中国原子力フォーラム参加及び中国訪問団派遣概要 

2025年 5月 7日 

当協会及び会員企業から結成される訪問団一同(全8名)は、2025年4月24日(木)~29日(火)の日程で中国の原子力産業協会「中国核能行業協会(CNEA)」が主催する、中国原子力開発フォーラム―2025年国際サミット春(China Nuclear Energy Sustainable Development Forum—2025 Spring International Summit)(CNESDS)及び、並行して開催された第16回中国原子力産業国際展示会(China International Exhibition on Nuclear Power Industry)(CIENPI)に参加し、合わせてJAIFブースを出展しました。また、CNEAの協力のもと、中国の原子力関係施設への視察も行いました。 

【中国原子力開発フォーラム―2025年国際サミット春 

新エネルギーシステムにおける原子力の役割、安全性、持続可能な発展、ならびに技術革新とデジタル変革をテーマに開催されました。 

初日のメインフォーラムに加え、フォーラム2日目以降は「イノベーションと開発」「デジタル変革」に関するサブフォーラムが設けられ、国内外の政府関係者、専門家、学術機関、産業界から約60名(うち海外から16名)が登壇し、政策・制度改革、技術革新、産業チェーンの高度化、国際連携のあり方など、多様な分野での最新の取り組みが共有されました。総参加者数は約700名に上り、34社約40名以上のメディア関係者も取材に訪れました。 

オープニングセッションでは、CNEA理事長であり、中国広核集団(CGN)会長でもある楊昌利氏が演説。世界が未曽有の変革期にある中で、原子力分野における国際的な連携がかつてない重要性を持っていることを強調し、中国は「互恵・共栄」に基づくオープンな協力を通じて、原子力安全や持続可能な発展への国際的貢献を一層強めていくと述べました。 

メインフォーラムでは当協会の増井理事長が登壇し、「日本における原子力発電の現状と展望」と題して、第7次エネルギー基本計画が策定され、原子力発電所の新設に道が開かれたエネルギー政策に触れつつ、日本国内で研究開発が進む次世代炉の進捗状況について講演しました。 

メインフォーラムの締めくくりでは、CNEAの曹述棟常務副理事長が登壇し、「原子力は持続可能な開発目標(SDGs)達成の鍵となるエネルギーであり、安全性・イノベーション・国際協力の3要素が未来の原子力発展を導く」と総括しました。 

フォーラム会場の様子
楊昌利CNEA理事長の講演 
原産協会増井理事長の講演 
IAEAグロッシー事務局長もビデオで登壇 

【第16回中国原子力産業国際展示会 

中国原子力開発フォーラムと並行して開催された「第16回中国原子力産業国際展示会」は、1995年に中国国務院が創設して以来30周年の節目を迎える、中国の原子力産業界にとって重要なイベントとなりました。 

この展示会は、中国の原子力産業の発展成果を示し、国内外の原子力関連企業の交流・協力を促進する場であり、また一般市民に原子力を理解してもらうための重要な窓口となっています。 

本展示会には、中国の原子力産業を代表する企業を筆頭に59社(うち19社が海外企業・組織)が出展し、初日だけでも来場者数は1万人を超える大盛況となりました。当協会も会場内にブースを出展し、協会としての取り組みを紹介する資料等の配布を行いました。 

展示会初日には、我々訪問団を含む海外からの来賓が展示ツアーに招待され、華龍一号、玲龍一号、高温ガス冷却炉など、中国の原子力開発の成果を展示するブースをメインに、CNEAの龍茂雄副事務局長の案内のもと会場内を見学しました。 

展示会場内(国際エリア)の様子 
来賓向け展示会ツアーの様子
中国主要企業は巨大なブースを出展
原産協会もブースを出展 

【日中意見交換会】 

フォーラム2日目となる4月28日(月)には、我々訪問団と、曹述棟常務副理事長をはじめとする中国の原子力関係者らとの意見交換会を実施しました。 

曹副理事長は、「両協会が長年にわたり良好な協力関係を築いてきたことが、両国の原子力の持続可能な発展や東アジアにおける原子力安全の推進に貢献してきた」と述べ、さらに「原子力の安全には国境がなく、今後も安全分野での交流と協力を深め、地域の原子力安全向上に寄与すべきだ 」と強調しました。 

当協会増井理事長は、第7次エネルギー基本計画の内容に触れ、2040年度までに原子力発電の比率を20%に引き上げ、化石燃料による火力発電の割合を現在の約70%から30~40%に引き下げる方針が示されていることから、日中間の原子力分野での協力には大きな可能性があると指摘しました。 

 また、中国核能電力股份有限公司(CNNP)も本会合に参加し、SOER( Significant Operating Event Report: 運転経験報告)を通じた原子力発電所の産業安全管理の取り組みなどについての日本側との意見交換が行われました。 

曹樹棟常務副理事長
意見交換会の様子 

【視察概要】 

〇秦山原子力発電所 

秦山原子力発電所は、中国浙江省嘉興市海盐県に位置し、中国で最初に建設された商業用原子力発電所です。複数のタイプの原子炉を有する大規模な発電所であり、その建設は第一期(秦山1号機、30万kWeのPWRで中国独自の設計が採用)、第二期(秦山2号機群、改良型PWR(CNP-600)で各炉65万kWeの出力)、第三期(秦山3号機群、CANDU炉(PHWR)を採用し、各炉70万kWeの出力)に分かれています。 

訪問団一行が訪問した科学技術館では、中国における原子力発電の歴史や今後の展望について、幅広く紹介する展示が行われており、一般の来館者にも分かりやすい内容となっていました。当日は多くの地元の学生たちも訪れており、教育的な場としても大いに活用されている様子がうかがえました。 

秦山原子力発電所科学技術館の見学
科学技術館内に保存・展示される
秦山1号機初期の中央制御室什器

        

正午時点での来館人数は600名超(科学技術館)
発電所内での訪問団集合写真 

〇三門原子力発電所 

三門原子力発電所は、中国浙江省台州市三門県に位置し、中国核工業集団(CNNC)が運営する発電所です。米国ウェスチングハウスが開発したAP1000型加圧水型炉(PWR)を世界で初めて採用し、1号機が2018年9月、2号機が同年11月に営業運転を開始しました。各炉は125万kWeの発電能力を持ち、中国東部の電力供給を安定化させる重要な役割を果たしています。 

三門発電所で説明を担当された鄭・原子力安全部部長には、訪問団の参加者からAP1000の設計に関する多くの質問が寄せられ、それら一つひとつに対して丁寧かつ詳細なご説明をいただきました。また稼働中のAP1000の中央制御室に入室し、間近で運転員の方々の業務を視察させてもらえたことは大変貴重な経験でした。 

発電所敷地内にある従業員居住マンション
AP1000の設計について説明を受ける訪問団 
模型を用いた拡張計画の説明
協力企業訪問を受け入るための敷地内ホテル 
AP1000の中央制御室内での説明
発電所内での集合写真

【総括】 

今回の中国訪問を通じて、新規建設プロジェクトの進展や次世代技術の研究開発の状況から、中国原子力産業の勢いを強く感じました。また、原子力安全対策への取り組みや、先進分野における日中協力の可能性の大きさも実感することができました。日本でもエネルギー政策の大きな転換が進められる中、急速に発展を遂げる中国の原子力産業界との交流の重要性は、今後さらに高まっていくものと考えられます。当協会としても、今後の日中協力の継続に力を注いでまいります。 

以上 

お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)