OECD/NEA・IAEA 共同報告書「ウラン2022――資源、生産、需要」ポイント紹介

2023年5月18日

OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)は2023年4月3日、報告書「ウラン2022――資源、生産、需要」(第29版)を発表しました。本報告書は、OECD/NEAとIAEA(国際原子力機関)が共同で、1960年以降ほぼ定期的に(最近は2年に1度)世界のウラン資源、生産、需要についての最新情報(今回は2021年1月1日時点)をとりまとめているものであり、通称「レッドブック」と呼ばれています。

今回の報告書の結論は、以下のとおりです。

  • 原子力発電の継続的な利用、発電およびその他の用途(例:熱利用、淡水化、水素製造)のための原子力発電設備容量の大幅な成長を長期的に支援するための、十分なウラン資源は存在する。
  • 2020年のウラン需要量からすると、既知資源(確認資源+推定資源)は、130年以上にわたるウラン需要を満たすことができる(確認資源=鉱床の規模・品位・形状が明らかなもの、推定資源=鉱床の規模・特性に関するデータが不十分なもの)。 
  • ウラン資源を核燃料用の精製ウランにするためには、有利な価格を維持する必要があり、またタイムリーな投資と技術的な専門性が必要である。
  • 世界のウラン需要は今後数十年間、特に新興国の需要を満たすために増加し続けることが予想される。原子力は、競争力のある価格で低炭素なベースロード電力を生産し、エネルギー・セキュリティを強化するため、低炭素なエネルギー供給ミックスにおいて重要な要素であり続けると予測される。
  • 北米の豊富な低コストの天然ガスとリスク回避的な投資環境は、自由化された一部の電力市場において原子力発電の競争力を低下させている。低炭素電力を生み出す利点と原子力発電所が提供するエネルギー・セキュリティを認識する政府と市場の政策は、こうした競争圧力を緩和するのに役立つ。
  • 2021年と2022年には、エネルギー自給のための戦略的資源としての原子力に対する認識が多くの国々で変化し始めており、最近の政府の原子力政策の変更に反映されている。これは、地政学的状況の変化がもたらした2022年の劇的な欧州エネルギー危機も影響している。

下記に主なポイントと図表を紹介します。


資源量

2021年1月1日現在、<260US$/kgUで回収可能なウランの既知資源(発見済みの資源)は7,917,500tU。2019年以降、約2%減少した。減少の主な理由は、カザフスタンとカナダにおける資源の減少やウラン資源の再評価など(例えば、過去に合理的に確実と見られていたウラン資源が鉱床の規模・特性に関するデータ不足のために格下げされたり、コストの高いカテゴリーに再割り当てされたりするなど)によるもの。

探鉱と鉱山開発

ウラン探鉱と鉱山開発の世界の支出は数年来の減少傾向を継続し、2014年の20億米ドル超、2018年の約5億米ドルから、2020年には約2億5千万米ドルに減少。支出は2011年半ば以降、ウラン市場の停滞が続いていることから、減少し続けている。但し、2021年の支出は2020年から10%増加(速報値)。

生産

世界のウラン生産は、生産者の減産により2018年の53,501tUから2020年の47,342tUと12%減少し、その後の2021年には47,472tUとわずかに増加。カナダやカザフスタンなどの主要生産国は、ウラン市場の低迷を受けて近年、全体の生産量を制限している。 2020年初頭に発生した世界的なCOVID-19パンデミックにより、ウランの減産が急速に進行した。一時休止中の鉱山は、適切な市場条件が整えば、比較的速やかに操業再開できる可能性がある。

ウラン生産の環境および社会的側面

ウラン生産は、中期的には世界のウラン需要を満たすために拡大が予測されており、安全な操業慣行の開発や環境影響の最小化への取組が継続的になされている。

ウラン需要―原子力発電の見通し―

世界のエネルギー需要が増加し、クリーンエネルギー移行の必要性が高まっているため、原子力発電設備容量は当面増加すると予想。高予測では、世界の原子力発電規模は2021年の3.93億kWから、2040年には6.77億kWに増大する。この場合、年間ウラン需要は、2021年の約60,100tUから2040年には108,200tUに増大する。年間ウラン需要は地域毎に大きく異なり、2040年までには東アジア地域で最大になると予測。 

需給関係

現在のウラン資源は、高予測の場合でも2040年までのウラン需要を十分に供給して余りあるが、資源を生産に回すためにはタイムリーな投資が必要である。高予測の場合、2040年までの累積需要は、<130US$/kgUで回収可能な既知資源量の約26%、<80US$/kgUで回収可能な既知資源量の約80%に相当する。2020年の世界のウラン生産量は世界のウラン需要の79%近くをカバーしており(2019年は約86%をカバー)、残りは二次供給源(過去の在庫や再処理、解体核ウランなど)から供給されている。

 

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