ウクライナの原子力発電所の状況 #19


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 94号(現地時間20228月25日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は、ウクライナから国際原子力機関(IAEA)に対し、ザポリージャ原子力発電所(ZNPP)が本日、最後に稼働していた750kVの外部電源の送電線に一時的に接続できなくなったと連絡があったことを明らかにし、IAEAによる専門家ミッションの緊急派遣の必要性を改めて強調した。

ウクライナによるIAEAへの報告によると、欧州最大の原子力発電所であるZNPPは少なくともその日2回送電線への接続を失ったが、現在は復旧している。またZNPPは、必要に応じてバックアップ電力を供給することができる近隣の火力発電所との330kVの送電線への接続が維持されている。

また、事務局長によると、ウクライナはIAEAに対し、750kVの送電線が切断された結果、ZNPPの運転中2基が電力網から切り離され、緊急保護システムが作動したが、全ての安全システムは稼働を継続していると報告。ウクライナは、送電線が復旧した後も、6基全てが送電網から切り離されたままであると述べた。

送電線の切断に関する直接的な原因については、現在のところ有力な情報は得られていない。6基の原子炉を有するZNPPには通常4系統の外部電源ラインがあるが、そのうちの3系統が紛争中に既に失われた。IAEAはウクライナと緊密に連絡を取り合っており、最新情報が入り次第、提供する。

原子力安全の確保には、送電網からの外部電源による確実な電力供給が不可欠である。この要件は、紛争当初に事務局長が示した「原子力安全およびセキュリティの7つの不可欠な原則」のうちの1つである。外部電源が喪失した場合でも、ZNPPは、世界中の他の原子力発電所と同様に、ディーゼル発電機によるバックアップ電源が利用可能である。

本日の送電線の事象は、今月に入りZNPP周辺で発生した一連の砲撃により、発電所にいくつかの被害が生じたことに続くものであり、ロシア軍の管理下にありながら、ウクライナ人スタッフによって運営されている発電所の原子力安全とセキュリティに対する懸念を深めるものである。

グロッシー事務局長は、「ほぼ毎日、ザポリージャ原子力発電所やその付近で新たな事象が発生している。これ以上、時間を失うわけにはいかない。私は、数日以内にIAEAミッションを率いてザポリージャを訪問し、原子力安全とセキュリティの状況を安定化させる決意だ」と述べた。

ミッションに向けた積極的な協議と準備の一環として、グロッシー事務局長は本日、パリでエマニュエル・マクロン仏大統領と会談した。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-94-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


◆アントニオ・グテーレス国連事務総長によるウクライナに関する国連安全保障理事会での発言(現地時間2022年8月24日)

参考:国連HPより

https://www.un.org/sg/en/content/sg/speeches/2022-08-24/secretary-generals-remarks-the-security-council-ukraine%C2%A0



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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