ウクライナの原子力発電所の状況 (第3週報:3月11日~17日)(現地時間) #3

◆ウクライナ原子力規制局(SNRIU)発表(2022年3月12日公開08:00<現地時間>)

<ザポロジェ原子力発電所>
1号機 :送電網から切り離し済み
2号機 :980MWで運転中
3号機 :送電網から切り離し済み
4号機 :980MW で運転中
5号機 :送電網から切り離し済み
6号機 :送電網から切り離し済み

<ロブノ原子力発電所>
1号機 :送電網から切り離し済み
2号機 :425MWで運転中
3号機 :660MWで運転中
4号機 :1015MW で運転中

<フメルニツキ原子力発電所>
1号機 :980MWで運転中
2号機 :送電網から切り離し済み

<南ウクライナ原子力発電所>
1号機 :980MWで運転中
2号機 :980MWで運転中
3号機 :送電網から切り離し済み

<チェルノブイリ原子力発電所> 廃炉中

【ウクライナの原子力関係機関】
国家原子力規制検査局(SNRIU): https://snriu.gov.ua/en/timeline?&type=posts
国営原子力発電会社・エネルゴアトム(Energoatom):https://www.energoatom.com.ua/en/


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第24号 2022年3月17日20:00CET(仮訳)

ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は、国際原子力機関(IAEA)に届いたウクライナからの本日付情報によると、同国最大のザポロジェ原子力発電所が第3系統への接続を失った翌日以降も、すべての安全システムが完全に機能していると報告を受けたと述べた。

ウクライナの規制当局は、待機中のものを含む2系統の送電ラインは、まだザポロジェ原子力発電所で利用可能であり、安全上の懸念はないと付け加えた。

原子力発電所には、外部電源の高圧(750kV)送電ラインが4系統あり、1系統が待機中である。4系統のうち2系統は既に損傷していた。ウクライナの規制当局は、昨日の第3系統の喪失の原因はまだ明らかではないが、残りの2系統で発電所の安全な運転は確保されていると述べた。ウクライナやその他の国の原子力発電所と同様、同発電所も万が一に備えて非常用のディーゼル発電機を備えている。

3月4日、ロシア軍がザポロジェ原子力発電所を征圧。6基ある原子炉のうち、現在2基が運転中である。規制当局は本日、サイト内の送電線が断線したため、出力をそれぞれ最大容量の約半分にあたる50万kWまで低下したと発表した(本日夜21時CETに再接続のため修理される予定)。規制当局は、サイト内の断線の原因については言及しなかった。

規制当局によると、ウクライナ南部のザポロジェ原子力発電所にはロシアの国営原子力企業ロスアトムのスタッフがまだ滞在しているが、高い技能を有するウクライナのスタッフが引き続き発電所を運転しているという。規制当局は、ウクライナは、ロシアにいかなる助言や技術、その他の支援も要請していない、と付け加えた。

ウクライナ北部のチェルノブイリ原子力発電所は、ロシア軍に征圧された同発電所への通常の電力供給の再開に成功してから3日後、電力網への接続を維持したと規制当局が発表した。1986年の事故現場は3月9日にすべての外部電源を失い、非常用ディーゼル発電機に切り替えた。数日後、ウクライナの専門家チームが損傷した送電ライン2系統のうち1系統を修理し、3月14日に外部電源の供給が再開された。

2月24日、ロシア軍がチェルノブイリ原子力発電所を征圧した。ウクライナのスタッフは、放射性廃棄物管理施設がある同施設の日常業務を継続している。彼らは3週間以上、シフト勤務することができていない。

ウクライナの4か所で運転中の原子力発電所の状況について、ウクライナの規制当局は、15基中、ザポロジェの2基、ロブノの3基、フメルニツキの1基、南ウクライナの2基など、8基が運転を継続していると発表した。すべての原子力発電所の放射線レベルは、正常の範囲にあるという。

保障措置に関しては、今週初めに報告されたものと状況は変わっていない。チェルノブイリ原子力発電所に設置されたモニタリングシステムからのリモートデータ送信はまだ行われていないが、ウクライナの他の原子力発電所からはIAEA本部へのデータ送信は行われている。

