ウクライナの原子力発電所の状況 (5月2日~5月31日)(現地時間) #10

※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

※2022年3月より、ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明の日本語訳をご紹介してきましたが、2022年6月以降は新たな大きな動きがあった場合のみ、ご紹介することといたします(2022年6月2日)


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 78 2022531日(一部仮訳)

ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は派遣した専門家ミッションは今週、ウクライナのチョルノービリ原子力発電所で原子力安全、セキュリティ、保障措置に関する活動を実施していると発表した。

このミッションは、過去6週間で2回目となるIAEAのチョルノービリ原子力発電所への訪問であり、現在の軍事紛争中に同国の原子力安全とセキュリティを確保するための取組の一環として実施される。ウクライナには運転中の原子力発電所が4か所・計15基あり、IAEAに技術支援を要請していた。

IAEAの専門家チームは3日間の滞在中、チョルノービリ原子力発電所と施設周辺の立入禁止区域で、放射線防護、廃棄物管理の安全性、核セキュリティに関する支援を提供すると、グロッシー事務局長は述べている。また、IAEA保障措置スタッフは、1986年の事故後、さまざまな放射性廃棄物管理施設がある同施設で検証活動を実施する、と付け加えた。

チームの優先事項の1つは、紛争の初期に中断され、2月24日以降、監視データを提供していないチョルノービリ原子力発電所の立入禁止区域の自動放射線監視システムの再確立に関する技術的助言を提供することである。また、専門家は同施設の状況を評価し、IAEAが4月に納入した放射線モニタリング機器に関するトレーニングを行う予定である。

さらに、IAEAの査察官と技術者は、申告された核物質と活動を検証し、先月再開されたチョルノービリ原子力発電所からIAEA本部への遠隔保障措置データ伝送が機能しているかどうかを確認する。

グロッシー事務局長は、3月下旬に南ウクライナ原子力発電所を、約1か月後にチョルノービリ原子力発電所を訪れ、安全・セキュリティ・保障措置に関する過去2回のウクライナミッションを自ら指揮した。今回のミッションは、7名のIAEA専門家チームから構成されている。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-78-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 77 2022519日(一部仮訳)

ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は、本日のウクライナ側の報告によると、チョルノービリ原子力発電所付近の地域で発生した新たな森林火災は、人々に放射能の脅威を与えるものではないと発表した。

森林火災の発生についてウクライナは、チョルノービリ周辺のガンマ線の線量率レベルは“基準レベルを超えていない”とIAEAに報告した。

グロッシー事務局長は、過去の経験から、このような火災は大気中の放射能濃度が僅かに上昇することにつながる可能性があると述べた一方、今回の森林火災が人間の健康に危険を及ぼすものではないというウクライナ側の評価に同意したという。1986年の事故により放射性物質で未だ汚染されているこの地域では、自然発生的な火災がしばしば発生している。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-77-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 76 2022517日(一部仮訳)

ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は今後数週間のうちに、ウクライナのチョルノービリ原子力発電所に次の保障措置検査官や原子力安全・セキュリティの専門家を派遣する予定であると発表した。

事務局長は、ウクライナの原子力施設の安全とセキュリティの確保を支援し、現在の軍事衝突の間、同国での保障措置活動を維持するためのIAEAの取り組みについて、ビデオ声明で「我々の現場での支援は、放射線防護、廃棄物管理の安全、核セキュリティに集中する。ウクライナの原子力施設の安全とセキュリティは、引き続き私の最優先事項だ」と述べた。

グロッシー事務局長はまた、原子力安全やセキュリティ、保障措置作業を実施すべく、ロシアの管理下にあるザポリージャ原子力発電所へのIAEAミッション派遣に向け現在注力している。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-76-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 75 2022511日(一部仮訳)

ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は、ウクライナのチョルノービリ原子力発電所からの保障措置データの遠隔データ送信が完全に再確立されたことを明らかにした。これは、衛星技術に基づく新たなデータ送信路と、2022年4月26日から27日にかけて行われたチョルノービリ原子力発電所への保障措置検査官・技術者の訪問以来、同機関が行った技術作業の成果である。チョルノービリ原子力発電所の2か月の中断以降、ウクライナのすべての原子力発電所と関連する使用済燃料貯蔵施設を含む、すべてのサイトからの遠隔データが、IAEA本部に完全に送られたのはこれが初めてとなる。 

グロッシー事務局長は、「これはIAEAがウクライナで保障措置の実施を継続する上で、非常に重要なステップだ」と述べた。「しかし、保障措置の実施には、現場での検証活動も含まれる。ザポリージャ原子力発電所の状況は、ロシア軍とロスアトムのスタッフの存在により、引き続き困難な状況にある。IAEAは保障措置の調整を続けているが、この状況は維持できない。そこで私は、必要な協議を経て、できるだけ早い機会に、保障措置検査官や原子力安全・セキュリティの専門家を含むザポリージャ原子力発電所への訪問を主導することを提案した」とも述べた。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-75-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 74 202256日(一部仮訳)

ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は本日、ウクライナがIAEAに対し、

2月24日~3月31日にロシア軍がチョルノービリ原子力発電所を占拠していたことにより、同サイトの運営が困難になっている状況が続いていると報告したことを明らかにした。

ロシア軍がチョルノービリ原子力発電所を撤退してから5週間が経過したが、ウクライナによると、機器やスペアパーツを供給するための物流ルートが寸断され、安全な操業を確保するために必要な人数が安全にアクセスできないなどの理由で、サイト内の複数の施設が依然として正常に運営できない状態にあるという。その結果、規制機関は同サイトのライセンスの一部を停止するなどの規制措置をとっている。

グロッシー事務局長はまた、1986年の事故後、さまざまな放射性廃棄物管理施設が立地するチョルノービリ原子力発電所の規制管理がウクライナによって再び確立されたことを歓迎した。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-74-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 73 202255日(一部仮訳)

ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は本日、ウクライナの規制機関のオレ・コリコフ局長と会談し、紛争中の同国の原子力施設の安全・セキュリティ確保を支援するIAEAの取り組みについて協議した。

ウィーンのIAEA本部での会談で、グロッシー事務局長とウクライナ国家原子力規制検査局(SNRIU)のコリコフ局長は、ウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所の状況についても話した。

同事務局長は、6基の原子炉を有するウクライナ最大の同原子力発電所の原子力安全とセキュリティに関して、IAEAは「不可欠な役割を果たす準備ができている」と述べた。ザポリージャ原子力発電所は2か月前にロシア軍に占領されたが、ウクライナの職員が発電所の運転を続けている。ウクライナは先週、IAEAに対し「信じられないような圧力の下で働いている」と報告している。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-73-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 72 202254日(一部仮訳)

ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は本日、イスタンブールでロシア国営原子力企業ロスアトムのアレクセイ・リハチョフ局長らロシア高官と会談した。

グロッシー事務局長は、ウクライナのザポリージャ原子力発電所の安全確保が急務であることを強調し、タイムリーで専門的な議論を続けていると述べた。IAEAは、不可欠な役割を果たす用意があると付け加えた。

保障措置関連では、先週のIAEA検査官・技術者によるチョルノービリ原子力発電所への訪問を受け、同発電所に設置された全ての無人監視システムのデータが完全に復旧した。また、衛星技術に基づく新たな遠隔データ送信により、技術的な作業が必要な1施設を除き、ウィーン本部への保障措置データの遠隔送信が完全に復旧した。チョルノービリからのデータ送信は2か月間中断していた。ウクライナの他の原子力発電所については、IAEAへの遠隔データ送信が継続されている。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-72-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


70号(202252日)、第71号(202253日)ともに現地時間 にて新たな情報はありません。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-71-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-70-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine

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