ウクライナの原子力発電所の状況 #55


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第137号(現地時間2022年12月23日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)周辺に原子力安全/セキュリティ保護エリアを設定するための外交努力は前進しており、早期に合意し、実施することをめざしていると発表した。

グロッシー事務局長は12月22日、モスクワでロシア国営原子力企業ロスアトムのアレクセイ・リハチェフ総裁らロシア政府高官と会談した後、このように述べた。同事務局長は以前、キーウでウクライナ高官と数回にわたり、懸案の保護エリアについて議論している。今後も協議は継続される。

昨日ロシアの首都で行われた数時間に及ぶ会合についてグロッシー事務局長は、「ザポリージャ原子力発電所の保護エリア設定について必要な議論を行うための別のラウンド」としたうえで、「保護エリアは、原子力事故の防止にのみに焦点を当てることが重要だ。この目標に向かって、私は最大限の危機感を持って努力を続けている」と述べた。

この計画は、ヨーロッパ最大の原子力発電所であるZNPPを中心としたエリアへの砲撃を止めることで、原子力事故の防止につなげるというもの。約1か月前に激しい砲撃を受けて以来、ここ数週間発電所自体は比較的平穏だが、施設周辺では依然として軍事行動が展開されており、原子力の安全性とセキュリティ上のリスクが続いていることを浮き彫りにしている。

グロッシー事務局長は、「ウクライナ戦争でこれまで何度も経験したように、状況は突然、そして劇的に悪化する可能性がある。発電所は大規模な戦争の最前線に位置している。状況は極めて不安定で潜在的に危険であり、保護エリアは早急に必要である」と述べた。

ZNPPでは、IAEAザポリージャ支援・調査ミッション(ISAMZ)から330kVのバックアップ送電線が切断されたと報告された翌日の12月14日に、同送電線は送電網に再接続された。ZNPPは現在、750kVのメインとなる外部電源の送電線とバックアップの送電線の両方から、原子力安全とセキュリティに不可欠な機能維持に必要な電力を受けている。

12月16日、ドニプロ川北側での砲撃により、ZNPPのオンサイトの電力系統が約2時間不安定になったが、外部電源の喪失やプラント機器への影響はなく、すべてのシステムが稼動していた。

ISAMZが以前報告したとおり、ZNPPのスタッフは依然として人員が不足している。ISAMZによると、ZNPPのスタッフだけでなく、近隣のエネルホダル市の住民も、この地域で続いている軍事衝突によって心理的ストレスを受けているという。人員減少や砲撃による被害の修復、原子力発電所の安全性とセキュリティ確保などにより、スタッフの業務負担は増加している。グロッシー事務局長は、ZNPPのスタッフが直面しているプレッシャーが、原子力安全とセキュリティに潜在的な影響を与えることに、繰り返し深刻な懸念を表明している。

熱出力1,000〜6,500kWの移動式ディーゼル燃料ボイラー9台がZNPPに納入され、設置作業が行われている。すでに4台が稼動している。9台のボイラー(合計熱出力3.4万kW)が、ZNPPサイトとエネルホダルに熱供給する。さらにエネルホダルに、合計熱出力7万kWのボイラーが設置される予定だ。

ZNPPには外部電源が利用できない場合に備え、スタンバイモードの固定式非常用ディーゼル発電機20台がある。さらに冗長性とバックアップ能力を高めるため、1,000kWの移動式ディーゼル発電機7台が現在試験/設置されている。そのうち2台はすでに1基の原子炉に接続され、スタンバイモードになっている。残りの5台の移動式発電機は、他の原子炉に接続される予定である。

IAEAは12月20日、凍結温度が原子炉冷却システムの外部コンポーネントに及ぼす可能性のある影響について検討した。IAEAチームは、現在の氷点下に達する気温は、現時点ではサイトの原子力安全とセキュリティに大きな影響を与えないとの結論に達した。

貯水池から原子炉に冷却水を導く流入路付近には氷は確認されなかったが、冷却水出口付近では薄い凍結層が確認された。12月20日の冷却水貯水池の大半の水温は、約6℃と氷点下以上であった。

またIAEAミッションによると、ロシアの原子力規制当局であるRostekhnadzor(連邦環境・技術・原子力監督局)が、ZNPPに交代でチームを送り込む計画であることを報告した。

IAEAは先週、ウクライナのデニス・シュミハリ首相とグロッシー事務局長が合意したとおり、チョルノービリのほか、フメルニツキー、リウネ、南ウクライナの4つの原子力施設にIAEAチームを常駐させる準備を進めている。これらのミッションは、高いレベルの原子力安全とセキュリティを維持し、原子力事故や事故のリスクを低減するために、必要に応じて技術支援と援助を提供することを目的としている。

12月16日、ウクライナ全土で大規模な砲撃が発生した。これにより、フメルニツキーとリウネ原子力発電所の出力が低下し、南ウクライナ原子力発電所は電力網から切り離された。いずれの全原子力発電所も外部電源喪失には至っていない。現在、これら3つの原子力発電所で9基の原子炉すべてが再び運転中である。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-137-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine-0



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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