グロッシー事務局長は、ウクライナの原子力施設の安全・セキュリティに関する枠組を合意するため、協議を続けていると述べた。「合意すれば、IAEAはこれらの施設の安全かつ確実な運転のために効果的な技術支援を提供することができるだろう」と述べた。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-24-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第23号 2022年3月16日21:30CET(仮訳)

ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は、国際原子力機関(IAEA)に届いたウクライナからの本日付情報によると、同国のザポロジェ原子力発電所が第3系統の送電ラインへの接続を失ったが、他の2系統は利用可能であり、安全上の懸念はないと報告を受けたと述べた。

ウクライナ最大の原子力発電所であるザポロジェは、外部電源の高圧(750kV)送電ラインが4系統と1系統が待機中である。4系統のうち2系統は先に損傷していた。ウクライナの規制当局は、今日の第3系統が失われた原因は明らかではないと述べている。残りの電力系統と待機中の1系統は、すべての安全システムが制限なく完全に機能するのに十分であると述べている。ウクライナやその他の国の原子力発電所と同様、ザポロジェも万が一に備えて非常用ディーゼル発電機を備えている。

3月4日、ロシア軍は6基の原子炉を有するザポロジェ原子力発電所を征圧した。同発電所では、ウクライナのスタッフが引き続き発電所の運転にあたっている。規制当局によると、同発電所の2基の原子炉(2号機と4号機)は本日、電力系統の状況変化に適応するため、送電網への電力供給をわずかに減らしたという。

規制当局は本日、ロシアに征圧されているチェルノブイリ原子力発電所への通常の電力供給の再開に成功してから2日後、同サイトが引き続き、電力網に接続されていると発表した。

1986年の事故現場では、3月9日に外部電源を喪失し、バックアップ電源のディーゼル燃料で電力をまかなっていた。ウクライナの専門家チームは、プラントとネットワークを結ぶ損傷した2系統のうち1系統を修理し、3月14日に外部電源の供給が再開された。非常用ディーゼル発電機は、同日中に停止した。

ロシア軍は2月24日にチェルノブイリ原子力発電所を征圧した。ウクライナのスタッフは、さまざまな放射性廃棄物管理施設がある同発電所の日常業務を継続している。彼らは3週間、シフト勤務を実施できていない状態が続いている。グロッシー事務局長は、「ウクライナのスタッフが極めて困難な状況にあることを、私は引き続き強く懸念している」と述べた。

ウクライナの4か所で運転中の原子力発電所の状況について、ウクライナの規制当局は、15基中、ザポロジェの2基、ロブノの3基、フメルニツキの1基、南ウクライナの2基など、8基が運転を継続していると発表した。すべての原子力発電所の放射線レベルは、正常の範囲にあるという。

保障措置に関しては、今週初めに報告されたもの(第21号)と状況は変わっていない。チェルノブイリ原子力発電所に設置されたモニタリングシステムからのリモートデータ送信はまだ行われていないが、ウクライナの他の原子力発電所からはIAEA本部へのデータ送信は行われている。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-23-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第22号 2022年3月15日18:50CET(仮訳)
国際原子力機関(IAEA)に寄せられたウクライナからの本日付情報によると、チェルノブイリ原子力発電所は電力網に再接続を完了。非常用ディーゼル発電機による電力供給は不要となった。

1986年のチェルノブイリ事故サイトでは、3月9日に外部電源を喪失。バックアップ用電力を非常用ディーゼル発電機に頼らざるをえなかった。ウクライナの専門家チームが週末に、電力網と同サイトを結ぶ(損傷した)送電ライン2系統のうち1系統を復旧させることに成功した。

ウクライナ規制当局からの本日付け情報によると、同サイトでは3月14日16:45CETより、復旧した送電ラインが必要な電力供給を再開し、ディーゼル発電機を停止させた。送電ラインは同時に近郊のスラヴィティチへも電力を供給している。当局によると、残りの高圧送電ライン1系統を復旧させることができるかどうかは不透明だという。

