nucleareurope 2026 参加報告
当協会は、2026年6月1日(月)、2日(火)の2日間、ベルギー・ブリュッセルで開催された、欧州原子力産業協会であるnucleareuropeの2026年次大会に参加しました。今大会は、欧州原子力業界の最新動向や各国の制度設計に関する情報を収集する機会となりました。
■開催概要
nucleareurope 2026は、1日目に「主権あるEUを支えるエネルギー」をテーマとするハイレベル開会セッション、ファイアサイド・チャット、「欧州の消費者ニーズにどう応えるか」をめぐるパネルディスカッション、カクテル・レセプションが行われ、2日目にはファイアサイド・チャットに加え、原子力新設向け国家支援、産業政策、投資・資金調達に関する各セッションが実施されました。プログラム全体を通じて、欧州における原子力の役割を、脱炭素化に加えて産業競争力やエネルギー安全保障の観点から捉える議論が展開されました。
| 日程 | セッション | セッションテーマなど |
| 6/1(月) | ハイレベル開会セッション | 「主権あるEUを支えるエネルギー」 |
| ファイアサイド・チャット | Jacques Peythieu氏(Orano) | |
| パネル1 | 「欧州の消費者ニーズにどう応えるか」 | |
| カクテル・レセプション | 欧州委員会関係者らによる挨拶、参加者交流 | |
| 6/2(火) | ファイアサイド・チャット | Marek Woszczyk氏(PEJ) |
| パネル | 「新設原子力発電所向け国家補助の進化」 | |
| ファイアサイド・チャット | Vincent Schryvers氏(EAGLES consortium) | |
| パネル2 | 「主権ある産業のための主権あるエネルギー」 | |
| ファイアサイド・チャット | Benjamin Sauer氏(McKinsey & Company) | |
| パネル3 | 「未来のためのファイナンス」 | |
| クロージング・セッション | 閉会挨拶 |
■大会の主な論点
今大会では、原子力を「安定供給」と「脱炭素化」の両面から位置付けるだけでなく、欧州の産業基盤と競争力を支える電源として位置付ける認識が強く示されました。特に、域外依存を抑えながらエネルギーを確保し、電力多消費産業の維持・強化につなげていくことが、EUの重要課題として共有されました。
また、原子力発電所の新設や既設炉の改修を前進させるためには、差額決済契約(CfD)、政府債務保証、長期契約といった公的支援の枠組みが重要であるとの認識が広く示されました。投資回収に長期間を要する原子力プロジェクトでは、こうした制度設計が事業実現性を左右するとの見方が支配的でした。
さらに、サプライチェーン維持や標準化の重要性も繰り返し言及されました。欧州内で技術開発、建設、機器供給、人材確保をどう支えていくかが、今後の原子力拡大に向けた共通課題として認識されました。
■参加を通じて得られた欧州原子力業界の最新動向
当協会は本大会への参加を通じ、EU全体の政策議論に加え、各国がそれぞれの事情に応じて原子力プロジェクトを具体的に進めている状況を把握しました。
・EU全体の動向
大会全体を通じて印象的であったのは、原子力が脱炭素化の文脈だけではなく、欧州の産業競争力とエネルギー自立を支える基盤電源として位置付けられていた点です。会場では、利用可能なクリーンエネルギーを総動員しなければ欧州経済は競争力を維持できない、との強い危機感が共有されました。
制度面では、原子力新設や改修を進めるうえで、CfD、政府債務保証、長期PPAなどをどう組み合わせるかが中心的な論点となりました。特に、投資回収の長い原子力事業では、公的支援の枠組みがなければ新規建設は困難であるとの見方が強く示されました。一方で、官による過度な負担が民間の活力をそぐのではないかという論点もあわせて示されました。
また、欧州内で技術開発、標準炉設計、建設、サプライチェーン維持に共同で取り組む必要性も繰り返し言及されました。欧州全体で原子力分野の技術、設計、建設、人材、供給網を支える体制を強化しようとする構想は、「European Nuclear Airbus」あるいは「Nuclear Airbus」とも呼ばれており、国家や企業が分散する欧州において、原子力分野での連携強化を模索する機運が高まっていることがうかがえました。
・各国の最新動向
・オランダ
オランダでは、現在の原子力比率は約3%であり、大型原子炉2基の建設計画が進められています。候補炉型としてはAP1000とEPRが中心とされており、サイト候補も既存のボルセラ発電所近傍、ロッテルダム近傍、北部の3か所に絞り込まれているとの説明がありました。
大型炉2基の後続計画は未定とされる一方、将来的にはSMRの活用可能性も視野に入れられており、複数の選択肢を残しながら原子力比率の引上げを検討している状況がうかがえました。
・ポーランド
ポーランドでは、AP1000による新設計画が具体的な工程を伴って進められていました。現在は樹木伐採や送電線準備などの段階にあり、2028年末から2029年にかけて先行工事に着手し、2036年に初号機、2038年に3基全体の運転開始を目指す方針が示されました。
資金調達については、30%を政府直接投資、残る70%を政府債務保証の下で金融市場から調達する考え方が示されました。政府保証により調達コストを抑制し、必要以上の貸し手が現れているとの説明もあり、欧州内では先行事例として強い関心を集めました。
また、CfDの導入も見込まれており、不測の事態や市場変動に応じてストライクプライスを調整し得る二段階の仕組みが想定されているとのことでした。新設原子力発電所に対する国家支援を欧州委員会に認めさせた点でも、ポーランドは今後の欧州案件に影響を与えるケースと受け止められていました。
・ルーマニア
ルーマニアでは、チェルナボーダ原子力発電所の寿命延長、すなわち改修工事に対してCfDの枠組みを活用する動きが進められました。改修案件へのCfD適用は欧州でも先行的な事例と位置付けられており、新設だけでなく既設炉の長期運転に対しても制度的支援を組み込む方向性が注目されました。
あわせて、これまでの運転実績を踏まえてCfDモデルの精度を高め、より現実的なストライクプライス設定につなげている点も紹介されました。他方で、改修工事に対しても新設と同様に欧州委員会の承認が必要となることに対し、国内では負担感を指摘する声もあるとされました。
・チェコ
チェコでは、新規建設1基分に対する国家支援について既に欧州委員会の承認を取得しており、現在はこれを2基分に拡大し、支援範囲も広げた形で改めて申請している状況が紹介されました。対象はドゥコバニ5、6号機であり、国家支援の中身としては、建設中の資金回収とCfD制度の活用が柱となりました。
この点は、欧州における国家支援の枠組みが、単なる建設支援にとどまらず、建設期間中の資金負担や将来収入の安定化まで含めて設計されつつあることを示す事例と受け止められました。
・フランス
フランスでは、6基のEPRを一つのフリートとして建設する方針が改めて示されました。パンリー、グラブリーヌ、ビュジェイの3既設発電所に2基ずつ増設する計画であり、個別案件ごとの最適化ではなく、フリート全体として設計標準化、リソース配分、工程管理を行う考え方が前面に出ていました。
こうした進め方は、規模の経済を活用しながら建設コストの最適化を図るとともに、サプライチェーンや人材を中長期的に維持する観点からも重視されているものと考えられます。これらの動向からは、欧州において原子力が個別プロジェクトの議論にとどまらず、産業政策や競争力確保と一体で捉えられていることがうかがえました。
当協会としては、欧州における制度設計、投資環境、サプライチェーン維持の考え方を把握する機会となりました。



以上
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