パリ原子力サミット2026における産業界声明への署名について

日本原子力産業協会は、2026年3月10日にフランス・パリで開催された原子力サミット(Nuclear Energy Summit 2026)にあわせて取りまとめられた産業界声明に、世界の原子力 産業団体とともに署名しました。

今回の原子力サミットは、2024年3月のブリュッセルに続く第2回目の開催であり、フランスの主催、国際原子力機関(IAEA)の高い後援の下で、2026年3月10日にパリで開催されました。今回のサミットでは、エマニュエル・マクロン仏大統領とラファエル・マリアーノ・グロッシー IAEA 事務局長の開会の下、60を超える国・地域の首脳、国際機関・金 融機関の関係者、産業界代表、有識者が参加し、クリーンエネルギーへの移行における原子力の役割について議論が行われました。中でも、原子力をめぐる国際協力の強化、革新炉を含む新技術の展開、資金調達の在り方、安全・セキュリティ・保障措置を前提とした原子力利用、人材育成やサプライチェーン整備などが主要テーマとして取り上げられ、既設炉を持つ国と新規導入を検討する国の双方にとって重要なハイレベル会合となりました。

こうした閣僚級・首脳級を含むハイレベル会合の機会を捉え、当協会を含む世界の原子 力産業団体は、原子力産業界としての共通の立場と行動の方向性を示すべく、今回の共同声明に署名しました。声明では、2050年までに世界の原子力設備容量を3倍にするとの目 標への支持を改めて示すとともに、大規模な低炭素電源としての原子力が、カーボンニュートラルの達成、エネルギー安全保障の強化、経済発展の実現に不可欠であると訴えています。さらに、大型炉、SMR、小型先進炉(AMR)といった技術革新に加え、低炭素水素製造、産業熱利用、海水淡水化、核医学、ラジオアイソトープ生産など、原子力の多様な活用可能性に言及するとともに、その実現に向けて、予見可能な金融枠組みの整備、人材育成、サプライチェーン強化、運転・保守における卓越性への投資の重要性を強調しています。

今回の共同声明には、GIFEN(フランス)、NIA(英国)、Belgian Nuclear Forum(ベルギー)、FinNuclear(フィンランド)、AIN(イタリア)、IGEOS Nuclear(ポーランド)、ABDAN(ブラジル)、OCNI(カナダ)、CNA(カナダ)、SAFおよびNSS(スロベニア)、Nucleair Nederland(オランダ)、UNF(ウクライナ)、BulAtom(ブルガリア)、SwissNuklearForum(スイス)、KAIF(韓国)、Foro Nuclear(スペイン)、NIATR(トルコ)、JAIF(日本)、FICCI(インド)、ROMATOM(ルーマニア)、NNA(ノルウェー)、NuclearSweden(スウェーデン)、CNEA(中国)、nucleareurope、World Nuclear Associationの25団体が署名しました。

当協会は世界の原子力産業団体とともに、2024年9月の第2回「新しい原子力へのロードマップ」会議(OECD/NEA・スウェーデン政府主催、於パリ)および2025年9月の第3回「新しい原子力へのロードマップ」会議(OECD/NEA・韓国政府主催、於パリ)において、共同声明の発出に参加してきました。これらの声明では、原子力新設を進めるために必要なファイナンス、サプライチェーン、燃料供給、人材確保、規制協力といった課題について、各国政府に対して具体的な対応を求めてきました。今回の声明もその流れを受け継ぐものであり、原子力のさらなる活用に向けた安定的かつ予見可能な政策・金融環境の整備、人材・サプライチェーン・イノベーションへの投資の重要性を改めて国際的に共有するものです。

当協会は、今後も国内外の関係団体と連携し、原子力の社会的・経済的価値に関する理解促進と、持続可能な原子力利用に向けた取組の後押しに努めてまいります。

原子力サミットに集った各国原子力産業界リーダー ©GIFEN


【参考】
共同声明本文(英語)  Nuclear Energy Summit – 2026 Nuclear Industry Statement



パリ原子力サミット2026における産業界声明(仮訳)


2026年3月10日
フランス・パリ


前文

我々は、原子力発電を行っている国、民生用原子力の導入を進めている国、または導入 を検討している国において活動する、またはそれらの国の企業を代表する原子力産業協会として、多様な経済的・産業的な歩みを代表しつつ、国際原子力機関(IAEA)の強力な支援の下、2026年3月10日にパリで開催された第2回原子力サミットに集結した。気候変動の影響が一層深刻化し、エネルギー需要が着実に増加している世界情勢の中で、我々は、持続可能で、安全かつ強靱なエネルギーシステムの重要な柱としての原子力エネルギーに対する共通のコミットメントを改めて確認する。

我々は、より多くの国々が原子力エネルギーの開発を支持する共通のビジョンを共有していることを喜ばしく思うとともに、原子力エネルギーを安全かつ効率的に開発するための各国の取組の調整において、IAEAが果たしている役割を歓迎する。