ロシア軍は2月24日にチェルノブイリ原子力発電所サイトを制圧したが、ウクライナ側のスタッフが引き続きサイトの日常業務を管理している。同サイトにはさまざまな放射性廃棄物管理施設が立地している。

同サイトの計211名の技術スタッフならびに警備員は、ロシア軍のサイトへの侵攻以降、シフト勤務を実施することが出来ていない。事実上3週間、現場での生活を強いられている。ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長によると、スタッフは「必要な休息も取れずに多大なストレス下で」勤務している。規制当局によると、シフトのローテーション勤務をいつから再開できるかまったくわからないという。

今回規制当局が初めて明らかにしたところによると、チェルノブイリに関する情報はすべて「ロシア軍により検閲」されており、IAEAからの問い合わせに対し「必ずしもすべて詳細な回答をできるわけではない」という。これは3月4日以降ロシア軍の制圧下に置かれているザポロジェ原子力発電所についても同様である。

グロッシー事務局長は発電所スタッフが直面している状況に、今月初めに自身が強調した原子力安全確保に関する7原則( グロッシー事務局長 3月4日記者会見の概要参照)の1つである「運転員は原子力安全・セキュリティ上の義務を果たし、不当な圧力から解放された意思決定ができる能力を有していること」に明らかに反していると、深い憂慮を繰り返し表明。スタッフのシフト問題のみならず、ここ数週間のチェルノブイリでの電力切断や情報伝達問題など、ウクライナ国内全ての原子力施設の安全性とセキュリティを確保するため、IAEAイニシアチブの早期合意/実施が求められていると強調した。

規制当局によるとザポロジェ原子力発電所のスタッフが、3月4日のザポロジェ原子力発電所サイトへの侵攻でサイト内に残された不発弾を、ロシア軍が爆発処理したとの報道(第21号参照)を確認した。ただしスタッフは事前には知らされていなかったという。規制当局は最近IAEAに、被害を受けた訓練センターやその他発電所サイト内で、不発弾の捜索/処理作業が実施されているとの情報を伝えていた。

規制当局によると、ウクライナ北東部のハリコフでは、ロシア軍に砲撃された(第14号参照)原子力研究施設のスタッフが、絶え間ない砲撃の影響で一時避難を余儀なくされたが、その後施設に戻り安全系統への電力供給を復旧させた。研究開発に利用されている施設で、医用/産業用のアイソトープを生産している。核物質は未臨界であり、放射性物質のインベントリもごく少量である。IAEAは、報告された規模の被害であれば放射線被ばく事故は起こらないと評価している。

現在ウクライナでは、15基中8基の原子力発電所(ザポロジェが2基、ロブノが3基、フメルニツキが1基、南ウクライナが2基)が運転中。各サイトの放射線レベルは通常の範囲内である。

保障措置の状況は、今週初め(第21号)と何も変わっていない。IAEAは依然としてチェルノブイリ原子力発電所に設置されたモニタリングシステムからのリモートデータを受信できていないが、ウクライナの他の原子力発電所からはデータがIAEA本部に届いている。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-22-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第21号 2022年3月14日20:40CET(仮訳)
国際原子力機関(IAEA)に届いたウクライナからの本日付情報によると、チェルノブイリ原子力発電所への外部からの電力供給再開に向けた作業は継続中。ウクライナの専門家チームが、電力網と同発電所を結ぶ(損傷した)送電ライン2系統のうち1系統を復旧させてから1日が経過した。

3月9日に外部電源を喪失して以降、1986年のチェルノブイリ事故サイトでは非常用ディーゼル発電機がバックアップ用電力を供給している。ウクライナからの3月13日付報告(第20号)によると、専門家チームが送電ラインの1つを復旧させ、翌14日朝にはウクライナ国内電力網に再接続される予定だった。

しかしウクライナの送電系統運用者(TSO)であるUkrenergoによると、サイトの外部電源が十分に回復する以前に「占領軍」によりラインが再び損傷を受けた。その後13:10CETに外部電源が再度回復し、チェルノブイリ発電所のスタッフは電力網への再接続作業を再開している。

