ウクライナの原子力発電所の状況 #24


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第100号(現地時間2022年9月11日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)は本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)へのバックアップの送電線が復旧し、原子炉の冷却やその他安全上不可欠な機能に必要な外部電力が供給されていることを現地で確認した。

10日夕に、欧州最大の原子力発電所であるZNPPとウクライナの送電網を、近隣のエネルホダルにある火力発電所の開閉所を介して接続する、330kVの予備送電線が復旧し、ZNPPでは今朝早く最後まで運転中であった1基を停止させることができた。この原子炉は、系統から切り離されたZNPPに1週間にわたり電力を供給していた。今回の送電線復旧により、ZNPPの原子力安全に必要な電力は再び外部送電線から供給されるようになった。

ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は、ウクライナ側も確認したZNPPの発電状況に関する最新の動向を歓迎しつつ、数週間に及ぶ同地域での砲撃により重要な電力インフラが損なわれたため、発電所の状況は依然として不安定であることを強調した。全原子炉が停止しても、原子炉の冷却やその他の安全上必要なシステムの維持には電力が必要である。

グロッシー事務局長は、「このような被害にもかかわらず、プラントのオペレーターとエンジニアは、非常に困難な状況下で予備送電線の1つを復旧させ、ZNPPに絶対必要とされる外部電力を供給することができた。しかし、砲撃が続く限り、発電所は危険な状態にあることを、私は強く懸念している」と述べた。また同事務局長は、この深刻な状況に対処するため、ZNPPに原子力安全/セキュリティ保護エリアの緊急設定を提言し、協議を開始したことを明らかにした。

原子炉が稼働せずとも、原子力安全を確保し、原子力事故を防ぐためには、系統からの確実な外部電源とバックアップ電源による供給システムが不可欠である。この要件は、紛争当初に事務局長が示した原子力安全およびセキュリティの7つの不可欠な原則の一つである。

グロッシー事務局長率いるIAEA支援/調査ミッション(ISAMZ)の一員として9月1日からZNPPの現場に駐在しているIAEA専門家は、ZNPPのプラント関係者から、6号機が、現地時間午前3時41分(中央ヨーロッパ時間午前2時41分)に停止したとの報告を受けた。他の5基はすでに冷温停止状態にあり、現在、同発電所から外部へは電力が供給されていない。ZNPPは3月初めからロシア軍に占拠されているが、ウクライナ人のスタッフが引き続きZNPPを運転している。

復旧した330kVの送電線に加え、他の送電線の復旧作業も進められている。6号機は、9月5日に送電網から切り離されて以降、ZNPPに電力を供給していた。しかし、原子炉を低出力で運転することは、発電タービンやポンプなど原子力発電所の主要機器が損傷する可能性があるため、長期的には持続可能な解決策ではない。

また、ZNPPには必要に応じて20台の非常用ディーゼル発電機が用意されており、少なくとも10日間、運転に必要な物資を備えている。今回の運転変更で、発電機を稼働させる必要はなかった。エネルホダル火力発電所は依然として停止しているが、今回復旧した送電線は、発電所の開閉所を経由してウクライナの送電網からZNPPに電力を供給している。

他の5基と同様に、ZNPPの運転スタッフは6号機を冷温停止状態に持っていくことを計画しており、そのためには約30時間が必要だ。ZNPPは、安全関連の機能維持に引き続き電力が必要である。冷温停止状態であれば、安全性の維持に、原子炉1基につき1台のディーゼル発電機からの電力供給があれば十分である。

グロッシー事務局長は、国連安全保障理事会へのブリーフィングに先立ち9月6日に発表したウクライナの原子力安全、セキュリティ、保障措置に関する報告書で、ZNPPが何度か「この地域での軍事行動の結果、外部電源の全部、または一部を失った」と指摘。また外部の電力供給ラインの多様性と冗長性を「いつでも再確立され、利用可能であるべきであり、また電力供給システムに影響を与える可能性のあるあらゆる軍事活動の終了」を勧告している。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-100-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine

ザポリージャの原子力安全、セキュリティ、保障措置の現況
―IAEA事務局長による第2回サマリーレポート(2022年9月6日発表)から抜粋―


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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