ウクライナの原子力発電所の状況 #53


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 135号(現地時間2022129日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は12月9日、国際原子力機関(IAEA)が今週、ウクライナにおける現在の紛争下での原子力事故の危険回避を支援する活動の一環として、ウクライナのフメルニツキー原子力発電所とリウネ原子力発電所へ原子力安全・セキュリティミッションを派遣したと発表した。

2つの専門家ミッションは、IAEAが原子力安全・セキュリティに関して現地での支援のために南ウクライナ原子力発電所を訪問した1週間後と、チョルノービリ・サイトへの同様の訪問の2週間後に実施された。なお、IAEAの専門家は、9月初めからザポリージャ原子力発電所(ZNPP)に常駐している。

グロッシー事務局長は「ZNPPの状況は依然として不安定で、脆弱で潜在的に危険であることから、IAEAは特にZNPP周辺の原子力安全/セキュリティ保護エリアの設定を提案し、原子力事故を防ぐためにできる限りのことをしている。我々のウクライナやロシアとの協議は進展を見せており、保護エリアが早期に合意、実施されることを期待している」「ウクライナの他の原子力発電所も忘れてはならない。彼らはZNPPのように最前線ではないかもしれないが、紛争中であり、潜在的な原子力安全とセキュリティのリスクは明確に存在する。ここ数週間、IAEAの専門家はこれらのリスクを軽減することを目的とした作業を行っており、これは必要な限り継続される」と語った。

今週の専門家ミッションでは、2つの発電所における原子力安全とセキュリティの状況を評価し、IAEAによるフォローアップのため必要な設備や物資などを特定した。このことは、南ウクライナ、チョルノービリを含むこれら発電所での継続したIAEAのプレゼンスを示すことになる。

IAEA専門家は、フメルニツキー発電所とリウネ発電所の運転スタッフが困難な状況にもかかわらず、プロ意識を忘れず、重要な任務に完全に専心していると評価した。原子力安全とセキュリティの確保は、2つの発電所で引き続き最優先されていると専門家チームは述べた。

ウクライナ北西部と西部に位置するこの2つの発電所は、これまでのところ紛争による物理的な被害は受けていないが、停電の影響を受け、バックアップの非常用ディーゼル発電機が一時的に稼働するなど、困難に直面している。

ウクライナからは、機器の納入や、強いストレス下で働くスタッフへの心理的支援の取り組みなど、IAEAの継続的な支援を要請されている。

グロッシー事務局長は「数日から数週間のうちに、今週の専門家ミッションの派遣の間に発電所から出されたリクエストに対処する。我々は、この前例のない紛争下において、ウクライナの原子力施設の保護を支援するために必要な具体的な支援を提供し続ける」と述べた。

今週、ZNPPに過去数週間駐在したIAEA専門家チームと交代する、新しいチームが到着した。9月1日にZNPPに対するIAEA支援・調査ミッション(ISAMZ)が発足して以来、4番目となるIAEAチームである。

サイトには、唯一の750kVの外部送電線を通じて外部電力が供給されており、近くの火力発電所からの330kVのバックアップ用の送電線も利用可能である。1〜6号機の状況に変更はなく、5号機と6号機は温態停止状態のままで、サイトに必要な蒸気と地域暖房の熱を生産している。

11月19、20日の砲撃による損傷は、安全上の懸念がない一部の軽微な損傷を除き、修復作業が完了している。火力発電所の330kV開閉所では現在も修理が続いている。

これとは別に今週、IAEAが対応支援ネットワーク(RANET)を通じて組織した、5回目となるウクライナの原子力施設への支援物資がウクライナに搬入された。この配送は、ドイツからの寄付により実現した。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-135-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

お問い合わせ先:情報・コミュニケーション部 TEL:03-6256-9312(直通)