我々は、原子力エネルギーが、気候課題、環境保護、経済社会の発展、ならびに国家のエネルギー安定性および安全保障に同時に取り組むための戦略的手段であることを認識する。その発展とエネルギーミックスへの統合は、適切かつ持続可能な資金調達の枠組みの整備や、教育、技能開発、人材基盤の強化への継続的な投資を含む、不可分な条件に左右される。原子力エネルギーは、現在および将来のエネルギー需要に応えるとともに、多くの非エネルギー用途の発展も可能にする。


原子力エネルギーとエネルギーシステムの低炭素化
我々は、信頼性が高く、継続的で、大規模な電力供給を確保しつつ、エネルギーシステムの炭素集約度を段階的に低減するための重要な解決策として、原子力エネルギーの役割を強調する。より低炭素なエネルギーシステムへの移行は、各国の能力、発展の優先順位、社会経済的現実を踏まえつつ、公正で、秩序ある、公平なものでなければならない。この観点から、原子力エネルギーは、エネルギー源の多様化を支え、化石燃料への依存を低減するための構造的手段となる。

気候変動対策
前回の原子力サミットでは、脱炭素化、エネルギー安全保障、経済発展を両立し得る低炭素ソリューションを動員する必要性が確認された。我々は、2050年までに世界の原子力 を3倍にするとの政府宣言および産業界宣言への支持を表明するとともに、原子力エネルギーが、カーボンニュートラルの達成、電力システムの安定化、そして長期的なエネルギー転換の支援に不可欠な手段であることを強調する。


原子力発電と経済発展への貢献
我々はまた、信頼性が高く、価格面でも利用しやすい、継続的なエネルギーへのアクセスが、経済社会の発展、工業化、雇用創出、不平等の是正の基本的な柱であることを改めて確認する。この文脈において、原子力エネルギーは経済発展を方向づける構造的推進力 となる。原子力エネルギーは、経済競争力、電力価格の安定、産業主権の確保、ならびに研究・エンジニアリングから運転・廃止措置に至るまでのバリューチェーン全体にわたる高度技能雇用の創出に貢献する。また、原子力への投資は、長期的な計画、技術革新、人 材育成を促進する。


イノベーションと将来のエネルギー需要
原子力発電は、制御可能で、信頼性が高く、低炭素な電力を供給することにより、エネルギーシステムの強靱性、安定性、持続可能性に決定的な貢献を果たす。小型モジュール炉(SMR)および先進モジュール炉(AMR)は、大型原子炉と並んで、柔軟性、段階的導入、地域ニーズへの適応、既存インフラとの統合の面で新たな可能性を切り開く。これらの技術はまた、原子力の用途を拡大し、各国が現在および将来のエネルギー需要を安全かつ持続可能な形で満たす能力を強化する。
我々は、原子力エネルギーが発電に限定されるものではないことを強調したい。原子力 エネルギーは、多くの非エネルギー用途の開発にも活用でき、我々の社会が直面する主要課題に対して革新的な解決策を提供する。原子力エネルギーは、脱炭素型水素製造、産業用および地域熱供給、海水淡水化に大きな可能性をもたらす。保健分野においては、核医学、放射線治療、ならびに多くの疾病の診断と治療に不可欠なラジオアイソトープの製造を通じて、不可欠な役割を果たしている。さらに、原子力エネルギーは、材料分析、食品保存、環境モニタリングなどを通じて、宇宙、産業、農業、研究の各分野にも貢献している。


持続可能な資金調達
我々は、持続可能で予見可能な資金調達が、民生用原子力計画の企画、実施、および持続可能性における重要な要素であることを改めて確認する。長いライフサイクルと高い資本集約性を特徴とする原子力インフラには、適切な資金調達枠組みが必要である。
この点において、国内、地域、国際レベルの資金調達メカニズムへの公平なアクセス、ならびに長期的なエネルギー戦略における原子力発電の役割の認識は、必要な投資を支 え、既設施設の継続運転を確保し、新規設備容量の展開を可能にするうえで不可欠である。


教育と卓越した運転
我々は、人材育成、教育、訓練、技能の維持が、原子力エネルギーの安全・セキュリティ・平和利用を確保し、新設計画の展開を支えるうえで基本的であることを確認する。各国の能力強化、知識移転、強固な安全文化の醸成、ならびに研究・開発・イノベーションの支援は、原子力施設の設計、建設、運転、廃止措置の質を確保するうえで不可欠である。

エネルギー安全保障とレジリエンス
エネルギー市場の変動性の高まりとサプライチェーンの脆弱性の拡大を背景に、我々は、国、地域、世界の各レベルでエネルギー安全保障を強化する必要性を強調する。
民生用原子力能力の開発、維持、拡大は、エネルギー安全保障に不可欠な貢献をなす。原子力エネルギーは、調整可能かつ継続的な発電を提供し、化石燃料輸入への依存を低減し、地政学的、気候的、経済的ショックに対するエネルギーシステムのレジリエンスを高める。
この点において、とりわけ関係する多国間機関の枠組みにおける国際協力は、国際的に認められた安全、セキュリティおよび保障措置の基準に従いつつ、各国が自国の原子力計画を持続可能に発展させることを支えるうえで重要な役割を果たす。

お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)