既報(第17号)の通りチェルノブイリ原子力発電所では先週、電力網からの接続が切断されたが、重要な安全機能に甚大な影響を与えるものではない。使用済み燃料保管施設では、電力供給なしでも熱を除去するに十分な冷却水が確保されている。規制当局も先週、使用済み燃料施設の安全解析レポートを引用し、非常用ディーゼル発電機からの電力が完全に失われた場合でも「重要な安全システムに影響を及ぼすものではない」と結論づけている。規制当局によるとディーゼル発電機は3月15日夕まで稼働を継続できるという。

電力供給問題は、ウクライナで運転中の4原子力発電サイトをはじめとする、同国全ての原子力施設の安全性とセキュリティを確保するため、IAEAが提案する枠組みの合意/実施の緊急性を浮き彫りにしている。

規制当局によると現在ウクライナでは、15基中8基の原子力発電所(ザポロジェが2基、ロブノが3基、フメルニツキが1基、南ウクライナが2基)が運転中。各サイトの放射線レベルは通常の範囲内である。

IAEAは、ロシア軍がザポロジェ原子力発電所サイト内で弾薬を爆発させたとの報道を注視しており、状況に関するウクライナからの情報を求めている。規制当局は以前(第18号)IAEAに、3月4日のロシア軍による同サイト制圧以降、被害を受けた訓練センターやその他発電所サイト内で、ロシア軍が不発弾の捜索/処理作業を実施しているとの情報を伝えていた。

保障措置の状況は、3月13日(第20号)と何も変わっていない。IAEAは依然としてチェルノブイリ原子力発電所に設置されたモニタリングシステムからのリモートデータを受信できていないが、ウクライナの他の原子力発電所からはデータがIAEA本部に届いている。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-21-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


ウクライナ原子力規制局(SNRIU)発表(2022年3月14日16:00<現地時間>)
未臨界実験装置用「中性子源」に関する更新情報
2022年3月6日と同10日、国立ハリコフ物理科学研究所サイト内にある研究用原子炉施設NSI「加速器駆動未臨界集合体中性子源」が爆撃された。

2022年3月14日現在、NSIの状況に変化なし。

● 施設は2022年2月24日以降、深い未臨界状態(長期停止モード)に移行
● 安全上重要なシステムや機器への電力供給は復旧
● サイト内の放射線レベルは通常の範囲内
● 爆撃の影響を最小限にとどめ、機器を稼働可能な状態に維持するため、スタッフが対策を実施中

NSIの「中性子源」は他の原子力施設と同様、戦闘状態における使用を想定していない。ロシア軍による爆撃が続けば、深刻な放射線被ばく事故および周辺地域の汚染がもたらされる可能性があることを特記する。


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第20号 2022年3月13日(IAEA声明仮訳)
ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナが国際原子力機関(IAEA)に対し、ロシアの支配下にあるチェルノブイリ原子力発電所が完全に外部電源を喪失した4日後、ウクライナの専門家チームが外部電源の供給再開に必要な送電線の修復に成功した、と報告したことを明らかにした。

事務局長は、ウクライナの原子力発電会社であるエネルゴアトムのペトロ・コティン総裁から、損傷した2系統のうち1系統を修理し、1986年の事故後にさまざまな放射性廃棄物管理施設がある原子力発電所に必要なすべての外部電源を供給できるようになった、との報告を受けた。

ウクライナの規制当局は、同国の送電系統運用会社であるウクレネルゴの修理担当者により、中央ヨーロッパ時間の18時38分に電力供給ラインが復旧したとIAEAに別途通知している。チェルノブイリ原子力発電所はバックアップのディーゼル発電機で作業を続けており、午前中にはウクライナの電力網に再接続される予定であるという。

