州原子力産業協会、世界原子力協会とともに、共同声明を発表しました。
本会議は、昨年初めてOECD/NEAおよびフランス政府の呼び掛けにより、NEA加盟国等の政府高官および産業界の幹部が一堂に会し、同志国が協力して原子力エネルギーの新設プロジェクトに必要なリーダーシップを再構築する機会として開催されたものです。
2回目となる今回は、特に原子力新設に最も関心のある国々に向け、原子力ファイナンス、サプライチェーンおよび人材育成に焦点を当てた議論が行われました。
本会議に先立ち、初日のセッションの中では、OECD/NEAによって各国で実施された原子力発電所の新規建設に向けた準備状況に係るサプライチェーン調査の結果について紹介されました。
ブルガリア、カナダ、クロアチア、チェコ、エストニア、フィンランド、フランス、ガーナ、ハンガリー、イタリア、日本、韓国、オランダ、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、トルコ、ウクライナ、英国、米国の各国政府による共同声明が公表されました。
なお、今回の会議では、原子力新規建設プロジェクトを成功させる能力を再構築するため、「新しい原子力へのロードマップに関する共同事業」を創設することが明らかにされました。
以上
【共同声明】
Roadmaps to New Nuclear ― Nuclear Industry Statement
【共同声明仮訳】
「第2回新しい原子力へのロードマップ・ハイレベル会議」における原子力産業界の声明(仮訳)
我々、今回の「新しい原子力へのロードマップ・ハイレベル会議」に参加している原子力産業を代表する業界団体は、出席している政府関係者に意見を提供する機会を歓迎している。我々は、次のことに取り組んでいる。
- 原子力施設の安全かつ確実な運転を確保し、
- 信頼性が高く、低廉で、クリーンかつ低炭素な電気と熱を供給し、
- 発電分野においてネットゼロを達成において他の低炭素エネルギー源を補完し、
- 重工業などの脱炭素が困難な分野を脱炭素化し、
- 経済成長を促進する専門性の高い安定した雇用を創出する。
この1年間で、世界各国の政府は、気候危機への対処、エネルギー安全保障の確保、データセンターやAI、エネルギー集約型製造業、輸送の電化といった高需要産業の世界的な電力需要の増加に対応するために、さらには世界全体の経済発展に貢献するために、原子力発電の重要な役割について合意した。
我々は、OECD/NEAの初回の「新しい原子力へのロードマップ・ハイレベル会議」の成功を祝福し、2050年までに原子力発電の目標を達成するためには、資金調達の大幅な拡充、サプライチェーンの強化、労働力への投資、原子燃料供給の更なる拡充、および原子力発電の迅速な拡大を可能にする支援政策と規制が必要であることに同意する。
我々は、第28回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP28)で『原子力の三倍化宣言』に署名したOECD加盟国を称賛する。我々は、すべてのOECD加盟国に対し、気候変動枠組条約(UNFCC)のプロセスを通じて設定した目標を達成するための、原子力発電の導入に係る明確な計画を策定し、原子力発電へのコミットメントを示し、市場や投資家に明確なシグナルを送ることを強く求める 。
したがって、政府には、既存の原子力発電所の最大限の活用を支援し、運転期間の延長、出力の向上、実現可能な場合には閉鎖された発電所の再稼働を推進するよう奨励する。政府は、実績のある設計に基づいた新しい原子力施設の展開を加速し、大型原子炉や小型モジュール炉および革新モジュール炉を含む新しい原子力技術の開発、実証、および展開を加速するための行動を促すべきである。
これらの目標を達成するために、ここに集まった政府に対して、以下の重要な分野で決断力のある行動を取るよう求める。
- 量産段階におけるコスト削減やスケジュールの短縮による利益を実現するため、原子力エネルギー技術の大規模導入を促進する政策を推進すること。
- 原子力開発のための国内外の気候資金メカニズムへの円滑なアクセスを確保すること。
- 世界銀行など多国間金融機関が投資ポートフォリオに原子力発電を含め、これらの投資を支援するための内部能力を構築することを確実にすること。
- 原子力プロジェクトに対する資金調達と投資回収の仕組みに関する明確性を投資家に提供し、グリーンボンドや持続可能なエネルギー分類法(タクソノミー)などのクリーンエネルギー資金調達メカニズムに原子力発電を含めること。
- エネルギー安全保障目標を支援するために、OECD加盟国において燃料 サプライチェーンを強化する取り組みを継続すること。
- 次世代の原子力科学者、技術者、および熟練した専門職を育成するため、人材開発と訓練に投資すること。
- OECD加盟国において、原子力研究への投資および原子力サプライチェーンを強化するための取り組みを継続すること。
- 原子力技術の効率的な許認可および導入の加速を確実にするため、規制に関する協力を拡大すること。
原子力発電は世界にとって非常に大きな可能性を秘めており、OECD加盟国は原子力の導入を戦略的優先事項として受け入れ、今すぐ行動を起こすべきである!
2024年9月19日 パリ
<参考>
第1回 「新しい原子力へのロードマップ」会議における産業界共同声明の発表について
< 本件に関するお問い合わせ >
(一社)日本原子力産業協会 国際部
TEL:03-6256-9313
Email:kokusai@jaif.or.jp