ウクライナの原子力発電所の状況 #81


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第163号(現地時間2023年6月8日)[仮訳]

国際原子力機関 (IAEA) のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長が本日明らかにしたところによると、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)では、ポンプがもはや作動できないと以前に推定された水位に達しているものの、カホフカ貯水池からの冷却水の汲み上げを継続している。

6月6日未明に下流のダムが決壊して以来、貯水池の水位は約4.1m低下し、現地時間の本日午後6時には約12.7mに到達、この水位はZNPPの原子炉6基と使用済燃料の冷却のためにこの水域にもはやアクセスできず、その後は代替水源を使用することになるとされていたレベルである。

グロッシー事務局長は、ZNPPのIAEAチームのデータを引用し、1時間当たりの低下率は依然として4~7cmの範囲にあると述べた。

IAEA専門家らは本日、ZNPPによる検討の結果、貯水池の水位が12.7mを下回った後も貯水池から水を汲み上げることができると評価したとの報告を受けた。これまでのところ、水位が約11m、またはそれ以下になっても、ポンプを作動させることができる可能性が高いという結果が得られている。

ZNPPは近郊のザポリージャ火力発電所 (ZTPP) の冷却システムを経由して貯水池から水を受け取っているため、1980年代のZNPP建設以前の、1970年代のZTPP建設当時からこの施設の冷却システムの設計に関する経験と専門知識を持つ退職したZTPPスタッフへのインタビューを含むレビューが行われた。

グロッシー事務局長は、「これらの困難で厳しい状況下において、ZNPPに必要な冷却水を数か月間供給できる発電所の隣にある大きな冷却池や小さなスプリンクラー冷却池、隣接する水路、サイト内の井戸などの代替給水に切り替えるまでに、貯水池からの取水継続により時間稼ぎができる」「とはいえ、原子力安全とセキュリティの全般的な状況は、依然として非常に不安定で、潜在的な危険があることに変わりはない」と述べた。

来週ZNPPを訪問予定の同事務局長は、ダムの被害の程度は依然として不明であり、貯水池がいつ、どのレベルで安定するかも明らかではないと強調した。

状況をより正確に評価するために、IAEAの専門家らは、貯水池の水位が測定されている場所と、ZNPPに隣接するZTPPの放水路へのアクセスを要求している。

「IAEAザポリージャ支援/調査ミッション(ISAMZ)チームが、ZNPPに冷却水を供給するシステムの状態を独自に検証できることが重要だ」とグロッシー事務局長は述べた。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-163-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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