既報のとおり、先週の送電網からの切り離しは、電力供給がなくても使用済燃料施設の冷却水の量が十分にあり、発電所の重要な安全機能に重大な影響を与えることはなかった。

グロッシー事務局長は、「チェルノブイリ原子力発電所はここ数日、非常用ディーゼル発電機に頼らざるを得なかったので、これは前向きな進展ではあるものの、一方でチェルノブイリやウクライナの他の原子力施設の安全性とセキュリティに重大な懸念を抱いている」と述べた。

本日未明、ウクライナの規制当局はIAEAに対し、チェルノブイリ原子力発電所の職員が、3週間近くノンストップで働き続けたことによる肉体的・精神的疲労もあり、安全性に関連する機器の修理やメンテナンスをもはや実施していないと報告した。

規制当局は、2月24日にロシア軍がサイト内に入る前日から、211人の技術職員と警備員がいまだに交代できていないと述べ、事故後に設定された立入禁止区域外に職員を移送することに対する安全上の懸念も表明している。規制当局は職員と直接のやりとりはしていないが、オフサイトの原子力発電所の管理者から情報を受け取っている。

グロッシー事務局長は、原子力発電所の職員が直面している悲惨な状況は、現場からの通信に関する根強い問題や、現在は解決している電力供給の問題と相まって、ウクライナの原子力発電所の安全性とセキュリティを確保するためのIAEAイニシアチブにさらなる緊急性をもたらしていると述べた。

事務局長は、ウクライナのすべての原子力施設の安全と確実な運用のためにIAEAが技術支援などを行う枠組を提案し、先週、ウクライナのドミトリー・クレバ外相とロシアのセルゲイ・ラブロフ外相とそれぞれ協議している。

「我々はこれ以上時間を失うわけにはいかない。IAEAは、我々が提案した枠組に基づいて直ちに行動する用意があるが、この枠組は実施前に紛争当事者の合意を必要とする。ウクライナの核施設に対する支援は、それが署名された後でなければ行えない。これがすぐにでも実現できるよう、全力を尽くしている」と事務局長は述べた。

IAEAは、事務局長が今月初めにIAEA理事会でまとめた「原子力安全確保に関する7つの原則」に基づき、支援のための詳細な技術提案を準備中である。これらの柱は、原子力施設の物理的な健全性や運転員が不当な圧力を受けずに意思決定できること、外部電源による供給の確保、規制当局との信頼できるコミュニケーションなどに関するものだが、2月24日に始まった紛争の間に妥協や挑戦がなされている。

ウクライナの規制当局はまた本日IAEAに対し、来月で36年目を迎える事故により放射性物質で未だ汚染されているチェルノブイリ原子力発電所の立入禁止区域において、毎年頻発する「自然火災」のシーズンを前に、その状況を注意深く監視していることを伝えた。

3月4日からロシア軍によって管理されているザポロジェ原子力発電所について、規制当局は電力供給の状況に変化はないと述べた。外部電源の高圧(750kV)送電線が4系統と、さらに1系統が待機している。4系統のうち2系統が損傷している。事業者はIAEAに対し、原子力発電所の外部の電力需要は、利用可能な1系統の電力ラインでまかなうことができると報告している。ディーゼル発電機もバックアップ電源として用意されている。

ウクライナはこれまで、ザポロジェ原子力発電所では通常の職員が運転を継続し、日常業務を遂行しているが、その管理は現地にいるロシア軍司令官の管理下にあるとIAEAに報告していた。本日の更新では、規制当局が得た現場の職員による情報によると、ロシアの国営企業ロスアトムの少なくとも11人の代表者も、原子力施設の運営に支障をきたさず、現場に滞在しているという。グロッシー事務局長は、現在の状況が7つの不可欠な柱のうちの1つである、運転員が「原子力安全・セキュリティ上の義務を果たし、不当な圧力から解放された意思決定ができる能力を有していること」に反していると繰り返し強調している。

規制当局はまた、ザポロジェ原子力発電所の作業施設が3月4日に損傷したこともあり、独立した現場での規制当局による安全性の監視を行うことができなくなったとIAEAに伝えた。しかし、安全の7つの柱の重要な要素であるサイトとの常時連絡は維持している。

