ウクライナの原子力発電所の状況 #48


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第130号(現地時間2022年11月21日)[仮訳]

国際原子力機関 (IAEA) のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長によると、IAEAの専門家チームは、ウクライナのザポリージャ原子力発電所 (ZNPP) が週末に受けた激しい砲撃による被害状況を調査し、砲撃の深刻さにもかかわらず、主要な設備は無傷のままであり、原子力安全やセキュリティ上に差し迫った懸念はないことを確認できたという。

グロッシー事務局長によると、現在、ZNPPに駐在するIAEAの原子力安全・セキュリティ・保障措置の専門家4名はサイト管理者から説明を受けた後、欧州最大の原子力発電所(ZNPP)を広範囲にわたって視察し、ここ数か月で最も深刻な事態の一つである土曜日の夕方と日曜日の朝に発生した砲撃の物理的影響を直に評価した。

6基の原子炉の状態は安定しており、使用済燃料、新燃料、低・中・高レベル放射性廃棄物のいずれもが、貯蔵施設で保全されていることが確認されたという。

一方で、IAEAの専門家は依然として広範囲にわたる被害を観測した。グロッシー事務局長は 「世界最大級の原子力発電所に対する攻撃の激しさを明確に示しており、これは大きな懸念材料だ」 と述べた。

チームの観測によると、放射能漏れはなかったが復水貯蔵タンクが損傷、発電所の原子炉に沿った主要道路や使用されていないサイト内の鉄道への数度の衝撃、破片が当たった圧縮空気配管や特別補助建屋の屋根への2度の衝撃、スプリンクラーの充電パイプラインへの軽微な目に見える損傷、そして守衛エリアへの2度の衝撃が含まれていた。

IAEAの調査団によると、運転・保守担当者はすでに一部の損傷の修復を開始しており、週末の攻撃を受けて発電所の職員もサイトの清掃を行っている。

また、IAEAの調査団は、近くのエネルホダル市や工業用地への砲撃はあったものの、夜間や今日までのところ発電所へのさらなる攻撃はなかったと報告した。

上級サイト管理者は別途、IAEAチームにZNPPの原子炉のうち4基は冷温停止状態、2基は温態停止状態のままで、サイトと多くのプラント作業員とその家族が住むエネルホダルに蒸気や温水を供給し続けていると伝えた。

新たな攻撃を受けて、事務局長は発電所周辺の保護エリアの設定に向けた協議を強化した。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-130-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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