ウクライナの原子力発電所の状況 #64


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第147号(現地時間2023年2月20日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)に駐在するIAEA専門家のチーム交代を円滑に進めるべく、すべての関係者が建設的に取り組むよう訴えた。今月のIAEA専門家の交代は既に遅れており、専門家らは現在も紛争の最中、原子力安全・セキュリティを確保するためにザポリージャで活動している。

グロッシー事務局長は、ヨーロッパ最大の原子力発電所であるZNPPに対するIAEA支援/調査ミッション(ISAMZ)が継続して駐在することの重要性を指摘し、同ミッションは約半年前の設立以来、世界的な評価と支持を得ていると強調した。

しかし、交代チームは既にウクライナ入りしているものの、1月初旬からZNPPに駐在している3人のISAMZ専門家の交代が予定より2週間以上遅れている。

「ウクライナの原子力安全とセキュリティの状況、とりわけZNPPにおいて、危険かつ予測不能な状態が続いている。ISAMZは、6基の原子炉を有する主要な原子力施設を守るために重要な役割を担っている。ISAMZの存在は、原子力安全とセキュリティの維持に寄与しており、それはすべての人の利益となるものである。IAEAは、できるだけ早くスタッフの安全な交代を実施するために全力を尽くしている。彼らの安全とセキュリティは私の最優先事項だ」とグロッシー事務局長は語った。

事務局長は対立する両者の立場を認識しているとしたうえで、「ウクライナや世界中の人々にとって、このミッションの重要性を念頭に置きつつ、実践的な精神でこれに取り組むことが重要である」と述べた。

グロッシー事務局長は昨年9月1日にISAMZを設立し、今回のIAEAチームは通算5番目となる。交代時には、IAEAチームはウクライナとロシアの支配地域の最前線をわたる必要がある。

「ZNPPにいる我々のスタッフは、ZNPPのスタッフとともに、広く国際社会から尊敬と称賛を集めている。我々は皆、極めて困難で厳しい状況下で彼らが行っている仕事に感謝している。我々は、彼らがこの重要な原子力安全とセキュリティのミッションを遂行し続けることができるよう、支援しなければならない」とグロッシー氏は述べた。

グロッシー事務局長は、日曜日にZNPPの近くでさらなる砲撃があり、土曜日には南ウクライナ原子力発電所(SUNPP)の近くにミサイルが飛来したと報告され、ウクライナの原子力安全とセキュリティの不安定な状況が週末に再び明らかになった、と述べた。

土曜日にウクライナ全土で行われたミサイル攻撃により、運転中の3つの原子力発電所すべての出力が低下した。これはウクライナからIAEAに報告され、現地にいるIAEAチームによって確認された。日曜日までに、原子力発電所の出力レベルは回復している。

事務局長は、ウクライナとロシアとの交渉が期待したよりも遅々として進捗しないとしても、根強い原子力安全とセキュリティのリスクに鑑み、できるだけ早期にZNPP周辺の原子力安全およびセキュリティ保護エリアの設定に合意し、実施する決意に変わりはないと述べた。

「保護エリアが確立されるまで、私は外交努力を続ける。事実上毎日、ZNPPに対するさらなる防護措置の必要性を思い知らされている」と述べた。

この週末、予定されていたIAEAのチョルノービリ支援/援助団(ISAMICH)の専門家のローテーションが完了し、SUNPPとフメルニツキー、リウネ原子力発電所のチームは今後数週間で交代する予定である。

IAEAチームは、武力紛争中の原子力安全とセキュリティ確保のための IAEAの7つの不可欠な柱に照らして、すべてのサイトの原子力安全とセキュリティの状況を継続的にレビューし、原子力施設に対するさらなる支援の特定を行う。

IAEAは、ウクライナの原子力安全とセキュリティの確保を支援するため、機材の納入を継続的に企画、調整している。このたび、10回目となる機材の搬入が行われた。今回の納入では、リウネ原子力発電所とエネルゴアトムに、英国からの特別拠出金によりIAEAが調達した携帯型分光器が提供された。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-147-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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