ウクライナの原子力発電所の状況 #32


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 110号(現地時間2022101日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は、ザポリージャ原子力発電所(ZNPP)のイホル・ムラショフ所長拘束に関する情報を入手後、関係当局と連絡を取り、ムラショフ氏が一時拘束されているとの情報を得たと発表した。

グロッシー事務局長は、「IAEAは、その原子力安全/セキュリティの任務に従い、積極的に説明を求めており、本件の迅速かつ満足のいく解決を望んでいる」と述べた。また、今回の拘束は、ウクライナ紛争当初に示した原子力安全およびセキュリティの7つの不可欠な原則のうち、少なくとも2つに非常に大きな影響を及ぼすと改めて指摘した。

事務局長は、「このような発電所スタッフの拘束は、それ自体、重大な懸念材料であるだけでなく、他のスタッフに対する心理的影響やプレッシャーは原子力の安全とセキュリティにとって有害である」と述べた。

ムラショフZNPP所長は、プラントの原子力安全とセキュリティを確保する責任を負っている。原子力安全、運営スタッフの放射線防護、核セキュリティに関連するものを含め、発電所が手順通りに運転されていることを確認し、現場での原子力緊急事態への対応を指揮する立場である。

グロッシー事務局長は、「このような形で彼が職務から離れることは、発電所の安全とセキュリティを確保するための意思決定に深刻な影響を与える」と指摘した。

事務局長は、ムラショフ氏が安全かつ速やかに家族のもとに戻り、ZNPPでの重要な職務を再開できるよう希望を表明した。

また、本日、ZNPPに常駐しているIAEAの専門家から、ZNPP周辺で再び複数の爆発音が聞こえたとの報告があった。今週IAEAが報告した前回の爆発と同様、地雷によるものと思われる。この爆発は、ZNPPの安全およびセキュリティ・システムに直接的な影響を与えるものではない。

今回の爆発は、欧州最大の原子力発電所ZNPPの境界フェンス付近で今週報告された地雷爆発の件数が引き続き増加していることを示すものである。グロッシー事務局長は、ZNPP付近でこのような地雷爆発が繰り返し発生していることに深い懸念を抱いている。

事務局長は、ZNPP周辺の原子力安全/セキュリティ保護エリアの早期設定に向け、協議を続けている。来週はキーウとモスクワを訪問する予定だ。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-110-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 109号(現地時間2022930日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)近くで地雷が爆発し、低電圧ケーブルが損傷したと発表した。

昨日(9/29)の爆発では、ZNPPの境界フェンスのすぐ外にある窒素酸化物施設の近くで、発電所の一部で使用される6kVケーブルが損傷した。このケーブルのショートにより、間接的に6号機の電圧変圧器も損傷した。火災は発生しなかったが、煙が確認された。

本日、ZNPPに常駐しているIAEAチームが周辺を確認したところ、コンクリートフェンスとケーブルトレイに爆破衝撃の痕跡があり、地雷の爆発を示す証拠と考えられる。

ウクライナの運営スタッフによると、ケーブルと変圧器の両方の修理に必要なスペアパーツやその他の機材は入手可能であるとのこと。なお、この修理作業は、バックアップ電源システムに影響を与えることはない。

今回の爆発そのものは、ZNPPの安全システムに直接影響を与えるものではないが、発電所の境界フェンス付近では、今週に入って計6回の地雷爆発が報告されている。ZNPPはロシア軍が占拠し、ウクライナ人スタッフにより運営されている。

グロッシー事務局長は、ここ数か月、頻繁に砲撃を受けている地域でもあるZNPPの近くで今週、多くの地雷が爆発したことについて、改めて深い懸念を表明した。同事務局長は、ZNPP周辺の原子力安全/セキュリティ保護エリアの早期設定に向け、協議を続けていると述べた。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-109-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


ザポリージャの原子力安全、セキュリティ、保障措置の現況
―IAEA事務局長による第2回サマリーレポート(2022年9月6日発表)から抜粋―



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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