第9回日英原子力産業フォーラム概要報告
2025年10月7日(火)、英国ビジネス・通商省および駐日英国大使館が主催し、英国市場協議会、英国原子力産業協会 (NIA)、および当協会の後援により第9回日英原子力産業フォーラムが駐日英国大使館大使公邸にて開催されました。 2017年にスタートし、9回目となる今回は、英国と日本の関係機関および企業の関係者を合わせて約100名、レセプションには約150名が参加しました。
本年は廃止措置、廃棄物管理をテーマとして開催され、開会にあたりロングボトム大使は、「日本初の商業炉が英国設計であったことに始まり、使用済み燃料の再処理、新規建設、先進原子力や核融合技術に至るまで、両国の原子力分野での協力には長い歴史があります。福島第一原子力発電所の廃炉に関して、日本が燃料デブリの試験的取り出しを成功させたことは技術的に大きな進展でした。原子力はエネルギー安全保障と脱炭素の両立に不可欠であり、廃炉の安全な実施による社会受容を得ることは極めて重要です。本フォーラムが、両国の廃炉について学び、将来のパートナーシップを育む場となることを期待します」と挨拶されました。
続いて英国原子力廃止措置機関(NDA)CEOのピーティ氏がNDAの活動や今後の戦略について紹介し、「今年設立20周年を迎えるNDAの最優先課題はセラフィールドの貯蔵施設からの燃料デブリと廃棄物回収で、近年大きな進展がありました。また、ハンターストンBを皮切りに、EDFが運営する改良型ガス冷却炉(AGR)が来年4月以降順次NDAに移管され、NDAの廃炉活動が大幅に拡大されます。廃炉は過去の解体だけでなく未来を築くものであり、社会からの信頼を得ることで新たな原子力開発の社会受容につながります。NDAの活動は、経済成長を促進し、英国をクリーンエネルギー超大国にするという政府計画を支えるものです」と述べました。
開会セッションの最後には、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF) 廃炉総括監 更田 豊志氏が登壇され、「廃止措置には倫理的課題や知識管理、ステークホルダーの参加といった克服しきれていない問題が深く関わっており、日英両国の理解と経験を結集する重要な挑戦です。NDFは、一昨年から燃料デブリの本格的な取り出しにむけた工法の検討や、不確かさが大きく社会の受容が困難な情報をいかに適切に発信していくか、といった新たな課題に直面しています。また、規制側にはリスクの長期的な低減を図るためには避けられない一時的なリスクの上昇をどのように許容し、監視するかという重要な課題があります。今後も日英両国の協力が人材育成や知識管理、環境社会ガバナンスにおける価値の統合といった分野において、より一層深まり国際社会への貢献に繋がることを期待しています」と述べました。
続くセッションでは、廃止措置と廃棄物管理をテーマに、日英の最新の原子力政策の動向や、メーカー・研究機関による研究開発の最新情報、原子力関連施設の廃止措置状況、NDAや使用済燃料再処理・廃炉推進機構(NuRO)による廃止措置事業のマネジメントの事例などについて発表が行われました。 その他、日英の原子力関連企業の連携を促進するため、会場内において、英国企業によるパネル展示などが行われた他、セッションの合間にケーススタディとして各社の廃止措置における取組みや日英連携プログラムの進捗が紹介され、活発な情報・意見交換が行われました。
閉会セッションでは、まず英国原子力産業協会(NIA)CEOのグレートレックス氏が「英国はヒンクリーポイントC建設、サイズウェルC最終投資決定、ロールス・ロイスSMR選定など、原子力産業の最前線で目覚ましい進展を遂げています。これらの発展は、社会受容の基盤となる確実な廃炉と廃棄物管理を実現する取り組みがなければ実現しなかったでしょう。廃炉は新規開発ほど注目されませんが、英国の原子力雇用を支え、イノベーションを促進します。日英間の相互尊重と信頼に基づく深い関係が、このフォーラムの成功と効果的な協力の礎となっていることに感謝し、両国の原子力分野における継続的な協力関係の発展を期待します」と述べました。
続けて当協会の増井理事長から「福島第一原子力発電所事故の教訓を常に念頭に置き、その知見を既存炉や新規建設炉に適切に反映させることが日本の原子力開発の基盤です。廃炉は単なる技術的終点ではなく、原子力の最大限かつ責任ある利用を支える基盤です。安全かつ費用対効果の高い廃炉は、原子力の競争力を維持するための鍵であり、日英両国が今後も相互に学び、支え合い、成長し、長年にわたるパートナーシップをさらに深めていくことを願います」と挨拶しました。
