ウクライナの原子力発電所の状況 #69


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第152号(現地時間2023年3月30日)[仮訳]

今週ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)を訪問した国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は、この地域で軍事活動が活発化するなか、欧州最大の原子力発電所ZNPPの原子力安全とセキュリティが危険に晒されているとの認識を示した。

グロッシー事務局長は、ウクライナでの軍事紛争中にZNPPが継続して直面しているリスクに鑑み、6基の原子炉を守り、ウクライナやその他の地域の人々、そして環境に深刻な影響を与える可能性のある原子力事故を防ぐために外交努力を進める決意は変わらないと述べた。

同事務局長は月曜日、ザポリージャの町でウォロドミル・ゼレンスキー ウクライナ大統領と会談した際にこの問題について協議し、さらなる協議を進めるため、再びロシアを訪問する可能性を示唆した。

事務局長はここ数か月、ZNPPの原子力安全とセキュリティを確保するための提案について両国と協力してきたが、この重要な目的を達成するための計画は、発電所の周囲に保護エリアを設定するという当初の提案から発展し、現在は領土的な側面よりも、発電所の保護を確実にするために避けるべきことについて、より重点を置いていると述べた。

「協議は現在進行中である。原子力発電所はいかなる状況下でも攻撃されるべきではなく、また他者を攻撃するために利用されるべきではないという基本原則に合意することが大変重要である」「原子力事故による放射線災害からは、誰も免れない」とグロッシー事務局長は語った。

グロッシー事務局長が、前線を超えてZNPPを訪問したのはこれで2回目であり、昨年9月1日にウクライナ南部の同サイトにIAEA専門家を常駐させて以来初めてとなる。

グロッシー事務局長は水曜日の訪問で、前回の訪問以来、特に11月の砲撃時に受けたプラントの損傷を自分の目で確認することができたと述べた。ZNPPはまた、度重なる停電に見舞われ、原子炉冷却やその他の安全上重要な機能維持のために一時的に非常用ディーゼル発電機に頼らざるを得なくなった。

ZNPPで同事務局長は、プラントに残るスタッフの数が減少していることなど、現在の困難な状況について幹部と議論した。

グロッシー事務局長は、「今回の訪問は、事態の深刻さを私自身が判断するために不可欠なものだった」とし、この地域で軍事的プレゼンスが拡大していることの明確な兆候にも言及。「この地域全体で軍事活動が活発化しているのは誰の目にも明らかだ。この地域は前線ということもあり、おそらくより危険な局面に直面している」と述べた。

事務局長の今回の訪問は、2月の交代が1か月ほど遅れるなど専門家が直面した極めて厳しい状況を受け、IAEA専門家の定期的な交代が維持、改善されることの確認も目的としている。

今回、IAEAの新しい専門家グループが同行し、今後数週間ZNPPに駐在する。7か月前にIAEAザポリージャ支援/調査ミッション(ISAMZ)が設立されて以来、このようなチームがZNPPに駐在するのは7回目である。今回プラントを離れた第6次ISAMZチームの専門家らは、数週間にわたってサイト状況のモニタリングや技術的なアドバイスの提供、IAEA本部への報告などを実施していた。

グロッシー事務局長は、「我々はチームを交代させることができた。今、新しいチームがここでその仕事を継続していく。これこそがとても重要なことである」と語った。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-152-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine



※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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