ウクライナの原子力発電所の状況 #61


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 144号(現地時間2023126日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長によると、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)に駐在するIAEAの専門家チームが、現在進行中の紛争の最前線に位置するZNPPサイト近郊で軍事活動が行われていることを示す大規模な爆発が、サイト外で発生していることを確認している。

ここ数日から数週間ほぼ毎日、ZNPPのIAEA原子力安全・セキュリティ チームは、そうした爆発についてウィーンの本部に報告している。欧州最大の原子力発電所 ZNPPから少し離れた場所で発生したと思われる爆発もあれば、施設自体の近くで発生したと思われる爆発もある。1月25日、現地時間の午前10時頃に計8回の大規模な爆発音が聞こえ、事務棟の窓が振動し、本日はさらに多くの音が聞こえた。

グロッシー事務局長によると、ZNPP付近での軍事行動は、サイト周辺の原子力安全およびセキュリティ保護エリアの設定に早急に合意し、実施することが極めて重要であることをさらに強調していると述べた。保護エリアは、ZNPPが標的にされず、サイトからの攻撃に使用されないようにすることで、ZNPPを保護するのに役立つであろう。

事務局長は、保護エリアについて先週、キーウでウォロディミル・ゼレンスキー大統領と協議した。ロシア側との協議も継続する予定で、今週初めにブリュッセルで開催されたハイレベル会合で、欧州連合の外務大臣を交えた緊急協議の必要性を強調した。

事務局長は欧州議会で、「私は、ザポリージャ原子力発電所に原子力の安全とセキュリティ保護エリアを設置することを何か月も求めてきた。 欧州を含む多くの世界の指導者からの強力な支援に感謝しているが、それ以上の支援が必要である。もはや一刻の猶予もない」と語り、ウクライナとロシアとの交渉は軍事作戦も絡むため、複雑になっていると繰り返した。

グロッシー事務局長によると、送電線を通じた外部電力の供給は引き続き脆弱である。ZNPPでは、6基の原子炉が停止中であり、2基は引き続き温態停止状態でZNPPと近郊のエネルホダル市に蒸気と熱を供給している。またZNPPは、原子力安全とセキュリティ機能に必要な外部電力を、最後に稼働していた750kVの主外部電源と330 kVのバックアップ用送電線1本に頼っている。外部電源が失われた場合、サイトの20 台のディーゼル・バックアップ発電機はすべて、原子力安全およびセキュリティの全関連機器に必要な電力を供給する準備ができている。

事務局長はまた、今週ブリュッセルで、ウクライナの他の原子力施設にIAEAの原子力安全・セキュリティミッションを常駐させることをEUに通知した。事務局長は先週、南ウクライナとリウネ発電所、およびチョルノービリ・サイトでのIAEA国旗掲揚式に個人的に出席した。今週初め、IAEAミッションもフメルニツキー発電所に到着した。

事務局長は、「IAEAは現在、ウクライナのすべての原子力発電所とチョルノービリにチームを常駐させている。チームは技術的支援やアドバイスを行い、発電所のニーズを評価し、その結果をウィーンの本部に報告している。チームの存在は、この悲劇的な戦争中にウクライナにおける原子力安全とセキュリティ確保に向けた取り組みの重要なマイルストーンとなる。」と語っている。

ウクライナがIAEAに報告し、サイトのIAEAチームによって確認されたところによると、エネルギー・インフラへの砲撃の影響で、ウクライナでは本日、原子力発電量を削減した。

グロッシー事務局長によると、施設に到着して以来IAEAの専門家は現場視察を実施しており、今後も継続する予定である。今週初め、一部の施設で軍事物資が保管されているという主張があったが、チームは、そのような原子力安全とセキュリティの取り決めと矛盾するものは何も見受けられないと否定。原子力発電所サイトへのプラント機器と供給品の定期的な配送があり、リウネ発電所のIAEAチームは交換タービンローターの近日中の配送を予定していると付け加えた。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-144-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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