エネルギー安全保障、カーボンニュートラル、および廃止措置の共通課題に直面している日英両国が互いに学び、協力することの意義は大きく、今回の第9回日英原子力産業フォーラムも双方にとって大変有意義なものとなりました。






【開催概要】
開催日時:2025年10月7日(火) 9:30~17:30
(レセプション 2025年10月7日(火) 17:30~19:30)
会場:駐日英国大使館大使公邸(東京都千代田区一番町1)
【プログラム】
10:00-10:15 – 開会·歓迎挨拶
- 駐日英国大使 ジュリア・ロングボトム閣下
- 原子力廃止措置機関(NDA) CEO デイビッド・ピーティー氏
- 原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF) 廃炉総括監 更田 豊志氏
10:15-11:00: 英国における廃止措置最新情報
- NDAのグループ戦略について (NDA 原子力戦略責任者 クライヴ・ニクソン氏)
- NDAによる廃止措置最新情報 (セラフィールド社 企業戦略責任者 ロジャー・カウトン氏)
- 核融合実験炉 欧州合同トーラス(JET)の廃止措置・再利用プログラム(JRD)について (英国原子力機関 JDRプログラムディレクター ザック・スコット氏)
11:00-11:15: コーヒーブレイク & 企業展示
11:15-12:00: 日本における廃止措置最新情報
- 福島第一原子力発電所の廃炉進捗 (東京電力福島第一廃炉推進カンパニー 国際グループマネージャー 井原 隆文氏)
- 東海再処理施設(TRP)の廃止措置について (日本原子力研究開発機構核燃料サイクル工学研究所 TRP廃止措置技術開発部 主任技術者 山本 昌彦氏)
- 国内原子力発電所の廃止措置円滑化の取り組み (使用済燃料再処理・廃炉推進機構(NuRO) 理事 胡井 宏明氏)
12:00-12:30: 廃止措置ケーススタディ (Amentum, Innovative Physics Ltd., Atkins&Realis)
12:45-13:45: 昼食 & 企業展示
13:45-14:35: イノベーションと地域社会への貢献
- 英国の廃止措置におけるロボティクスの開発 (英国原子力公社(UKAEA) ロボティクスと人工知能の連携プロジェクト(RAICo)ディレクター カースティ・ヒューイットソン氏)
- 廃止措置イノベーションを活用した地域経済の活性化 (インダストリアル・ソリューション・ハブ マネージングディレクタ― ギャリー・マクキーティング氏)
- 福島国際研究教育機構(F-REI)の最新動向 (F-REI 理事 江村 克己氏)
14:35-15:20: 廃止措置ケーススタディ (Rawwater, Createc, Veolia)
15:20-15:50: コーヒーブレイク & 企業展示
15:50 -16:55: パネルディスカッション: 複雑な回収プロジェクトへの取り組み:戦略当局、サイト運営者、サプライチェーンからの視点
- モデレーター: 原子力輸送ソリューション(NTS) 共同CEO ベン・ウィッタード氏
- パネリスト:
- NDA 原子力戦略責任者 クライヴ・ニクソン氏
- NDF 廃炉戦略企画室長 大野 公輔氏
- セラフィールド社 企業戦略責任者 ロジャー・カウトン氏
- 東京電力福島第一廃炉推進カンパニー 廃炉技術担当 飯塚 直人氏
- Amentum プロジェクトディレクター ロブ・ニコルソン氏 (廃止措置実施パートナーシップ(DDP)を代表して)
- 東双みらいテクノロジー 代表取締役社長 石川 真澄氏
16:50-17:00: 閉会挨拶
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- 英国原子力産業協会(NIA) CEO トム・グレートレックス氏
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- 日本原子力産業協会(JAIF) 理事長 増井 秀企氏
17:00-17:30: 企業展示
17:30-19:30: ドリンクレセプション
ご挨拶
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- 駐日英国大使 ジュリア・ロングボトム閣下
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- NDA 会長 ピーター・ヒル氏
乾杯
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- JAIF 常務理事 植竹 明人氏
以上
お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)