ウクライナの原子力発電所の状況 #89


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第172号(現地時間2023年7月7日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)のサイト内でIAEAの専門家が追加の立ち入り調査を実施したが、これまでのところ地雷や爆発物を目視確認できなかったと明らかにした。

IAEAの専門家たちは、ここ数日から数週間、施設の一部を視察し、サイト内の定期的な監視を続けているが、昨日は、ZNPPの大型冷却池の周囲を以前よりも広い範囲でチェックすることができた。

その一環として、1か月前に下流のダムが破壊された後の冷却池とカホフカ貯水池を隔てる隔離ゲートを視察した。ゲートは土嚢と砂で補強されており、冷却池から水は漏れていないようだった。専門家たちは、近くにあるザポリージャ火力発電所(ZTPP)の放水路と貯水池を隔てるゲートも視察した。この放水路と貯水池には、ZNPPの冷却に必要な水が蓄えられている。

「私たちの要請を受けて、専門家たちは追加立ち入りをしたが、これまでのところ、地雷や爆発物は確認されていない。しかし、3号機と4号機の屋上やタービン建屋の一部などへ、さらなる立ち入り調査が必要である。私は、すぐに立ち入りが許可されることを望んでいる。この点に関する進展については、引き続き報告する」とグロッシー事務局長は語った。

先に指摘したように、IAEAは、現在ウクライナの軍事紛争の最前線に位置するZNPPとその周辺に、地雷やその他の爆発物が仕掛けられているという報道を承知している。

事務局長は、6基の原子炉が停止したままの欧州最大の原子力発電所を保護するための5つの基本原則が完全に遵守されていることを監視するため、IAEAチームがZNPPのあらゆる箇所をチェックできることの重要性を改めて強調した。

グロッシー事務局長が5月30日の国連安全保障理事会で提唱したZNPPの防護のための5つの基本原則は、プラントから攻撃しない、またはプラントを攻撃しない、プラントを多連装ロケットランチャー、大砲システムと武器弾薬、戦車などの重火器の貯蔵所、基地として使用しないことなどを提示している。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-172-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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