ウクライナの原子力発電所の状況 #62


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第145号(現地時間2023年2月3日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA事務局長は本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)に冷却水を供給しているドニプロ川の主要貯水池の水位が最近低下しており、現在の紛争が同国の原子力安全とセキュリティに不可欠なインフラに悪影響を与えていることが改めて明らかになった、と述べた。

戦闘地域の最前線に位置する欧州最大の原子力発電所ZNPPに駐在するIAEA専門家チームは、カホフカ貯水池の水位が低下していることを報告した。しかし、設計上、ZNPPの原子炉の隣にある大きな冷却池は、カホフカ貯水池の水位よりも高い位置に保たれている。

グロッシー事務局長は、「水位低下は、直ちに原子力安全とセキュリティを脅かすものではないが、この状況が続けば懸念材料になりかねない。ZNPPに多くの潜在的なリスクがあることを改めて示し、その安全とセキュリティが脆弱であることを強調するものである」と語った。

またグロッシー事務局長は、ここ数週間、IAEAの専門家は、発電所付近での砲声をたえず耳にしており、施設周辺の原子力安全/セキュリティ保護エリアの必要性を浮き彫りにしている、と述べた。

事務局長は、保護エリア設定の早期合意、実施をめざしてウクライナ、ロシア双方と協議を継続しているという。協議は一定の進展が見られるものの、依然として進捗が遅すぎるため、あらゆる関係者による断固とした取組が必要であるとした。

事務局長はまた、紛争中にZNPPのスタッフが直面しているストレス、特にスタッフの技能レベルが低下し続けていることについて、引き続き懸念を表明した。ISAMZチームは、あらゆる課題が山積するなか、ZNPPには現在のプラント機能レベルで全基の安全運転を維持するための十分な運転スタッフがいるとの情報を得ている。IAEAはまた、ZNPPのスタッフの多くが住むエネルホダルで爆発があったというメディアの報道についても承知している。

ZNPPの原子炉について、運転状況は前週と変わらず、6基中、4基は冷温停止状態、2基はプラントと近隣のエネルホダル市に蒸気や熱を供給するための温帯停止状態となっている。また、原子力発電所の安全とセキュリティに必要な外部電力は、最後に稼働している750kVの主電外部送電線から供給されており、330㎸のバックアップ送電線も1系統利用可能である。外部電源が失われた場合、サイトにある計20台のディーゼルのバックアップ発電機が、すべての原子力安全とセキュリティ関連機器に必要な電力を供給できるように準備されている。とはいえ、ZNPPの送電網からの電力供給は依然として脆弱である、とグロッシー事務局長は述べた。

南ウクライナ、リウネ、フメルニツキー、チョルノービリの各原子力サイトに配置されたIAEAの常駐チームは、技術支援と助言、発電所のニーズの評価を続け、その結果をウィーンの本部に報告している。IAEAチームは交代を開始しており、リウネ原子力発電所にはすでに新しいチームが到着した。他の原子力発電所にも数日中に新しいチームが到着する予定である。

先週、フランスから寄贈されたウクライナ国家緊急事態庁向けの個人防護装備が、ウクライナに届けられた。これは、カナダからの資金援助により調達されたリウネ原子力発電所向けの自動電話交換機の拡張装置に続くものである。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-145-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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