第3回日台原子力専門家会合(2019年7月24日)を台北市にて開催(概要報告)

 当協会は7月24日、台北市の台北ガーデンホテルで「第3回日台原子力専門家会合」を開催しました(共催:中華核能学会放射性廃棄物管理学術委員会及び原子力デコミッショニング委員会)。

 参加者は日台双方で約120名。日本からは高橋理事長を団長に、発表者として電気事業連合会、日本原子力発電、東京電力ホールディングス、日立GE、日本原燃からの5名、一般参加者17名と事務局3名が参加しました。プログラムは、挨拶・基調講演及び3つのテクニカルセッション(「原子力施設の廃止措置」、「使用済燃料処分と乾式貯蔵」、「低レベル廃棄物の処理処分」)という構成でした。
 会合では、台湾側主催者の学会廃棄物学術黄委員長の挨拶において、バックエンド問題に対しては台湾国民の一部から不安の声が上がっているが、海外の先行事例と経験を共有することで解決できると信じるとの発言があり、高橋理事長からは、円滑な廃炉実施で原子力発電のライフサイクルが完結する。適切なバックエンド対策を進めることが日台原子力関係者の責任であることなどの挨拶がありました。会合後には、第一(金山)原子力発電所と台湾核能研究所(INER)の施設見学を行いました。

開会挨拶をする高橋理事長

主要参加者による集合写真撮影の様子

1.台湾の原子力の状況(発表内容より)

  • 台湾の原子力発電所は、3つのサイト(第一(金山)、第二(国聖)、第三(馬鞍山))に6基です。法令による運転期間は40年。第四(龍門)は建設を完了せず「資産維持管理」状態にあります。
  • 現政権の脱原子力政策により、運転期間延長は行わず、6基ある台湾の原子力発電所は第三(馬鞍山)発電所2号機の運転期間満了となる2025年までに、すべて運転を終了しゼロになります。
  • 閉鎖後は、廃炉は「即時解体」方式として、25年内に廃炉作業を完了します。原子力発電が減少していく分、火力の増加と再生エネルギーの開発利用で補うことになっています。
  • 脱原発政策のもと、化石燃料(CO2排出削減のため特にLNG)と再生可能エネルギーへの依存を増やしています。2025年の電源構成比目標は、LNG50%、石炭30%、再生可能エネルギー20%を目指しています。

(台湾の原子力発電所の状況)

 

2.第一(金山)原子力発電所 (7月25日テクニカルツアー)

  • 台湾初の原子力発電所(1号機は1978年営業運転開始、2014年運転停止。2号機は1979年営業運転開始、2017年運転停止。)で福島第一原子力発電所とも同じタイプのGE製BWR2基があります。運転期間は40年と定められていますが、1・2号機とも、定検中のトラブル(2014)や鉄塔の破損(2017)があったことや、発電所内に乾式貯蔵施設を建設しましたが、地元自治体から使用の了解を得られずプールに使用済燃料がたまり続けるという状況となったため、政府の脱原子力政策もあり運転期間延長せず廃炉を決め、廃炉計画が今年7月に認可されました。
  • 第一(金山)原子力発電所では、主にその乾式貯蔵キャスクとそのサイトを視察しました。米国製コンクリートキャスクに対して、被ばく線量の低下や耐震対策のため、独自設計で外側にさらにコンクリート壁をかぶせ台座を設けたタイプのキャスクが、まだ使われていないこともあり、間近で見ることができました。なお、2013年には、原子力委員会からキャスクの使用許可が出たものの、地元自治体(新北市)からの了解が未だに得られていません。
  • 乾式貯蔵計画の第2期として、貯蔵容量を増やした屋内型貯蔵施設について技術的な検討中とのことです。

(第一(金山)原子力発電所見学の様子)

3.核能研究所(INER)(7月26日テクニカルツアー)

  • 核能研究所(INER)は、台湾で唯一の公立の原子力研究機関で、日本の原子力研究開発機構(JAEA)に相当します。原子力だけでなく、放射性医療や再生可能エネルギー等幅広い研究開発が行われています。
  • 1988年に運転停止し廃炉中の40MWの研究炉(天然ウラン金属燃料、重水減速、軽水冷却)があります。
  • 研究炉も25年かけて廃炉作業が行われています。現在は、すでに排水した後の使用済燃料プールや乾式貯蔵施設の処理作業中で、原子炉本体の解体も今年許可が出されたのでモックアップテストを実施し、2021年に解体着手予定です。
  • 原子炉自体は、2002年、もともとあった建屋で土台を切り離して隣に作った建屋に移動させました。なお、その際には清水建設の技術が使われました。
  • 2か所の施設訪問先では、参加した工事会社のメンバーからも廃炉作業に外国企業参入の可能性について質問がありました。

(核能研究所見学の様子)

 

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