韓国原産年次大会(KAP2025)参加報告について
当協会は、韓国原子力産業協会(KAIF)の第40回年次大会(KAP2025)に出席しました。今大会は、第40回記念大会として、4月29日(火)、30日(水)の2日間、ソウルのロッテホテルにて開催され、1,129名が参加しました。
大会の基調テーマは、「原子力のレジリエンスと多様な貢献」であり、以下の各セッションのテーマについて、韓国および海外の原子力産業界の関係者による講演や意見交換が行われました。
日程 | セッション | セッションテーマなど |
---|---|---|
4/29(火) | セッション1 | 「60年を超えて:世界水準の優れた運転」 |
オープニングセレモニー | 開会挨拶(ファンKAIF会長) | |
基調講演 | ①「急激な変化の時代における原子力エネルギーの役割と貢献」 (サマ世界原子力協会(WNA)事務局長) ②「韓国の力によって切り拓かれる原子力の未来」 (アンダーソンTED最高責任者) | |
特別セッション | 「将来の電力市場へ対応する原子力」 | |
4/30(水) | セッション2 | 「原型炉を超えて:SMRの市場参入」 |
セッション3 | 「原子力導入の加速:世界規模のエネルギー移行」 | |
高レベル放射性廃棄物特別セッション | 「将来の放射性廃棄物管理:課題と機会」 |
また、並行開催された国際原子力産業展示会(INEX2025)では、韓国企業を含め10カ国から32社の出展があり、当協会会員企業の(株)ムロオシステムズ様も出展されました。


セッション1 セッションテーマ:「60年を超えて:世界水準の優れた運転」
当協会の増井理事長は、セッション1に登壇し、日本の原子力発電の状況について、第7次エネルギー基本計画において原子力発電が前向きに位置づけられたこと、および60年運転に関する除外期間などについて紹介しました。講演の締めくくりには、米国のトランプ大統領のスローガン「Make America Great Again」を引用し、「Make Atomic Great Again」と述べ、共に原子力産業界をより良いものにしていこうと呼びかけました。
-e1746583371869-1024x771.jpg)
.jpg)
オープニングセレモニー
KAIFのファン会長は、開会挨拶で、生成AI活用によるデータセンターや電気自動車の急速な普及と産業の変革により、電力需要は大幅に増加すると予測されていることに言及し、安定的かつ持続可能で、温室効果ガスを排出しない大規模電源としての原子力発電の重要性が高まっていると述べました。
また、今後は稼働中の原子力発電所の運用最適化に加え、発電以外にも水素製造や淡水化など多様な用途がある小型モジュール炉(SMR)の導入と産業化が鍵になると強調しました。
この他、高レベル放射性廃棄物の管理も重要課題であり、韓国では特別法を通じて戦略的かつ持続可能な対応が進められていることを紹介し、廃棄物管理技術の改善と社会的信頼の構築が今後の原子力産業の成長を支える基盤となると述べました。


基調講演①
WNAのサマ事務局長は、「原子力発電は世界で2番目に大きな脱炭素電源、かつOECD諸国では最大の電源として重要な役割を果たしてきたが、これまで50年以上にわたり、あまり注目されてこなかった。しかし、今、その役割が大きく変わりつつある」と述べました。また、原子力発電は、発電だけでなく、製造業、化学産業、石油化学産業、セラミック、持続可能な航空燃料など、多くの産業分野での脱炭素化を支援することができること、またAI産業の発展により、多くのテクノロジー企業が24時間365日稼働する施設による電力供給を模索しており、その中で、原子力発電が重要な選択肢として注目されていることに言及しました。
これらの動きを踏まえ、COP28では2050年までに原子力発電設備容量を3倍にするという目標が掲げられ、この目標を達成するために、WNAは政府、金融コミュニティ、産業界と連携し、政策や産業戦略の策定、革新的な金融フレームワークの構築、プロジェクトの実行能力の向上に取り組んでいることを紹介しました。
最後に、我々は今、歴史的な機会を迎えており、この機会を最大限に活かすためには、政府、金融コミュニティ、大規模電力需要家および一般市民と協力し、一丸となって取り組むことが重要であると結びました。
基調講演②
TEDのアンダーソン最高責任者(Head)は、韓国は、原子力発電の高い導入比率や設備利用率、さらにはアラブ首長国連邦での原子力発電所の建設実績などから、世界的に見ても優れた原子力のリーダーシップを持つ国であるとの認識を述べました。
また、2050年に向け、世界の電力需要は現在の2倍、3倍に達すると予測されており、自身としては5倍に達すると考えていることに触れ、気候変動対策と持続可能な経済発展の両立には、原子力発電の大幅な拡大が不可欠だと強調しました。
大型炉に関して、従来の原子力発電所建設には長い年月と高いコストがかかるが、韓国の造船技術を活用し、発電所のモジュール化・標準化・工場生産による「組立ライン化」を実現すれば、工期、コスト、規模の課題を一気に解決できると述べました。特に「溶融塩炉」は、低圧・高い安全性を有していることから、造船所での量産に適しており、次世代の原子炉として期待されていると発言しました。
韓国は、原子力と造船の両分野で強みを持つ世界的に稀有な国であり、「組立ライン化」を実現することで、世界中にクリーンエネルギーを届ける、新たなエネルギー産業の中心国となるチャンスを握っていると語りました。


国際原子力産業展示(INEX2025)
KAP2025の会場であるロッテホテル・クリスタルボールルーム前のホワイエでは、企業展示が行われました。出展企業は全32社で、そのうち海外企業は18社*と、半数を超えていました。
当協会職員が参加者に対して聞き取り調査をしたところ、約3割の方が企業展示でのネットワーキングを目的に参加しており、特に海外企業との交流を目的に参加している方が多い結果となりました。
*海外出展国:フランス、米国、カナダ、スペイン、チェコ、トルコ、アラブ首長国連邦、南アフリカ、日本






記者会見
韓国メディアからの取材要請に基づき、当協会の増井理事長は、KAP2025開催期間中に記者会見を実施しました。
韓国メディアからは「原子力分野において韓国と協力できる可能性のある分野」および「福島第一原子力発電所の事故以降の国民理解に対する取り組み」などについて質問を受け、日本の原子力発電の現況および今後の課題について、韓国国内でも理解が深まるよう説明しました。


お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)