WNE2025(世界原子力展示会)出展原子力産業団体による共同声明の発表について
2025年11月7日
日本原子力産業協会は、2025年11月4~6日、フランスのパリにて開催されたWNE2025(世界原子力展示会)に出展し、同展示会に出展した仏原子力産業協会(GIFEN)、カナダ原子力産業協会、韓国原子力産業協会、nucleareurope、ブラジル原子力産業協会などとともに、COP30に向けた共同声明を発表しました。
WNE2025最終日(11月6日)に同展示会主催者でもあるGIFENのブースにて行われた署名式には当協会を含む各国原子力産業界の幹部が一堂に会し、11月10日からブラジルで行われるCOP30に向けて、各国の政治指導者や金融関係者に、原子力の経済的・環境的利点を訴求し、気候目標の達成と安価でクリーンな電力の安定供給を両立させるために、原子力へのより一層の支援を求める声明に署名しました。
【共同声明本文】
(日本語仮訳) 世界原子力展示会-17署名団体による共同声明
ブラジルで開催されるCOP30まで目前に迫っており、エネルギーと気候変動の課題に対する解決策を見つける緊急性はこれまで以上に高まっている。全人類が豊富で持続可能なエネルギーにアクセス可能とするためには、すべての経済的・政治的ステークホルダーのコミットメントが不可欠である。特に、低炭素エネルギー源への投資に関しては、即時の行動が求められている。
我々は、国内および国際レベルで原子力産業を代表する団体として、気候変動との闘いにおける民生用原子力エネルギーの重要な役割を改めて確認するものである。この技術は、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)などの機関が示す通り、気候目標を達成するために必要不可欠なものである。2023年のCOP28の最終合意では、初めて原子力エネルギーが気候目標達成のために加速すべき技術として明記された。
我々の経済の変革は、原子力を含むすべての低炭素エネルギー源の開発に依存しており、原子力は安定的で強靭なエネルギーミックスにおいて重要な役割を果たすものである。
過去50年間で、原子力エネルギーは世界的に約70GtのCO₂排出を回避することに貢献してきた。現在、世界の電力生産の約9%、低炭素電力生産の23%を占めている。IAEAによれば、将来的な開発により、2050年までにさらに90GtのCO₂排出を防ぐことが可能である。
「ネットゼロ2050」シナリオでは、2050年までに世界の電力需要は現在の2倍以上に増加すると予想されている。信頼性が高く、低炭素で、かつ需要に応じて出力可能な電力を提供できる原子力エネルギーは、電力網の安定性を支えつつ、この課題を克服し、エネルギー安全保障と経済の安定を確保するための重要な資産である。
現在、31カ国で約440基の原子炉がこの取り組みに貢献しており、合計約420GWの発電能力を有している。さらに60基以上が建設中であり、約30の新興国が気候に配慮した電力需要を満たすために原子力開発を検討している。2024年、IAEAは4年連続で予測を引き上げており、最も高いシナリオでは2050年までに原子力容量が2.5倍に増加することを「現実的かつ技術的に可能」と見込んでいる。これを実現するには、年間の導入量を5~6GWから25GW以上に増加させる必要がある。
原子力は高いエネルギー密度を持つため、最小限の資源で大量の電力生産が可能である。例えば、ウラン100gは石油1tに相当するエネルギーを生み出すことができる。この比類なきエネルギー潜在力に、燃料のリサイクルや厳格な廃棄物管理を組み合わせることで、エネルギー資源の保護、生物多様性の維持、発電所の環境負荷低減に寄与するものである。
革新は我々の業界の努力の核心に位置付けられている。小型モジュール炉(SMR)や先進型モジュール炉(AMR)などの新技術は、特に熱供給や低炭素水素の生産において原子力の応用を拡大する助けとなる。第4世代炉の研究開発は、閉じた燃料サイクルの確立に向けた取り組みを推進し、、循環型経済への貢献を可能にする。また、新たな非電力用途も開発中であり、医療分野(がん治療)や海上・宇宙での移動手段にも応用されている。さらに、民生用原子力エネルギーは、高度な技能を持つ持続可能な地域雇用を創出し、地域・国全体の経済を刺激することで、経済に大きく貢献している。
これらの利点は、今世紀の主要課題である気候変動や全人類へのエネルギーアクセスに対応するものであり、我々は政治指導者に対し、2050年までに世界の原子力容量を3倍にするという目標を再確認し、あらためて原子力を支持することを求めるものである。COP28以降、31カ国がこのコミットメントを表明している。この目標は、既存炉の長期運転を支える公共政策および大型炉、革新炉、燃料サイクル施設などの新プロジェクト開発によって裏付けられる必要がる。
また、金融関係者に対しても、すべての原子力活動に利益をもたらす市場メカニズムや、新規プロジェクトの立ち上げや研究開発強化のためのグリーンファイナンスへのアクセスを通じ、業界の発展を支援することを呼びかけるものである。
地球上のすべての人々に向けて、我々は進歩への信念を共有するものである。世界中の原子力業界で働く人々は、責任を持って環境に配慮した方法で電力を生産し、人類の発展に貢献することに尽力している。共に力を合わせれば、特に最も重要な課題である気候変動を含む地球規模の闘いを乗り越えることが可能である。我々にご期待いただきたい。
お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)