ウクライナの運転中の原子力発電所の状況について、規制当局は、同国に15基ある原子炉のうち、ザポロジェの2基、ロブノの3基、フメルニツキの1基、南ウクライナの2基など、8基が運転中であると発表した。放射線レベルは通常通りであり、安全システムは損なわれていない、と付け加えた。

保障措置に関してIAEAは、チェルノブイリ原子力発電所に設置された監視システムからの遠隔データの送信はまだ受け取っていないが、ウクライナの他の原子力発電所からはIAEA本部にデータが送信されていると述べた。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-20-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第19号 2022年3月12日(IAEA声明仮訳)

ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナが国際原子力機関(IAEA)に対し、ロシアが国営企業のロスアトムの管理下でザポロジェ原子力発電所を完全かつ恒久的に管理することを計画していると報告したことを明らかにした。これは後に、ロシア連邦によって否定された。

ウクライナの原子力発電運営会社であるエネルゴアトムのペトロ・コティン総裁は、事務局長宛の書簡のなかで、約400人のロシア兵が「サイトにフルタイムで常駐している」と述べ、原子力発電所が依然としてロシア軍司令官の支配下にあることを確認した。

さらにコティン氏によると、発電所の管理者は、技術的な問題を含むすべての運営上の問題について、ロシア軍と調整することが求められているという。同氏は、原子力発電所の職員が定期的に交代していることを確認し、ロシアの専門家が数日前に現場の放射線の状況を評価するために現地に到着した、と付け加えた。

ウクライナはこれまでIAEAに対し、ロシア軍が3月4日に原子炉6基を有する同国最大の原子力発電所を占拠したと報告していた。ウクライナによれば、通常の職員が原子力発電所の運転と日々の業務を継続しているが、その管理は現地にいるロシア軍司令官の管理下にあるという。ロシア軍は2月24日、ウクライナの別の原子力施設であるチェルノブイリ原子力発電所を征圧した。

本日12日未明、グロッシー事務局長との電話会談で、ロスアトムのアレクセイ・リハチョフ総裁は、ウクライナ南東部のザポロジェ原子力発電所に同社の限られた数の専門家が滞在していることを確認したが、ロスアトムが運転管理を実施していることや同発電所をロスアトムの「管理システム」下に置くことを意図していることは否定している。

ウクライナの規制当局は本日、定期的な技術的情報に関する更新では、ザポロジェ原子力発電所の電力供給状況にここ数日変化がなかった、とIAEAに報告した。同発電所には、高圧(750kV)の外部電源の送電線が4系統あり、さらに1系統が待機している。4系統のうち2系統が損傷している。事業者はIAEAに対し、原子力発電所の外部の電力需要は、利用可能な1系統の電力ラインでまかなうことができると報告している。また、ディーゼル発電機もバックアップ電源として準備され、機能している。

ロスアトムのリハチョフ総裁は、サイトの電力供給状況を確認し、また、失われた送電線を復旧するための作業が行われているが、既存の供給を危険にさらさないようにするため、バックアップ用のディーゼル発電機用の燃料が必要な場合に備えて追加で持ち込まれていると述べた。また、原子力発電所に必要な他の物資も届けられる可能性があると付け加えた。

ロシア連邦は別途本日、正式にIAEAに「ザポロジェとチェルノブイリ原子力発電所の管理・運転は、ウクライナの運転員によって行われている」と通知した。数名のロシア人専門家グループが相談役を務めている。技術支援提供の枠組のなかで、原子力発電所の安全かつ持続可能な運転を確保するために、発電所の優先的なニーズを決定している最中である。特に、チェルノブイリ原子力発電所では電源の復旧、ザポロジェ原子力発電所では物理的保護システムの復旧が、ロシアの専門家のコンサルティングを受けながら進められている。ロシア側は、「ウクライナの原子力発電所の安全と確実な運転を確保するための対策を実施する一方で、IAEAと緊密に連絡を取り合っている」と述べた。

