ウクライナの原子力発電所の状況 #88


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第171号(現地時間2023年7月5日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシーIAEA(国際原子力機関)事務局長は本日、ザポリージャ原子力発電所(ZNPP)に駐在するIAEAの専門家がここ数日から数週間にわたり、大型冷却池の外周の一部を含む施設の一部を視察しているほか、サイト内の定期的な調査を実施しているが、これまでのところ地雷などの爆発物について目に見える痕跡は確認されていないことを明らかにした。

グロッシー事務局長によると、IAEAの専門家らは、サイトに地雷などの爆発物がないことを確認するために必要な追加の立ち入りを要請しているという。特に、3、4号機の屋上への立ち入りが不可欠であり、またタービン建屋の一部や冷却システムの一部への立ち入りも必要である、と同事務局長は述べた。

グロッシー事務局長は、ZNPPを取り巻く軍事状況に関するここ数日の疑惑を受けて、IAEAチームが、現在の軍事紛争中に欧州最大の原子力発電所(ZNPP)を保護するための5つの基本原則が完全に遵守されていることを監視するために、ZNPPのあらゆる部分をチェックすることの重要性を強調した。

グロッシー事務局長は、「この大規模な原子力発電所が立地する地域で軍事的緊張が高まるなか、我々の専門家は現地で事実を検証しなければならない。彼らの独立した客観的な報告は、現在のサイトの状況を明らかにするのに役立つだろう。未確認の疑惑に惑わされないためにも、この時期に必要なことだ」と述べた。

以前指摘したように、IAEAは、ZNPP内あるいはその周辺に地雷などの爆発物が仕掛けられているという報道を承知している。

グロッシー事務局長が5月30日の国連安全保障理事会で提唱したZNPPの保護のための5つの基本的な原則は、プラントから攻撃しない、またはプラントを攻撃しない、プラントを多連装ロケットランチャー、大砲システムと武器弾薬、戦車などの重火器の貯蔵所、基地として使用しないことなどを提示している。

グロッシー事務局長によると、IAEAチームからはここ最近、砲撃や爆発の報告はなく、現場での軍の動向に変化はないとの見方を示した。

これとは別に、IAEAチームは、唯一残る750kVの主要外部送電線が突然切断されてから約12時間後の昨日午後、ZNPPに再接続されたことを報告している。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-171-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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