ウクライナの原子力発電所の状況 #63


ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 146号(現地時間2023210日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は今週、モスクワでロシア政府高官と会談し、ウクライナのザポリージャ原子力発電所 (ZNPP) 周辺における原子力安全/セキュリティ保護エリアの合意と設定に向け協議を行った。ZNPPでは、IAEA 専門家チームの予定されていたスタッフの交替が軍事活動の活発化で遅れている。

キーウでウォロディミル・ゼレンスキー大統領や他のウクライナ政府関係者とも協議したグロッシー事務局長は、木曜日の午後にモスクワに到着した後、国営原子力企業ロスアトムのアレクセイ・リハチョフ総裁、ロシアの関連省庁と会談し、本日、外務省でさらなる協議を行った。

グロッシー事務局長はウィーンのIAEA本部に戻る際、「我々は、キーウ及びモスクワの双方において、一刻も早い保護エリアの設定を目指し、断固たる外交交渉を継続している。今週のモスクワでの会議はこの点で重要であり、ロシア政府高官と計画について詳細に議論することができた。時間が掛かっているが、私は保護エリアが設定される希望を捨てていない。ウクライナ内外の原子力安全とセキュリティのためにも、保護エリア実現まで努力を続ける」と述べた。

軍事活動により、過去1か月間ZNPPに駐在していたIAEAチームの予定されていた人員交替が延期されたことで、不安定な状況と防護措置の重要性が今週再び強調された。グロッシー事務局長は、昨年9月1日、ZNPPに対するIAEA支援/調査ミッション (ISAMZ) を派遣し、現在のチームは通算5番目である。交替時には、IAEAチームは最前線を横断してウクライナの支配地域に入らねばならない。

グロッシー事務局長は「欧州最大の原子力発電所であるZNPP周辺は、激しい戦闘地域であるため、不安定で予測不可能な状況が続いている。予定されていた交替の延期は、ZNPPとそこで働く人々を守るための緊急措置の必要性をあまりにも明確に示している」と述べた。

これとは別に今週、ウクライナ国家原子力規制検査局 (SNRIU) はIAEAに対し、ZNPPの発電再開を許可するのはウクライナの管理下に戻され、徹底的な検査プログラムとZNPPを安全な運転状態に回復するために必要と考えられる措置の実施が完了した後に限られると通知した。現在、同原発の6基の原子炉は冷温または温態停止モードにある。

本日、SNRIUはIAEAに対し、ウクライナで運転中の3か所の原子力発電所 (NPP) のうち2か所 (リウネと南ウクライナ) で、同国のエネルギーインフラに対する新たな砲撃があったため、予防措置として出力を低下したとも伝えた。砲撃によって電力網が不安定となり、フメルニツキー発電所の原子炉の1つが停止した。これらの事態は、発電所に派遣されているIAEA支援/調査ミッションによって確認され、また、フメルニツキーのすべての原子力安全システムが期待通りに機能していることが確認された。

IAEAはまた、ウクライナの原子力安全とセキュリティ確保を支援するために、機器の搬入のスケジュール調整を続けている。今回の9回目の搬入で、SNRIUは本日、米国の特別拠出金からIAEAが調達した機器を受け取った。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-146-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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