グロッシー事務局長は、現在の状況は、7つの不可欠な柱のうちの1つである「運転員は原子力安全・セキュリティ上の義務を果たし、不当な圧力から解放された意思決定ができる能力を有していること」に明らかに反していると繰り返し述べている。

チェルノブイリ原子力発電所の状況について、ウクライナの規制当局は、損傷した送電線を修復する努力は続けているが、外部からの電力供給は3月9日以降停止したままであると述べている。ディーゼル発電機は、1986年の事故現場の使用済燃料貯蔵施設など、安全に関連するシステムへのバックアップ電源を供給し続けており、追加の燃料供給が3月11日に到着したと発表している。

グロッシー事務局長との電話会談で、ロスアトムのリハチェフ氏は、新たに納入されたディーゼル燃料に関する情報を提供するとともに、近隣のベラルーシからチェルノブイリ原子力発電所に供給するための送電線を延長することが可能であると述べた。また、ロスアトムの専門家数名が現地入りしているという。

ウクライナの規制当局によると、チェルノブイリ原子力発電所では、ロシア軍が征圧する前日から、技術職員と警備員の211人がいまだに交代できず、実質的にそこで生活している状態だという。

グロッシー事務局長は、彼らが適切に休息と交代を行えるようにすることが喫緊に必要であり、安全で確実な原子力発電の運転にも不可欠な要素であると繰り返し強調した。さらに困難な状況に追い打ちをかけたのが、3月10日に発電所と規制当局との通信が途絶えたことである。規制当局は現在もオフサイトの管理者と連絡を取り合っており、IAEAに発電所の情報を提供することが可能である。

ウクライナの運転中の原子力発電所の状況について、規制当局は、同国の15基の原子炉のうち、ザポロジェの2基、ロブノの3基、フメルニツキの1基、南ウクライナの2基の計8基が運転中であると述べた。放射線レベルは通常通りであると付け加えた。

グロッシー事務局長は紛争当初から、ウクライナの原子力施設の安全性とセキュリティについて重大な懸念を表明してきた。事務局長は、ウクライナの原子力施設の安全性とセキュリティを確保するための合意された枠組を提案し、最近トルコのアンタルヤで、ドミトリー・クレバ外相とセルゲイ・ラブロフ外相とそれぞれ会談し、その内容について議論した。さらに、この件に関してIAEAがどのように支援できるか、関係各所と緊密に調整しながら、詳細な技術的な提案を準備しているところである。グロッシー事務局長は、合意された枠組は早急に妥結されなければならないと述べ、それがなければIAEAの現地支援は提供できないと付け加えた。

保障措置関連では、今週数日間IAEA本部に送信できなかったザポロジェ原子力発電所のデータをすべて回収できたことを確認した。チェルノブイリおよび南ウクライナのサイトに関しては、新たな進展はない。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-19-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


◆ウクライナ原子力規制局(SNRIU)発表(2022年3月12日公開17:00<現地時間>)

◆2022年3月6日と10日、国立研究センター「ハリコフ物理科学研究所」(ハリコフ)の敷地内にある NSI「中性子源」が爆撃を受け、その結果、NSI「中性子源」の建物構造に軽微な被害が生じた。

研究用原子炉施設NSI「加速器駆動未臨界集合体中性子源」(NSI「中性子源」)の状況に変化なし。

  • 原子力施設は、深い未臨界状態(「長期停止」モード)に移行
  • 安全上重要なシステム/コンポーネントへの電力供給は回復
  • 現場の放射線状況は基準値内にある
  • 作業員は、爆撃の影響を除去し、原子力施設の設備を運転可能な状態に維持するための措置を継続して実施

NSI「中性子源」は、他の原子力施設と同様、戦闘状態における使用を想定していない。爆撃を続ければ、深刻な放射線被害と周辺地域の汚染につながる可能性がある。


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第18号 2022年3月11日(IAEA声明仮訳)
ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナが国際原子力機関(IAEA)に対し、ロシアが管理するチェルノブイリ原子力発電所のサイト内への外部電源の供給が今週初めに全面的に停止したため、技術者が損傷した送電線の修復を開始したことを明らかにした。

ウクライナの規制当局によると、3月10日の夜から始まった作業で1か所修復することができたが、外部電源はまだ停止しており、他の場所にも被害が残っている模様である。発電所サイト外の困難な状況にもかかわらず、修復作業は継続されるという。

3月9日以降、非常用ディーゼル発電機によるバックアップの電力がサイト内に供給されており、規制当局は、追加の燃料が施設に届けられたと報告している。しかし、送電線をできるだけ早く修理することが重要であることに変わりはないとしている。

チェルノブイリ原子力発電所の管理は、3月10日に規制当局と同サイトとの通信が途絶えたこともあり、さらに困難になっている。その結果、同施設の放射線モニタリングに関する情報をIAEAに提供することができない。それでも規制当局は、発電所のオフサイト管理者を通じて、現地の状況についての情報を入手し続けている。

IAEAの第17版で報告されたように、規制当局は、ディーゼル発電機が使用済燃料や水管理、化学的な水処理など安全上重要なシステムに電力を供給していると述べた一方、放射線モニタリングや換気システム、通常の照明など一部の機能を運転員が維持することができないという。

しかし、こちらも既報のとおり、使用済燃料施設の冷却水の量は電力供給がなくても除熱を維持できるため、系統からの切り離しは、さまざまな放射性廃棄物管理施設がある同施設の本質的な安全機能には重大な影響はないとしている。

しかし、チェルノブイリ原子力発電所の職員は、ますます厳しい状況に直面している。規制当局は、211人の技術職員と警備員が事実上2週間以上も現場で生活していると述べ、食糧の備蓄確保についても懸念を表明した。

ザポロジェ原子力発電所のサイト内の電力供給の状況は、最近の更新で報告されたものと変化はない。サイトには高圧(750kV)の外部電源の送電線が4系統あり、さらに1系統が待機している。4系統のうち2系統が損傷している。事業者はIAEAに対し、原子力発電所の外部電源の電力需要は、利用可能な1系統の送電線でまかなうことができると報告している。さらに、ディーゼル発電機がバックアップ電源として用意され、機能している。

ザポロジェ原子力発電所では、ロシア軍が6基の原子炉を有するウクライナ最大の原子力発電所を征圧した3月4日の後、損傷した訓練センターなどで見つかった不発弾の確認および処分のための作業が進行中である、と規制当局は発表した。

原子力発電所を運営する職員は、日々の活動に支障をきたすことなく、通常のスケジュールに従って交代している、と規制当局は述べている。しかし、外国軍の駐留が労働意欲やプレッシャーを与えているという。規制当局は発電所との連絡を維持しているが、IAEAはザポロジェ原子力発電所の管理者と連絡を取るのが困難な状況にある。

ハリコフ市では、以前にも被害を受けた新しい原子力研究施設がさらに被害を受けた、と規制当局が発表した。この施設は、医療・産業用の研究開発や放射性同位元素の製造に使用されている。その核物質は未臨界であり、放射性物質の在庫も非常に少ないため、IAEAは、今回の被害がいかなる放射線による影響を与えることはないだろうと評価している。

しかし、武力紛争中にウクライナの原子力施設が直面するリスクが改めて浮き彫りになり、同国の原子力安全およびセキュリティの確保を目的としたグロッシー事務局長のイニシアチブに緊急性が増している。

ウクライナの運転中の原子力発電所の状況について、規制当局は、同国の15基の原子炉のうち、ザポロジェの2基、ロブノの3基、フメルニツキの1基、南ウクライナの2基など、計8基が運転を継続していると発表した。4サイトの放射線レベルは正常であるという。

第16版で報告された、原子力発電所の核物質や活動を監視するために設置された保障措置システムからの遠隔データ送信の一部喪失について、IAEAは、ザポロジェ原子力発電所からはオンラインに戻ったが、チェルノブイリ原子力発電所からは依然停止しており、南ウクライナ原子力発電所からのデータ送信に断続的な問題が発生している、と発表した。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-18-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine

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